土木でエレキ(23) 河川の水位計測つづき

前回は本題である河川の水位計測のための「モダンな」センサ(デバイス)の勉強に入る前に力尽きてしまいました。今回はようやく本題に入りたいと思います。話が飛んでいると思われた場合は、お手数ですが前回からご覧ください。

センサそのものの物理的な原理は、土木分野、河川用といっても別に異なることは無い筈ですが、前回も書いたとおり、工業用途などではまず想定しないリクワイヤメントが存在します。素人が知識の無い分野を調べようとした場合、まずは、情報を集めて「分類」するところからでしょう。今回、河川用の水位計を扱っていらっしゃる各社を調べさせていただたところ、大きくは以下の2分類あることが理解できました。

  1. 接触式
  2. 非接触式

要は水に触るのか、触らないのかという分類です。歴史的には、どうも河川の水位計測では、まず接触式が先行し、最近、非接触式も増えてきているようです。電子デバイスという当方の観点からは、どちらもアリなのですが、接触式から見ていきたいと思います。

フロート式水位計

歴史的にはどうもこの型式が一番古そうです。水に浮かべたフロートまでの距離を上からフロートを吊り下げているような形の測定器で直接測るという方式です。現行のものは電気信号を送出できるようになっているようですが、原理的には、電気など使わず機械的な装置としても構成可能なので古くから用いられているものと見えます。フロートそのものは、流されてしまったのでは計測できないので、縦穴状の構造を作り、その下部に川から水を導入し、その上に浮かべるということになります。測定装置はその縦穴の上部に設置され、そこが測定系の原点となると。通常、そのような装置は上屋の中に設置されるのだと思います。当然、構造体の内部にフロートが格納されるので外から流れてきたモノがぶつかるような心配もないし、直接測った距離から水位を計算すれば良いので、常時安定した計測ができそうです。半面、水門とか排水機とか固定的な装置の付近の付属施設として設けるのであれば良いでしょうが、何もないところに設置しようとすると土木工事から必要になり、設置費用も設置にかかる時間も相当かかるのではないでしょうか。そのため、近年要求されているらしい、危険そうな箇所多数にすばやく展開するというのには不向きに思われます。

フロート式水位計は過去多くの会社が取り扱っていたようで、東芝、横河、富士電機、日本電気精器などそうそうたる会社が製造していた時代もあったようなのですが、最近では大手は全て撤退のように見えます。変わってその需要を埋めている会社として、和興計測千曲エンジニアリング愛知時計電機などが見つかりました。

圧力式水位計

圧力を計測するのも電子デバイスによらずともメカニカルにも可能です。多分、初期的にはそういうものも存在していたのかも知れませんが、現行の製品を眺めるかぎり、ほぼ全て電子デバイス応用になってきているようです。圧力計測は基本、何かと何かの圧力差を測るわけですが、河川の深さを圧力計で測ろうとする場合、大気圧(水面)と、水面下の圧力計が示す水圧の差をとって、そこから水の深さを計算しないとならないと思います。そのため、圧力式水位計にはどうも2種類あり

  • 大気圧との差をとるため、水面下の圧力計まで空気のチューブがつながっているもの
  • 大気圧と水圧はそれぞれ独立に計測され、電子的に圧力差を求めているもの

配線だけで済む後者の方が取り扱いが容易そうに思えるのは電子デバイス屋のひいき目ですかね。いずれにせよ、この方式では、ワイヤなりチューブの先についた圧力計を水の中に投げ込めば計測できるので、投げ込み式とも称されるようです。当然、水面下に向かって細い管のようなものを設置してその中に投入すればセンサの保護も兼ねられるので、フロート式よりは大分設置は楽ではないかと想像されます。ただし、水に直接接触するため、ヘドロとか、汽水による腐食とか、貝類とか、圧力センサにとってはかなり劣悪な環境に思われるので、信頼性のある計測のためには耐環境性がかなり重要に思えます。

センサそのものは、先ほどの大気圧と水圧の差をとる方式では圧力差をメカニカルな変位として測定し、それを差動トランスにより電気信号とするものが主流で、最近、半導体圧力センサなどを応用した「チューブレス」方式も台頭してきたようです。この圧力センサ応用の「投げ込み式」を製品化されている会社は非常に多くあるようですが、調べた限りで列挙しておきたいと思います。

東建エンジニアリング

JFEアドバンテック

エヌケーエス

坂田電機

E-SYSTEM

和興計測 (「レベル計一筋、機械式」がキャッチフレーズの会社ですが、よく見ると投げ込み式も持っていました。他社からのOEM?

ジオテクサービス

光進電気工業

愛知時計電機

海外製品では、BD Sensors というドイツの会社(取り扱い商社はサヤマトレーディング)がちと気になりました(別件もありで)

それ以外に「投げ込む」のですが、投げ込み式と決して呼ばれることのない、かなり特殊な水位計もあります。

拓和 APF-40 土研式投下型水位観測ブイ

短い説明を引用させていただきましょう。

土研式投下型水位観測ブイは、地震等でアクセス道路が寸断された現場でもヘリコプター等をもちいて運搬し、空中から投下設置することができます。

地震などで山岳地帯の河川に形成されてしまった自然ダムなどに投下して、その水位を測るのだと想像します。万が一決壊などとなると下流は大災害なので緊急性も高く、その運用方法といいヘビーデューティーさが際立ちます。凄いもんです。結構売れたのなら日本も捨てたもんでもないけど。なお、この製品は「当然」NETISに登録されています。

NETIS登録番号KT-10009号

いやあ、接触式の2方式をちょっと勉強しただけで今日も終わってしまいました。奥深いな水位計測。

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