介護の隙間から(13) 使用されている無線、中間結果

徘徊検知装置への応用が予想される無線方式を、いろいろ調べ始める前の第4回で列挙してから、具体例にあたってきました。調べも進みほぼ概要が明らかになったように思うので、ここで一旦まとめておこうと思います。予想通りの部分もありますが、予想とはかなり違う使い方もあり、やはり調べてみなければ分からないものだ、というのが正直な感想です。まずは使い方とそこで使われている無線方式の対応表を作りましたので御覧ください。

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使い方無線方式
マイクロ波の移動物体からの反射のドップラー効果から物体を検出。24GHz帯(Kバンド)特小無線
無線タグ、無線子機との近距離通信により、タグ、子機の存在を検出RFID(パッシブ)、RFID(アクティブ)、微弱無線、BlueTooth LE、BlueTooth
センサなどからの情報をスピーカ、表示装置などの装置に通知特小無線、WiFi、携帯電話網(W-CDMA、LTE)、EnOcean、LoRa
位置情報の取得GPS、特小無線

ここでは無線を4つのカテゴリに分けたのですが、無線を本来的な「コミュニケーション手段」として使用しているのは実は3番目のカテゴリだけで、他の3つは、一種のセンシングのためと言っても間違いでないかもしれません。

第1のカテゴリは、人感センサとして使われている24GHz帯の特小無線です。第8回および部品テーマの第3回でとりあげさせていただきましたが、移動物体を検知するのに使われる、まさにセンサです。人感センサという場合、人体の発する熱を感知する焦電型センサが、一般的にも徘徊検知装置でも多く用いられているのですが、こちらの24GHz帯ドップラーセンサも複数の会社が採用しています。周囲の温度が高い(夏の屋外だと人の体温と周囲温度に差がないケースもありえます)とか、霧が出ているなど、外乱がある屋外使用などでは焦電型センサより誤動作の可能性が低いと考えます。出入り口などで室外に向けてセンサを設置するなどの用途ならこちらを使う方が安全に思われます。また、センサとソフトウエアの設計次第では、呼吸や脈などのバイタル情報まで取得できる、というのも、この方式の大きな強みです。これは「王道」のベッドサイドでの離床センサとしての利用にも利点であると考えます。

第2のカテゴリは、無線識別装置(RFID)としての無線の利用です。被介護者の靴やカバン等に無線タグをつけておいて出入り口で検出する、あるいは、逆に介護側が無線タグを持ち、無線タグを持った人が出入り口の人感センサー前を通過しても警報はでないが、無線タグを持たない人が人感センサーにかかると警報がでるなどの、識別装置としての利用方法です。IDという情報を送信するので無線「通信」ではあるのですが、やっていることは被介護者の検出ですから一種のセンシングとも言えます。靴につけておいて床にしいたマット型アンテナで検出するという方式もあったので、パッシブ型のRFID(各種の方式あり。Suicaなどのカードにも使われる。靴につける一般向けRFIDではマラソン大会の着順管理用のパッシブタグが有名)利用のものもあると考えているのですが、無線方式が明確に書かれていないケースが多くて困ります。ほとんどはアクティブ型(電池を持っていて自分から電波を出す)のRFIDです。車のキーレスエントリなどと同様な無線方式を使っていると推測できるものもあります。しかし、予想したよりも多かったのが、Bluetooth LE方式の子機でした。やはり世界的に数がでる方式の方が装置の製作も楽ということはあるんじゃないでしょうか。いずれにせよ第2のカテゴリは通信距離があまり長くない(数十cmから数mくらい)ので、出入り口などに無線タグ子機を検出するための一種の親機を設置して局所的に通信することが主となる筈です。しかし、中には家の中すべてを通信可能範囲とし、その範囲から外れると「徘徊」と判断するものもあるので、距離の出る特小無線方式を使っている場合もあるようです。

第3のカテゴリは、真の無線通信と言えるでしょう。離床センサや、上記の無線タグ検出用親機などから上がってきた情報を、介護者の近くにある装置に通知するための通信装置です。通知といっても、同じ家や建物の中でスピーカやアラームを鳴らすための通信と、遠隔地にいる人物へのメールやアプリへの通信ではまったくレンジが異なります。後者では当然インターネット接続が前提となるのですが、第12回で取り上げた介護保険適用の条件から一般的なインターネット接続(つまりは無線ーWiFi-/有線のLAN接続)は、オプション品として保険適用部分から外されてしまうようです。これに対して特小無線などの介護の目的のみのローカルな通信方式は、この目的のみの装置なので適用になるようです。また、センサと親機間の数十mレンジの通信に電池交換不要なEnOcean方式、10kmといった長距離通信可能なLoRa方式など、特小やWiFiとは異なる方式の製品も存在することを確認しました。これらについてはまた別稿で報告しようと思います。

第4のカテゴリは、位置情報を取得するためのものです。GPSが代表例です。他にGPSでない特小無線を利用していると考えられる位置情報検出方式も存在します。一般的なGPS装置であると例の保険適用条件を満たさない可能性が高いので、そこに落とし込むための工夫がされているのかとも思います。GPSに利用についてはもう少し調べてみる必要を認めます。GPS以外の位置情報検出方式は、第2のカテゴリの延長上のロングレンジなところにあります。室内から室外への検出部分は通常の徘徊検知装置として位置づけできるので、GPSよりは位置づけはしやすいのではないかと考えます。

次回以降、いままでに取り上げていない個別の方式をいくつかとりあげたいと思います。

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