特許庁のサービス
個人発明家が「いかに無料でお手軽に特許調査するか」という記事を書く予定でしたが、調べるうちに「知財システムのパラダイムシフト」を知りました。AIがひたひたと知財の世界にも進出しています。このままだと調べものが発散して記事が書けないので、特許の基本に戻ります。まずは特許庁が無料で提供しているサービスからの紹介です。Araha が知財部門を離れて数年になりますが、特許庁のサービスは驚くほど拡充していました。
はじめての方へ
・特許庁のHPにアクセスします。
・特許庁のホームページから2回クリックで「初めての方へ」のページへ
ホーム> 制度・手続> はじめての方へ
・「はじめての方へ」を起点に基礎知識やサービスにアクセスできます。
①特許出願までの概要
初めてだったらここを読む~特許出願のいろは~
https://www.jpo.go.jp/system/basic/patent/index.html
②拒絶理由通知書・特許査定・登録査定の通知を受け取った方へ
お助けサイト~通知を受け取った方へ~
https://www.jpo.go.jp/system/basic/otasuke-n/index.html
③電子出願の方法を知りたい方へ
ひな型を使用して、電子出願を行う場合
電子出願ソフトのご利用方法(動画)
https://www.jpo.go.jp/toppage/movie/pcinfo/index.html
かんたん願書作成を使用して、電子出願を行う場合
初心者のための電子出願ガイド
https://www.jpo.go.jp/system/process/shutugan/pcinfo/hajimete/index.html
①特許の出願から登録までの手順が理解できます。
「はじめての方」向けなので、フローチャートが特許登録までしかありません。実務ではこのフローの他に、外国出願、審判、知財高裁、特許売込み、ライセンス契約、特許管理、などなど「もっと大変ですよ」が続きます。
②お助け情報
お役所のHPも「デザイン思考を用いた行政サービスの改善」ということで、「デザイン経営のプロジェクトのUIチーム」によるWebページデザインを始めるそうです。「どこぞの商用サイトに来てしまったの?」と感じるようなUIです。
経済産業省 ニュースリリース 2020年1月14日
ひとりでがんばる知財担当者のためのお助けサイトを開設しました
https://www.meti.go.jp/press/2019/01/20200114002/202001014002.html
特許庁では、2020年1月14日(火曜日)から、ひとりでがんばる知財担当者や初めて出願手続をされた方などを対象に特許庁ホームページ内に「お助けサイト」を開設しました。特許庁から送付される「拒絶理由通知書」や「登録査定」に対して、次に何をすれば良いかを、わかりやすく案内しています。
今後の予定
2020年4月から「拒絶理由通知書」や「登録査定」に添付される「注意書」にQRコードを付して本サイトへのアクセスを容易にする予定です。
③電子出願
・「ひな形方式」と「かんたん願書作成」の2種類の作成手段があります。
・特許出願は、2種類の提出方法があります。
(a) 電子証明書と専用の出願ソフトを用いてインターネットから特許庁に出願する。
(b) 紙媒体は、特許庁へ郵送または特許庁に持参して出願する。
残念なところは、作成した電子データをメディアに入れて特許庁に持参しても出願できません。電子データを紙にプリントして出願する場合、特許庁で紙から電子データに変換して、その際の入力手数料を請求されます。
特許検索ツール
●[INPIT]独立行政法人 工業所有権情報・研修館
● 特許情報プラットフォーム|J-PlatPat
特許庁に関連する独立行政法人「工業所有権情報・研修館」は、特許検索ツール「J-Platpat」を提供します。
「J-Platpat」は、Araha が知財部門に異動したころの有料の特許検索ツールよりも便利な上に無料です。10年前にJ-Platpatのような特許検索ツールを提供したら、「民業圧迫」と言われたでしょうが、現在の商用の特許検索ツールは更に進化しているので、競合しないのでしょう。J-Platpat の進化した機能は、
・特許分類とキーワードを掛け合わせた検索
・近傍検索
・外国特許公報(米国・欧州・国際出願)の英文テキスト検索
・国内の公開特許公報等のテキスト検索が可能な期間の拡大
・検索結果表示件数の上限拡大
・OPD照会、日米欧中韓などの複数特許庁パテントファミリーの手続や審査に関連する情報(ドシエ情報)を分かりやすい形式で参照できる。
・経過情報、審査書類の照会範囲を拡充し、審判書類の照会も可能
・検索結果のCSV出力
Afterword
星新一は特許に関心があったようで、ショートショート作品に「特許の品」などがあります。他にもエッセイで特許について書かれてました。
星新一は「きまぐれ星のメモ」の中で~中略~「利口な青年は特許庁に就職し,特許実務の能力を身につけてから,民間に移る」のが出世の近道ではないだろうかと書き,又,「弁理士は現代で最高の収入を誇る職業だそうだ。特許庁は多忙で活気があり,七年審査官をやれば,無試験で弁理士になれる」と記している。
特許庁の審査官の仕事ぶりは、特許審査(他国と比較して高品質)の目標件数ノルマが1日2件(最終処分の年間300件が常識 by 角田芳末先生)を聞いて、仕事が遅いArahaは「絶対に無理」と思ったのでした。
確か星新一は特許庁について、「税金を使わないで業務を行う唯一の官庁である」と記していた記憶があります。(裏付けの検索ヒットなし)
特許庁の特別会計の開示を見ると、
令和2年度 予算
歳入=2162億円 歳出=1649億円
剰余金=513億円 (前年度からの剰余金 881億円)
(一般会計からの繰入金の額)1700万円
特許料等収入があるため、毎年のように数百億円の剰余金が発生してます。
一般会計からわずかな繰入金があるのは、「税金を全く使わない」を避けるための大人の事情でしょうか。
出典
◆小説の中の弁理士と特許(2)
パテント 2003 Vol.56 No.2 会員 桑原英明・中島正次
https://system.jpaa.or.jp/patents_files_old/200302/jpaapatent200302_078-082.pdf
◆面接審査と私
特集《審査官面接》パテント2013 Vol. 66 No. 13 会員 角田 芳末
https://system.jpaa.or.jp/patents_files_old/201311/jpaapatent201311_021-029.pdf
◆「特別会計に関する法律」に基づく特別会計に係る情報開示 | 経済産業省 特許庁
https://www.jpo.go.jp/system/laws/sesaku/yosan/kaiji/tokukai_zyouhoukaizi.html
予算に関する情報 令和2年度(PDF:97KB)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/sesaku/yosan/kaiji/document/tokukai_zyouhoukaizi/yosan2020.pdf