連載小説 第154回 4ビットAI内蔵 “詠人舞衣子” の思い出

Momoe Sakurada
ペンネーム
桜田モモエ

<これまでのあらすじ>

サイコーエジソン株式会社の詠人舞衣子(よんびとまいこ)です。訳あって4ビットAIを内蔵しています。心理学科卒文系女子ながら先端技術製品の営業に携わっています。10年近くに及ぶ海外赴任(アメリカ、ドイツ)を経て、今は東京から海外市場をサポートしています。インターネット、IT機器、携帯電話など新しい技術や製品が日々生まれ、それらをサポートする我々の電子デバイスビジネス(半導体、液晶表示体、水晶デバイス)も大忙しですが、台湾や韓国などの新興勢力も台頭してきて、日本の電子デバイス業界は激変の連続でした。

(日本半導体の栄光と挫折?『詠人舞衣子』総目次はこちら

 

第154話 名古屋と言えば?

私、詠人舞衣子(よんびと まいこ)は、サイコーエジソン株式会社の25年生。文系ですが技術製品(半導体などの電子部品)の営業に携わっています。10年にわたる海外赴任生活(アメリカ、ドイツ)を経て東京勤務中。世界のIT産業はどんどん変化していくので、ビジネスも大忙し。我々の半導体の売上げも2000年にはサイコー!だったのですが、その後、状況は変化していきました。市場がどんどん動いていく中、我々の電子デバイス営業本部にも毎日のように変化が起こっていました。

 

5月のカーエレ営業会議に私も呼ばれて名古屋へ出張しました。海外のオペレーションについても皆さんと情報共有する事になったからでした。久し振りの名古屋です。NHK名古屋放送局の近くにあるオフィスで午後いっぱい会議をして、その後、皆で錦三丁目へと繰り出したという次第です。

その日は、名古屋名物の手羽先で有名なお店で懇親会をしました。

「みなさん、今日は有意義な会議ができました。第2部も盛り上がっていきましょう!」

と本日の幹事さんが元気な声で懇親会を始めてくれました。

「それでは、久し振りの名古屋へ来てくれた舞衣子さんに乾杯の発声をお願いしま~す」

と促されて、私もちょっとだけ、挨拶をする事になりました。

「みなさん、カーエレ営業部の会議にお招きくださって、ありがとうございます。ご存知の通り、部長のトム君と私は同期で、アメリカへもドイツへも一緒に赴任した仲なので、とてもお世話してま~す。あ、間違えた、お世話になってま~す(笑)」

「いいよ、舞衣子、お世話してま~すで(笑)」

「いえいえ、トム君、最近は私も謙虚という言葉を覚えてきたので(笑)」

「それは良かった!」

「で、ですねえ。海外関係はワタクシ詠人舞衣子にお任せください! なんですけど、中でもカーエレのオペレーションは、トム君のためにも皆さんのためにも、色々お世話しちゃいますので、宜しくで~す。今日はみんな楽しみましょう! かんぱ~い!

「かんぱ~い!」

「かんぱ~い!」

てな感じで、生ビールのジョッキがいくつも宙に舞い上がりました。

名古屋が発祥の手羽先の唐揚げという料理は、従来あまり食べられる事のなかった鶏の羽の先の方の部分を、甘辛いタレなどをつけて美味しく食べるようにした料理だそうです。ものを無駄にしない名古屋ならではの発明かと思います。

とてもビールに合うので、手羽先もビールもどんどん進んでしまうのですねえ(笑)

名古屋には名物料理がいくつかあって、味噌煮込みうどん、きしめん、ひつまぶし、味噌カツなどが挙げられるようですが、手羽先もその一つなのだそうです。あと、料理というか分かりませんが、喫茶店のモーニングというのも名古屋名物の一つです。

私も、国内外あちこち出張してきましたが、名古屋は好きな街の一つでしたね。

その頃、トム君は、広島へ行ったり、大阪の池田へ行ったりと、名古屋より西の方へ出張する機会が増えていました。自動車関連のお客さんがいくつかあったからです。

広島では、仕事の合間に、原爆ドーム、平和記念公園、広島平和記念資料館を訪問したそうです。出張なのに観光しちゃっていいの?などと思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、観光というのは、大事な社会見聞ですよねえ。折角その地を訪れるのですから、その地にしかないものを見たり、味わったりするのは、悪くないと思うのです。ま、いいでしょう、あはは。

広島平和記念資料館は、日本に住んでいる人なら一度は訪ずれてほしい場所です。そして、各国のトップの方々にはぜひともお願いしたいと思います。私も訪れた事がありますが、とてつもない衝撃を受けます。長崎にも長崎原爆資料館がありますので、そちらもぜひ訪問するのが宜しいかと思います。

さて、そんなこんなしている中で、トム君は5月のある日、滋賀県の彦根市を訪問する事になりました。そこには彦根城という井伊さんの居城がありまして、それは古くからの天守がそのまま残っている史跡です。高いところが好きなトム君はその天守閣にも登って、琵琶湖を眺めたりもしたそうですが、それとは別に重要なミッションがあって彦根を訪れたのでした。

そのミッションとは、何かと申しますと、ある方のお葬式に参列する事だったのです。

続きは次回お話し致します。

 

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