Raspberry Pi、日本式に略せば「ラズパイ」、の関連書籍が各社から多種刊行されていることは皆さんご存知かと思います。日に日に縮小している感のある書店の理工系書籍の棚の中、さらに縮小傾向の著しく感じられる電子工学系統の中にあってかなり存在感のある「分野」であると言えるでしょう。手をつけている出版社も多く、「ラズパイ」メインの月刊誌も成立しています。もともとホビーや教育用で始まったRaspberry Piですが、いまでは産業応用も広がり、数年前で毎年数百万台、今では一千万超えているのではないかと想像される出荷台数の半分くらいが産業用途らしいです。関連書籍が多い中、「多少絞り込む」つもりで、
Raspberry PiのAI応用関連
で調べてみましたら、まだまだ大量でとても全部はカバーしきれません。今回はその中から3冊だけ購入させてもらって読んでみました。事態は思った以上に進行している?
※『Literature Watch Returns (L.W.R.)』の投稿順 index はこちら
まずは「買おうかどうか迷った」んだけれど今回見送ってしまったリストから。
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- 『スマートスピーカxAIプログラミング:自分で作る人工知能』ポンダット著 マイナビ出版
- 『ラズパイ&無料ソフトでAIスピーカーを作る』日経Linux編 日経BP社
- 『自然会話ロボットを作ろう!: Raspberry PiとArduinoで作る人工知能』鄭立著 秀和システム
- 『Raspberry Piではじめる機械学習』金丸隆志著 講談社
- 『AI自動認識/ロボットからソフトウエア・ラジオ/ハイレゾ・オーディオ/スパコンまで カメラxセンサ!ラズベリー・パイ製作全集[基板3枚入り]』トランジスタ技術編集部編 CQ出版
「AIスピーカ的なもの」は、別にやらないとイケないな、と思っているので上の3冊はそのときに検討することにしてとりあえずパスさせていただきました。下の2冊も捨てがたかったのですが(特に基板3枚入りにはぐっとくるものがありましたが)、今回は見送らせていただきました。実際に購入したのは以下の3種であります。
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- 『算数&ラズパイから始めるディープ・ラーニング』牧野・西崎共著 CQ出版
- 『ラズベリー・パイから始める身の回りAI実験 人工知能を作る』小池・鎌田他著 CQ出版
- 『ラズパイマガジン 2019年6月号』日経BP社
上の2つは、ともにCQ出版、さらに言えば発行は2018年の3月と4月、2冊相前後して発行されています。同じ「ボード・コンピュータ・シリーズ」。内容はといえば、前年2017年あたりに月刊誌である「インタフェース」に掲載された内容をまとめた「ムック本」です。インタフェース、どれだけラズパイでAIネタを掲載しているんじゃ、という感じですが、2年も3年も前の記事を読んで感心している私も私か。
2冊もほとんど同時に出して内容被らない?と多少に疑問を抱きながら購入してしまったんでありますが、さすがに考えられてました。端的に言えば、1の方が「スコープを絞ってまとまりが良く」、2の方は「広い範囲にざっと網を被せる」感じといったらよいでしょうか。実際、1の方は、インタフェース誌の特定月の特集を元に「加筆」という感じで、2の方は2年くらいにわたる各月の記事から関連記事をかき集めた感じなので、さもありなん。
ネタバレにならない程度に内容をまとめれば、1はメインの開発環境はChainerを使い、PCで学習、Raspberry Piで識別といったオーソドックスな方法から、学習から全てRaspberry Piの例などいろいろですが、ディープラーニング入門、という感じで取り上げているアルゴリズムはCNN、RNN、オートエンコーダとディープQネットワークに絞られています。多分、アドバンスドなトピックとしてのディープQネットワークの部分が、ムック化にあたって「加筆」された部分じゃないでしょうか。バックナンバ1冊買えば前半部分はこのムック本より安いけれど、後ろの方も読みたければ値段が高いこちらを買えと、いう思し召しかと。結局、購入させていただきました。
ちと思ったのが、最近AI関係でたまに目にする
算数
という言葉ですね。この本のタイトルにも入っている。英文にすれば同じなのだけれど、算数と数学、AIの人は、数学ではなく、算数という。確かに、1個1個の計算は算数的だからか?「こっちの水は甘いぞ」的な呼び込み文句にも思えるし、実際、算数なんだからという開き直り?にも思えるし、一種独特な言い回し。
2の本は、GoogleのTensorFlowで「キュウリの自動選別」から入るので、それで押していくのかと思っていると、サポートベクタマシンあり、テンプレートマッチングもクラウドAPIの利用もあり、自己組織化マップから最後はRaspberry Piとは関係ないNvidia Jetsonネタありと、とりあげている範囲が広いです。多分あちこちに「加筆」部分もあり、小ネタが多いけれど実用的かも。
1と2の両方を読んで理解したことの中で
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- ChainerはRaspberry Pi 1 B+ でも動く筈
- TensorflowはRaspberry Pi 1 B+では駄目
というのは大きい。非力なコア(その昔ARM 11がフラグシップ時代を知っているので複雑だが)でメモリ量の少ない1ではAI系駄目だろうと思っていたので、手元の1B+で動くものがある、ということで「なんかよかった」という感じです。(ま、3 B+も実は注文してしまっているのですがね。)
最後3番目、ラズパイマガジンの2019年6月号は、メインは『電子工作超入門』ということで「付録基板」つきの1冊。付録基板にトキめいて買わせていただいたのですが(多分、付録基板は何かに使うけれども、部品キットは買わないかもだな、単品で買うよりは安いのだろうけれど)、今回、注目したのは、
ラズパイGPUで50倍層のAI顔認識
という第2特集の方であります。ラズパイにもGPUが搭載されているというのは知識としては持っていたのですが、それをAIに使った事例というのは聞いたことはなかったです。利用が進まなかった理由としては、CUDAのようにそれを使うための仕組みに手頃なものが無いためもあるでしょうし、使ったからといって本格的なPC上のGPUには太刀打ちできないから、というのもあると想像します。しかし、ラズパイでAI応用やるのであれば、使わないと勿体ない気がすごくしていました。そのGPUをAIに使った事例が出てきた(その上、Raspberry Pi 1B+でも動作するようだ)ということで読ませていただきました。
とりあえず、手元の1B+で出来るものから試してみるかな~
やっている内に3B+も来るだろうし。。。