もう一息で主要なマイクロコントローラ・ベンダを走破できそうな雰囲気になってきたので、さっさと行きたいと思います。本日は、台湾のマイコン屋さん、Elan Microelectronics社です。ビジネス的にはタッチ系の入力用ICの方がメインになっているのかな?と思いつつ、昔ながらのマイコンもしっかりやっている感じがします。
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以前はもっといろいろあったような気もしたのですが(気のせいか?)、今回調べてみるとElan社のMCU(ROM、RAM積んだマイクロコントローラ)コアは4種類。うち3種類は8ビットでした。台湾なので、8051コア製品あるよね、と予想してみれば、「当然」あります。しかし、主力は自社の8ビットコアのようです。それも2種類。こちらの勝手な意見で3種の8ビットコアをローエンドから、ハイエンドに向かって並べると
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- EM78シリーズ
- EM88シリーズ
- EM85シリーズ(8051互換)
こんな順番でしょうか。もっともローエンドにいるのが、EM78シリーズですが、このコアのデータシートを眺めていると
4ビットCPUのデータ幅を8ビットにした
というテイストです。もしかするともとあった4ビットを改造して8ビット化したものかもしれません。その割には、無理やり感はほとんどありません。嫌いじゃないですこの感じ。古き良き時代のマイコンテイスト。その
EM78をさらに拡張してみたEM88
これまた「自然」な拡張です。根幹部分は変えず、幅を増やして量も増やした、という感じ。深さ方向に増やすためには幅方向も増やさないと辻褄が合わなくなるので変な「工夫」で複雑にしないのならそうなるでしょう。EM78とEM88は血を分けた兄弟という感じが伝わってきます。また、住み分けもハッキリしていて、兄のEM88は機能(容量)が上、弟のEM78の方はコスト重視。ROMの品ぞろえをみると明確です。
EM78は1回しかROMに書けないOTP品中心
EM88は複数回書き込めるFlash品中心
です。OTP品は不便に見えるかもしれませんが、量産用のプログラムは1回書き込むだけなので、開発時の不便を我慢すれば、量産的にはOKです。なにせ、「OTP品」という言い方するとき、頭の中で比べているのはマスクROM(半導体工場でウエファ製造時にビットを作り込む)品です。マスクROMに比べたら、OTPだから納期のかかる工程が無くて良かったね、という感覚。
それに比べるとElan社ではFlash品は「高級機」という位置づけ。書き込み10000回保証ですが(この辺もメモリ製品のFlashと比べちゃいけません。このクラスのMCU、こんなもんです。) EM88、8051品はEM78に比べるとかなり高級に見えます。なお、8051コアは、最短1命令1サイクルの”1T”タイプのようです。ただ、台湾の会社にしては珍しく “1T” という表現はしていないと思います。命令互換で高速とだけ書いてありました。
そして最上位に eDSP と “DSP” という表現で鎮座するのが
EM16 という名の16ビットマイクロコントローラ
です。個人的な意見では、16ビットMCUといって間違いないです。しかし、DSPと言いたい理由が
ハードウエア乗算器搭載
というこの1点。16bitの乗算、およびMAC演算(積和)を1サイクルでできます。MAC演算さえできれば何かの信号処理にも使える、のは事実。でもね、命令セット的には、それほど信号処理に特化しているようにも見えず汎用のマイクロコントローラだと思います。ホームページでは “DSP” と宣伝していますが、データシートを見ると、控えめにマイクロコントローラという表現です。マーケティング担当者と、設計の担当者の温度差を微妙に感じます。この機種のねらい目は、
ブラシレスDCモーター
らしいです。売れているのか?その割には機種展開少ないが、これから?
しかし、ここの8ビット製品ラインナップ、売りは何かというと微妙な感じ。もしかするとタッチ系の入力デバイスに強い会社なので、その辺のチップと抱き合わせ? どうなんだろう??