鳥なき里のマイコン屋(42) 第2部開発ツール編スタートにあたり

シングルチップ・マイクロコントローラ、MCU、CPUにROM/RAMまたは相当のメモリと周辺回路まで集積した「マイコン」、そのメーカーも一巡できてしまった感じ(もし落ち漏れあったらご指摘ください、慌てて追加いたします)なので、どうしようかとしばらくお休みしておりました。満を持してということはまったく無いのですが、第2部ということで開発ツール編をスタートしたいと思います。今回は、スタートにあたり前置きかな。

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土木でエレキ(12) 法面(斜面)モニタリングの世界その2

前回、がけ崩れ、斜面の崩壊、地すべりなど、自然の斜面や人工的な法面などをモニタリングする方法について、その技術的な要素から調べさせていただきました。今回は、その歴史的な発展と傾向といったものを調べてみたいと思います。その手がかりとして使わせていただくのは例によって特許です。

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介護の隙間から(34) 交通安全、立場の違い、対策の差

交通安全は、年齢に関係ありませんが、身体機能や認知機能の低下している高齢者の場合には特に注意が必要なようです。実際、交通事故の死者数は年々減少しているけれども高齢者の占める割合が増加している(人口に占める高齢者の割合も増えているのだけれど)といった指摘もあります。今回は、一般的な交通安全対策の中で、高齢者向けの対策といったものがあればピックアップしたいということで調べてみました。

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Literature watch returns(2)進化するSDR連載 その2 トラ技、CQ出版

前回、「再度の」SDR=Software Defined Radio(IMFの特別引き出し権ではありません)連載がCQ出版、トラ技で始まったということで取り上げさせていただいたのでした。それから3カ月あまり。連載続いています、こちらもちゃんと読ませていただいております。前回は、11月、12月、1月の3カ月分だったのですが、今回は2月、3月、4月についてネタばれにならない程度にふれさせていただきたいと思います。

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土木でエレキ(11) 法面(斜面)モニタリングの世界その1

大雨が降る度、また地震の度に聞こえてくる土砂災害、がけ崩れ、斜面の崩壊。これだけ問題になっているのだから、法面(斜面)を見張る(見守る)技術もいろいろある筈と思って調べ始めました。すると思った以上にいろいろあります。それに、活躍している電子デバイスの種類も実にいろいろ。これは食いつかないわけにはいかないです。しかし、いろいろ調べる切り口がありすぎます。まずは第一回ということで、ともかく活躍する要素を列挙、分類し、おぼろげながらの全体像を描きたいと思います。

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冥界のLSI(6) Motorola、DragonBall PDAを先駆ける

SoC以前のSoCプロセッサ話、どうもx86側に引きづられ過ぎたようです。登場したてのx86の対抗馬と言えば68K(MC68000)でした。そしてx86側にPC/AT互換のSoC(まだSoCという言葉は一般化していない)が登場した1990年代中盤、68KにもSoCプロセッサが登場し、「一山あてる」ことになるのです。市場はPDA、これまたPDAという言葉以前にApple社がARMプロセッサを使ってNewtonという装置を出したけれど「あてられなかった」市場です。その市場を本格的に立ち上げたのは、Palm社でした。そしてそのプロセッサこそ、DragonBallの名で知られるMC68328とMC68EZ328でした。

(「黄昏のSoC」改題)

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冥界のLSI(5)ALI、M6117 組み込み向けPC/ATシングルチップ

前回「1995年から1996年くらいにかけて実は何社かほぼ同時期にこれ(PC/AT互換のSoCプロセッサ)に取り組むのです」などと書きながらちょっと間が空いてしまいました。今回は、同時期のPC/AT互換SoCプロセッサ(何度も書きますがまだその時期にはSoCという言葉は一般的ではなかったのです)、ALI社のM6117をとりあげます。ALI社は、パソコンメーカのAcer社の子会社として出発しており、当時は Acer Laboratories Inc. が正式名称です。チップセット業界では「アリ」と呼ばれており、親会社のAcerに限らず、台湾のマザーボードメーカ各社にチップセットと供給していました。マザーボード用のチップセットだけでなく、グラフィクス、I/O、ストレージなどパソコン関係のチップセットをほとんど網羅するような台湾チップセット大手の一角であったのです。後にマザーボード向けのチップセットはインテルとAMDの寡占化が進み、ALIは本業であったパソコン用のチップセット部門を切り離して売却し(UMCに売ったのでULIという名になった)、組み込み市場に舵を切ることになります。M6117は、組み込み市場向けにALI社が初めてプロセッサコアまで集積したSoCプロセッサであったのです。

(「黄昏のSoC」改題)

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冥界のLSI(4) AMD、Elan SC300/400 Single Chip PC/AT

さて黄昏といいつつ、SoCという言葉以前の夜明けの時代の高集積プロセッサを経めぐっている本シリーズですが、今回はx86でしぶとく生き残ってきたAMD社の高集積プロセッサへの過去の取り組みを振り返りましょう。前回は、C&T社がせっかくPC/XT互換の「シングルチップ」を作ったのにあえなく立ち消えになった話でした。であれば、次はPC/AT互換の「シングルチップ」でしょう。C&T社のPC/Chipよりは数年あと、1995年から1996年くらいにかけて実は何社かほぼ同時期にこれに取り組むのです。ただし、この時代、既にスーパスカラーのPentiumプロセッサが登場しています。そしてOSはWindows 95の時代。

(「黄昏のSoC」改題)

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冥界のLSI(3) PC/Chip: The First True Single-Chip PC

1980年代、80186の登場後、Intelは何度か80186を超える高集積タイプのx86プロセッサを作ろうとした形跡があるのです。しかし結局市場には登場しません。それには1980年代中盤からIBM-PC/AT互換の「チップセット」メーカー各社が大量に(一時200社もあると言われた)登場したという時代背景も影響していると思います。当時チップセットメーカーの一番手といえば、Chips and Technologies社でした(以下C&T社と略します。)そのC&T社は90年代初めにはチップセットに留まらず、CPUにも進出しインテルと争いになるのです。自社のCPUを作った彼らは、当然、自社のチップセットとCPUを結合し、「シングルチップ」PCというコンセプトでチップを打ち出してきました。外部にメモリとクリスタルをつければ「パソコン」ができるという触れ込みでした。まだSoCという言葉以前の1991年。

(「黄昏のSoC」改題)

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介護の隙間から(33) 浴室の見守りにもセンサ?

