台湾は、マイコン屋らしいマイコン屋が多くて良いです。その中でも本日調べさせていただく Sonix社は、調べるほどに製品の層の厚さを感じる上に(マイコンは多品種でなけりゃ)、ねらい目に合わせて特徴(周辺回路の味付け)も出ていて流石だと思います。惜しむらくは、ターゲットが比較的ローエンドのアプリ向けだというところ。まず、お値段的には、それほど美味しい商売にはならないんじゃないかしら。でもね、「マイクロコントローラ商売は薄利多売と見つけたり」でしょ。地道に行きましょ、地道に。
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Sonix社のホームページには「日本語」というページもあるのですが、ちょっと「残念」な感じだったので、上のリンク先は英語のページを選ばせてもらいました。この会社はマイコン(マイクロコントローラ)以外にもいろいろやっているのですが、手口(?)を見ていると根っ子はマイコン屋だと思います。まず、「汎用」のマイクロコントローラ・コアとして、
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- 32bit Arm Cortex-M0
- 8bit 8051
- 8bit 自社コアSN8
の3つをそろえ、それぞれにかなりな品種数をラインナップしています。Armはマイクロコントローラ用としては定番中の定番Cortex-M0。そして8ビットにはレガシー8051もそろえています。ここでは「Armのお供にレガシー8051説」ちゃんと成り立っています。なお、データシートの記述からして、ここの8051コアは “1T” タイプではないかと思われるのですが、そういう記法はとっていません。そういう”8051業界”ドップリという雰囲気は、Sonix社にはありません。この会社における8051はあくまで「傍流」でしょうか。それでも、Sonix社の8051コアのシリーズはなかなかな特徴でしていました。センシング向けの味付けの機種です。
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- オペアンプとコンパレータ
- チャージポンプ電源
- 12ビット逐次比較ADC、24ビット・デルタシグマADC
多くのセンサは信号微弱なので、アンプが必要になることもしばしばあります。また、大した電流ではないですが、電流を流さないとならないことも多いです。低消費電力、低電圧指向のマイコンの素のままでは電流流すのは辛い。逐次比較型のADC12bitはセンシング用途としてはギリギリ最低線越えくらいでしょうか。でも速度が遅いけれど24ビット精度のデルタシグマも選択できればなんとかなるかもしれません。8ビット機でこれだけ充実しているのも珍しいかもしれません。とは言え、この会社では後に述べるように、センシング向けの機種はやはり「傍流」なんであります、きっと。
これはまた台湾の定番でしょうか、前回のElan社と同様、比較的「高級品種」はFlash品、「廉価版」にはOTP品というROM使い分け路線です。OTP品は、自社の8ビットコアのみの設定。OTPの8ビット(テイストは4ビット風)なら、かなりお安いところまで攻められるのでは。しかし、この「汎用」マイクロコントローラのページばかり見ていたらいけなかったのです。Sonix社には
Voice Controllers
というカテゴリがあり、こちらにもマイクロコントローラに分類できるチップが大量にリストされていたのでした。
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- 16bit DSPというカテゴリのVoice processor、ROM, RAM搭載。
- 32bit SoCというカテゴリのArm Cortex-M0/M3、ROM, RAM搭載。
- Speech/Melody Controllerというカテゴリの4bit/8bit/16bit MCU
なんのことはありません、マイクロコントローラ群がもう一揃いあったのでした。Armなど、汎用はミニマムのM0ですが、こちらには上位のM3(MCUとしては標準機か)もあります。DSPと16bitはいまいちの詳細はハッキリしませんが、16bitのデータパスに乗算器くらいは積んでいるのではないでしょうか。8ビットは自社コアだと思います。その上、絶滅危惧種の4ビット機も「メロディーIC」として生息しておりました。音を鳴らすのが主要用途ではありますが、別に普通にマイコンとして使えそうな内部構成です。「音声用途」と明確とはいえ、明らかにMCUとして使えるものが、4/8/16/32ビット、「汎用」マイコンとは別にもう一そろい、結構な層の厚さで存在します。Sonix社のホームページから1行、引用させていただきましょう。
Sonix is a global leader in voice controllers with an extensive range of Voice ICs
確かに。これだけ力いれて、音声再生、合成系のICをラインナップしている会社も他にないかと思います。
ただ、4/8ビット機に最近のAI風味の音声を求めてはいけませんよ。蓋をあけるとささやかなメロディーが鳴る(オルゴール的な)とか、録音したガイド音声を機械的に再生する、といった用途です。昔からメロディーICというカテゴリがあったのですが、その流れのものです。
一方、DSPとか、Arm Cortex-M3とか上位機種であれば、「まともな音楽」鳴らすこともできそうです。カバーできる用途はかなり広がるのではないでしょうか。「汎用」のArmベースのマイクロコントローラも、改めて見直してみると、
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- デルタシグマ型のADC(音声の入力に使える)
- I2Sバス(ステレオにも対応)
など、音声/音楽系のためのインタフェースが装備されているものがあることに気付きました。この会社、かなり色、いや「音」を意識した品ぞろえになっています。勿論、普通に
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- USB
- UART, I2C
- LCDインタフェース
などもありますので、汎用のマイコンとしても使えます。でも、どちらかといえば、廉価版の音声系のアプリなんだけれども、LCD表示も必要、USBも必要ってな感じに向くのでは?でもそれってトイ的な。。。あるいは音声ガイド付きの家電かな。いずれにしてもあまりお値段高くは売れなそうだが。でも、ちゃんと市場を押さえている、ということの方が大事ですかね。