連載小説 第2回             4ビットAI内蔵 “詠人舞衣子” の思い出

ペンネーム    桜田ももえ

 

 

 

 

 

<これまでのあらすじ> 就活で地方の時計メーカー(上諏訪時計舎)に決まった詠人舞衣子(よんびとまいこ)。なにゆえか4ビットAIが埋め込まれている早慶大学JD(女子大生)です。慣れ親しんだ東京を離れ、しかも心理学科卒バリバリ文系女子なのに、地方のメーカーなんかに就職して大丈夫? 舞衣子のチャレンジが始まります。

第2話 地方の時計メーカーに決まった!

私、詠人舞衣子(よんびと まいこ)は、都会の生活を離れ、あえて地方に就職しました。何事もチャレンジと思っています。それと、私は4ビットAIを内蔵していますので、そこのところヨロシクお願いします! あ、言い遅れましたが、本小説は現在1980年。エイちゃん(矢沢永吉さま)が、「そこんとこヨロシク!」 とか言っていた時代です。

この年、TOTOが、我々の魂を揺さぶる画期的なイノベーションで人類初の「ウォシュレット」を発売(ワタシ的にはノーベル賞でもいいくらいの発明かと思いました)。また、日本は高度経済成長のさ中で自動車生産台数はアメリカを抜いて世界1位になるという快挙を達成しました。それと、百恵ちゃんが三浦友和と結婚して引退、世代交代のように聖子ちゃんがデビューしたのもこの年でしたね。あ、今時の皆さんだと山口百恵さんとか松田聖子さんとか言わないと分からないでしょうか。言っても分からないか(爆)。

 

 

 

 

私はその年の4月に地方都市の時計メーカーである上諏訪時計舎に新卒入社しました。初めて親元を離れての一人暮らし。少々不安もありましたが、暮らし始めてみると、毎日が新たな発見で、それも大抵面白い事の連続なので、寂しいだの不安だのという事は殆どなかったと記憶しています。

まず、何と言っても毎日温泉に入れるのは素晴らしい事でした。私が住んだ女子寮には大きなお風呂があり、蛇口をひねればいっぱい温泉が出てくるのです。スゴイですよね。しかも、湧出量が豊富らしく、温泉は掛け流しで清潔感バッチリでした。さすがは湖と温泉で多くの観光客を呼んでいる街です。そのおかげか私の肌はつるつるになり、血行も良くて、冬の寒さが尋常でない地方なのに滅多に風邪もひきませんでした。

さて、上諏訪時計舎で私が配属されたのは営業部。心理学科卒なので、てっきり人事部とかに配属されるかな、と思っていたのですが、入社式の後の発表では営業部と聞いて少しびっくりしました。しかし、まずは何でもチャレンジだと思っていましたので、時計を売る仕事も悪くはないかなとすぐに思ったのを覚えています。

同じ配属になった同期入社の他4人と一緒に営業部のあるフロアーに入りました。自分もちょっとだけ緊張していましたが、皆はもっと緊張した面持ちで、ぎこちない様子だったので、それを見てとても落ち着きました(笑)。営業部長に挨拶し、そこで、君たち5人は全員、“ハンドウタイ営業課”に配属になる、と言われました。ハンドウタイって何?と思いました。ハンドウタイという名前の時計があるのか?と思っていたところ、業務内容の説明を聞くうちに、どうやら時計とは無関係の仕事らしいと分かってきました。そもそも、半導体ってなんなの? と自分の不明さを恥ずかしく思いましたが、同期の男子に聞いてみると、4人のうち3人はあまり分かっていない様子。あ、私以外は4人とも男子です。

4人の同期は4人ともイケメンでしたが、そのうち1人はかなりのイケメン早慶大(理工)。あとの2人、東大(経)と早慶大(商)はまあまあイケメンという感じで、もう1人の中大(法)はイケメンではあるものの何だかスットボケ男子という感じ。私と同じ早慶大が2人いました。でも学部も出身地も違うので、全く初対面です。あ、全くの後には否定形のはずなので、使い方間違いましたでしょうか。

それはそうと、東大からもこの会社に入る人いるんだなあ、とちょっとびっくり。ま、東大の落ちこぼれ的な方でしょうか(失礼)。・・・というのが最初の印象でした。ところが、後々この東大落ちこぼれ(?)男子とは、同期の中で最も深く関わる事になるのですが、そのお話はまたおいおいしていきましょう。

え、私? あ、すみません、自分で言うのも何なんですけど、私はイケメンに負けず劣らず可愛い女子でした(笑)。何が可愛いって、自分で言うのも何なんですけど、笑顔が可愛いんです、私。というか、いつもニコニコしちゃう天真爛漫のポジティブ女子なんですね。だから、男女限らず友達も多いし、初対面でもすぐ友達ができてしまうタイプで、かなりお得な体質ですね、きっと。あ、すみません。自画自賛しすぎですね。でも、ホント、可愛かったんです・・・。

え、今はですか? そう聞かれるとちょっと返答を躊躇してしまいますが、まあ現在のお姿はご想像にお任せするとして、先を急ぎましょう。

あ、それと、いくら友達がたくさんいるからと言っても、また大河小説になるかも知れないからと言っても、友達全員に登場してもらう訳にもいかないので、お話の流れの中で大事な方にだけ登場頂く事にします。あしからずですね(笑)。

そんなこんなで、私の半導体営業人生は始まったのでした。

 

 

第3話につづく

 

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