L.W.R.(50) MIPS RISC ARCHTECTURE、1992年、MIPS

Joseph Halfmoon

今時、RISCプロセッサといえばArmかRISC-Vですが、1980年代後半から1990年代ごろ、RISCといえばSPARCとMIPSが2大巨頭でした。SPARCはSUN、そしてMIPSにはSGIというワークステーション大手がつき、特にSGIはハリウッド映画のCGを担っていたりして栄華を極めてました。その時代の文書。

※『Literature Watch Returns (L.W.R.)』の投稿順 index はこちら

RISCプロセッサの源流のひとつともいえるMIPSのRシリーズのアーキテクチャ解説書です。Rシリーズの中でも解説のメインはR4000みたいです。が、R2000, R3000, R6000の解説も含んでいるみたい。

この文書は1992年発行です。文書の前の方にMIPSプロセッサを製造しているマニュファクチャラ名が列挙されてます。米国法人と本国法人が別々に名があがっていたりするので整理すると以下のごとし(MIPS自身は除く。)

    • IDT
    • LSI Logic
    • NEC
    • Performance Semiconductor
    • Siemens
    • Sony

年寄には懐かしいお名前ばかりです。そしてそのいくつかのお名前は既に消えて久しかったりします。こうして会社名を列挙していて気付くのがToshiba様の不在。後にTxシリーズでMIPSコアの製品を結構手広くやられていたような気がするのだけれども、この時点はまだMIPSに手を出していなかったのね。。。

1990年代、シリコンバレーじゃ、SGI(Silicon Graphics, Inc.)がブイブイ言わせていて、石をなげればSGIの奴らに当たったとか当たらないとか。我が世の春というべきか、SGIにあらずんばWSにあらず的な鼻息だった記憶。その栄華も久しからず。2009年に滅亡(つい最近まで後継会社が看板を掲げていたが今はそれもなくなったよし。)

そしてまた、このご本の発行の1992年はWindows NTが発表される前年です。Windows NTは現在のWindowsの直系の御先祖(Windows 95とかとは系譜が別)のOSの初代です。これがMIPSと関係するのはWindows NTは、もともとx86のパソコン用でなくRISCワークステーションのためのOSとして開発されたからです。初期のターゲットはインテル i860(コード名N10、80486用の数値演算プロセッサであった筈がいつの間にかデュアルイシューのRISCマシンになっていた)とMIPS機だったハズ。知らんけど。

というわけで巷には、MIPS登載のワークシテーションを開発して~という輩?が結構いらっしゃいました。実は、お惚け老人も「提携していた海外メーカ」との関係でWindows NT搭載のMIPSワークステーション用のチップセットに関係していたことありです。売れなかったけど。

Delayed Instruction Slot

MIPSアーキテクチャというと、お惚け老人は直ぐに連想します(最近のことは直ぐに忘れるけど、昔のことは忘れないのよ。)

    • 遅延分岐
    • 遅延ロード

最初、その話を聞いたとき、うまいことやりやがったな、と感心したのを覚えてます。分岐命令などはどうしてもサイクル数が多くなり、その間に「なにもすることがないスロット」など発生してしまうと。しかし、MIPSにおいては遅延分岐(分岐命令実行直後の1命令は分岐する前というか最中に処理される)でそのようなムダをなくしてます。また、遅延ロードも同じ。メモリからの御返事をまっている間のスロットに該当のメモリに依存しない命令を突っ込めると。なんて頭が良いんだ。

そういう「技」が使えるようになった背景には、コンパイラの最適化技術の発達があります。そんな命令の順番など人間が考えていられないもんね。

一時は一世を風靡した遅延分岐命令でしたが(ほんとか?聞いてないよ~)、結局はアダ花に終わった記憶です。マイクロ・アーキテクチャが変われば遅延スロットの数も変わる。それどころか時代は、スーパスカラー、マルチスレッドなどの高速化技術も次々登場、分岐を支援するためのハードウエアも続々改良されて、遅延分岐などいらん、という雰囲気になったみたい。残念だな、おい。

実は、MIPSの命令セットを味わうべく、手元にMIPS R4000搭載のボードを確保してあります。しかし、別件のアセンブラを練習しているシリーズでは、ArmとRISCーV練習した後、現在x86のアセンブラに突っ込んでます。先は長いな~、x86の命令多過ぎるからなあ。死ぬまでにMIPSにまでたどり着けないかもしれん。。。

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