欧州というかドイツ半導体の巨人、Infineon Technologies社が後回し(?)なっていたのは他意はありません、たまたまです。MCU業界をひとわたり巡回しきるにあたって(といってまだ取り上げたいところはあるのですが)、トリということでご登場願うことにいたしました。Infineon社は、ドイツが地盤という土地柄からも、当然、
MCU製品は車載がメイン
です。他の車載向けMCUを展開している会社のHPを見ると、まず汎用品があり、車載品への入口もあるのですが、車載品の詳しいことは営業にお聞きください的なスタンスが多いです。(車載品、は車のプロの人以外来てもらっても困るということです。)しかし、Infineon社では何も言わなかったら車載、みたいな徹底ぶりです(というかドイツ人は皆、車屋さんにも思えます)しかし、そこにもコアの用途を整理して、車載以外にも住み分けを図る意図のようなものが感じられました。
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例によって使われているコアのリストから調べましょう。しかし、さすがに歴史と伝統ある会社(Infineon社のルーツは、シーメンス社)で、コアの種類も多いです。細かく分けているとなんだかよく分からなくなりそうなので、こちらの勝手な意見で、エイ、ヤ、 で以下のように分類させてもらいました。
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- Arm Cortex-M0/M4F 32bit
- TriCore 32bit
- C166 16bit系
- C500 8bit系 + 8051 8bit
蛇足ですがここでも「Armのお供にレガシー8051説」成り立っています。
まずは、ローエンド8ビットの方からも見て行きましょう。レガシー8051とともにC500系というInfineon社のシリーズがあるのですが、このC500系は、8051の上位互換で、機能を拡張したタイプです。8ビットは8051世界で決定っと。しかしちょっと驚くのが、
8051でも、工業グレードまたは車載グレード中心
というグレードの高さです。ご存知かもしれませんが、半導体には、
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- コマーシャル
- インダストリアル
- オートモーティブ
- ミリタリおよびエアロスペース
といった品質レベルがあります。端的には動作保証される温度範囲などが違います。お値段の方も同じデバイスなのにこれほど違うかというくらい「違い」ます。家電やトイなどを相手にしているマイコン屋さんは基本「コマーシャル」グレードで「インダストリアル」など設定がなかったりします。しかし、Infineon社はさすがにドイツ。8ビットのローエンドも「インダストリアル」がデフォ的扱い。これが「オートモーティブ」ともなると車載向けのいろいろな規格にも対応しないとならないのでさらに厳しくなります。この8051ベースのMCUは、実際の自動車では、末端の方のポンプとかエアコンとかの制御に使われるようですが、まぎれもなく車載、「受けて立つ」気力と根気と資金力の無いマイコン屋には手が出せない世界です。
これがC166 16ビットといいつつ32ビットでもあるコアになると、以下のように車載でも用途別に3系統に分かれます。
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- Powertrain
- Safety
- Body
多分この系統のコアは、過去においては車載向けの主力MCUだったのだと思います。しかし、この系統は「シングルコア」で先の展開が限られるので、負荷の重い用途から次に出てくる「マルチコア」の32ビット機に置き換わっていくのではないでしょうか。しかし、8051でも使える装置があるごとく、車の全てをマルチコア化する必要はないですから、この系統はまだまだこの先も使われていくのではないでしょうか。
そして今後の車載のメインコアと思われるのが、
TriCore 搭載の AURIX ファミリ
のようです。TriCoreと言われて、最初コアが3個積んであるのか?と早合点しましたが、そんなことはありません。
TriCoreを6個も積んでいる
あとで車載ならではのこの6コアの使い道に触れますが、非常に強力です。しかし、なぜ “Tri-” なのと思って、カタログ読んでいたら分かった気がします。引用させていただきましょう。
Based on a unified RISC/MCU/DSP processor core, this 32-bit TriCore™ microcontroller was a computational power horse.
RISCとMCUとDSP、並べて置くような概念ではなくて、ちょっとズレている気がするのですが、Infinion社の人がそう書いているのですから仕方ありません。この3つが統合されたプロセッサ、ということで納得しています。
上のように胸をはる(?)だけのことはあり、AURIX TC3XX系は、現時点では最強クラスの車載向けMCUじゃないかと思います。中でも車載らしいのが
Lookstep
と呼ぶ機能です。実際に処理を行うコアと、2クロック間をあけて同じ動作をしているLookstepと呼ぶコアを同時並行に走らせることができるのです。そして、実コアの処理結果(バス)とLookstepコアの処理結果(バス)を比較し、不一致だったらエラーとするのです。
車載用途では、特にメジャーなコア、例えばArm、でなければといったこだわりは少なくて、自社の独自コアでも「自動車会社とガップリ」やっていればOKという感じがあります。そのためか、「マイコンでは車載が主流」のInfineon社では、ここだけ見ているとArmの影が薄い感じです。汎用MCUとしても序列は
Arm Cortex-M0 < Arm Cortex-M4F < AURIX T2xx < AURIX T3xx
という感じで自社コアのTriCoreが優位。性能的にもシンプルなCortex-M0など、浮動小数も扱える6 コア搭載のTriCoreに対抗しようもありません。しかし、
ArmにはArmの生きる道がある
のです。なんと
PowerICの制御用のコントローラとしてのArm Cortex-M0/M3
が幅を利かせているのでした。確かにInfineon社のマイコン部門では、「車載」が主流なのですが、Infineon社全体としては、「パワーIC」に注力していることが明らかです。その「パワーIC」でパワーをスイッチするMOS FETなどを制御するコントローラとしてArmが使われているのでした。会社の中では傍流?のマイコン部門では非主流派だけれど、会社の中の主流?のパワーICではしっかり主流派と、Arm、さすがです。