浴室事故は交通事故より死亡例が多いそうです。ヒートショック、転倒など危険因子が浴室には多数あるからだと思います。そのため高齢者向けの浴室の安全対策は各種存在しています。まずはプライマリな選択として、事故を起こさないようにすることが先決なので、浴室のリフォーム等を通じて

  1. 浴室暖房、断熱材などのヒートショック対策設備
  2. 転倒防止用の床、出入り口、手すりなど
  3. 転倒および溺れ事故対策のある浴槽

物理的な対策を施すのが基本であると思います。しかし、事故になりかかった、あるいは事故になってしまった場合を早期に検出して知らせる「見守り」機能は、最後の歯止めとなり得ます。電子デバイスが主として活用されるのはこの部分であろうと考えます。今回は、浴室向けの見守り装置を調べてみることにいたします。

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IoT何をいまさら(11) HDKにみるセンサ品種展開の歴史

繰り返します「IoTはデバイス商売じゃねえ」と言われつつ、デバイス、それも一番先っぽのセンサにこのところフォーカスしております。観察するにセンサ屋さんにはどうも2つの流儀があるようです。ある特定のセンサ、測定対象にこだわってそこに集中するタイプと、各種のセンサを製品ラインナップに取り揃え、広い要求にこたえるタイプと。特定のセンサには、それぞれ特有の材料や製造方法などが必要とされます。集中タイプでは該当分野を深掘りしていくことになるでしょうが、「各種」を取りそろえる場合、異なる技術を次々と物にしていかねばならない筈。そんなセンサ品ぞろえの過程を、HDK(北陸電気工業)の沿革と公開資料から読み取ってみたいと思います。

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鳥なき里のマイコン屋(41) SiFive RISC-V、MCUにもなり MCUではなく

頭の片隅にその名はちらちらしつつも、いままで避けてきていましたものに

RISC-V

があります。最近「盛り上がっている」オープンな命令セットアーキテクチャです。

オープンで自由だ

などと言われると何かよさげでつい浮かれて乗ってしまいそうな気もするのですが、ちょっと懐疑的な気持ちもあるのです。自由の裏にはそれを維持するための努力がとっても必要だから。でもそろそろ避けているわけにもいかない時期に来ているようです。

RISC-Vは「アーキテクチャ」であるので特定の実装に依存することはありません。しかし、その実チップとなれば実体ハードウエアを持たざるを得ず、特定の実装になるわけです。そこで登場するのが、「実チップ」を手掛けている会社ですが、その中でSiFive社は本命的な一社じゃないかと思います。この会社がカバーしようとしている「実装」は、Arm Cortex-Aシリーズクラスの比較的ハイエンドからCortex-Mシリーズクラスのローエンドまで幅広く含むようです。下の方はまさにマイクロコントローラ(MCU)領域、そして、実際「マイクロコントローラ」に分類せざるを得ない「実チップ」も出しているようなのです。この投稿のシリーズ、実装とその売り方(売られ方)に興味があります。いたしかたありません、RISC-Vのマイクロコントローラを眺めておきましょう。

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冥界のLSI(2) ARM250、ARM最初期のSoC

今日、Armコアのプロセッサというとまず間違いなくSoCプロセッサです。主要部品として、その外側にメモリをとりつければ「だいたいのシステム」が出来上がるという意味で。一方、x86プロセッサでは主流は単体のプロセッサ(現代的にはメモリコントローラやGPUのような「周辺」も取り込んでいるのでSoCと言えなくもないのですが、必ずお供のチップセットなど周辺チップを必要とする構成なのでSoC分類にはいれません。)で、x86コアのSoCプロセッサは傍流であり続けました。両者の使われ方はかなり大きく異なると言わざるを得ません。しかし、最初からArmもSoC主体だったわけじゃないのです。出発は単体プロセッサであったのです。今回も「黄昏」というタイトルに反して、「夜明け前」の時代、”ARM”がまだ単体プロセッサとして使われていたころに戻り、黎明のSoCプロセッサを振り返りたいと思います。

(「黄昏のSoC」改題)

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鳥なき里のマイコン屋(40) TDK-Micronas、センサからMCU

後回しにしていたら、先月2019年2月に新製品のプレスリリースが出ていたことに気が付きました。TDK-Micronas社 堂々のArm Cortex-M3搭載MCUの新機種を発表です。TDKという名を冠しているとおり、日本のTDKの傘下にありますが、こちらドイツの会社です。マイクロコントローラメーカの一覧表の「欧州」分類に追加しないと(後で時間があるときに改定いたします。)TDK-Micronas社は、ホールセンサを車載や工業用途向けに売っているのがメインに見えるのです。そして、センサ側(位置を見張る側)からアクチュエータ側(位置を動かす側)に守備範囲を広げていくのにあたり、「スマートな制御」のためにプログラミングの必要が出てきて、徐々に「マイコン屋」化していったのではないかと推測されます。かなり珍しいケースではないかと思います。

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