特許庁の広報
特許庁のステータスレポートを見てみようと、特許庁のHPを探していました。興味を引くコンテンツが多数ありまして、また興味発散しそうなので適当なところで区切ります。
特許庁には広報課は無く、総務部総務課に広報室があります。広報室の予算は潤沢なように拝察いたしますが、SEOは気にしてないと見えます。あるいは、官庁としては民間企業のようなHPにはできないのでしょうか。民間企業のSEO担当者にしたら羨むような環境ですな。
「特許の失敗学」の過去記事のフォローアップも行います。
出典:明示のないURLは全て特許庁ウェブサイトです。
●特許庁 刊行物・報告書
ホーム >資料・統計 >刊行物・報告書
https://www.jpo.go.jp/resources/report/index.html
◆特許庁ステータスレポート2020
https://www.jpo.go.jp/resources/report/statusreport/2020/index.html
特許庁ステータスレポートは、最新の特許庁の統計情報及び政策の成果をいち早く発信することを目的として、作成しています。国内外への情報発信ツールとして活用するため、日本語と英語を併記した構成としています。全体版一括ダウンロード(PDF:6,642KB)
(※ファイルサイズが非常に大きいのでご注意下さい。)
まず初めに特許庁の2019年の報告書です。英語と日本語の対訳となっていて、特許英語のお勉強の教材にもなります。
「ファイルサイズが非常に大きい」ご注意があります。どんだけ?と見ると6.6MByte(光回線では数秒でダウンロード)です。ケータイの5Gがサービス開始したというのに…過去のHPの記載を踏襲(コピペ)していることがバレバレですよ。
▼特許出願件数 (page.12)
日本の特許出願件数は約30万件で、右肩下がりの傾向が続いています。特許出願は大企業に偏っています。特許庁は大学・中小企業・スタートアップ企業の特許出願を推進する施策をいろいろ行っています。
▼PCT国際出願件数 (page.19)
日本国特許庁を受理官庁とするPCT国際出願件数の推移。
日本国特許庁のPCT国際出願は増加傾向にあります。
▼世界の特許出願 (page.38)
五庁(IP5)の特許出願件数の推移 (1-2-2図)
中国の躍進が目立ちます。中国の出願件数は年率+20%で増加しています。中国はGDPの増加率を上回るペースで出願件数を伸ばしています。米国が中国の覇権主義に神経を尖らすのも納得できます。
主要国のGDPをグラフ化してみる(最新) – 出典:ガベージニュース
▼ 8)AI関連発明の出願状況調査 (page.60-61)
特許庁が注目している出願分野は、「AI関連発明」
近年の深層学習を中心としたAI技術の進展を踏まえ、特許庁はAI関連発明の特許出願について国内外の状況を調査し、2019年7月、報告書とバックデータ*10を公開した*11。AI関連発明の国内特許出願は、第三次AIブームの影響で2014年以降急増。[2-1-6図]
▼付録 審査・審判の流れ (page.124)
前回の「特許の失敗学[9] 特許庁のサービス はじめての方へ」の記事の
「初めてだったらここを読む~特許出願のいろは~」のフローチャートは、
特許出願~特許登録までの簡易版でした。特許査定・拒絶査定の後の「もっと大変ですよ」の国内手続きの全て(最高裁判所まで)のフローチャートです。
▼付録 組織図・特許庁定員推移表(page.130-131)
なんともシンプルな組織図です。審査・審判に関わる部門以外には、総務部があるだけです。人事は人事院が所管するとして「総務は何でも屋」ですな。広報課もありません。
特許審査官のノルマ件数を推定してみます。
page.131 審査請求数 約24万件
特許1件の審査回数 3回 (仮定)
page.131 特許審査官定員 1682名
年間勤務日数 200日 (仮定)
(240000件×3回)/(1682名×200日)=2.1件/日
特許審査件数のノルマがあるとしたら、現在においても2件/日と推定できます。
特許審査官がいくら優秀でも有限の時間内に審査するため査定の結果が完璧でない場合もあります。大相撲の行司のように時間内に判定せねばなりません。特許査定・拒絶査定に対しては外部から「異議申立・無効審判請求」「審判請求」という「物言い」が入ります。大相撲の「物言い」は1回だけですが、特許は最終的に最高裁判所で決着するまで何度も判定が覆る可能性があります。審査官は審判請求の検討に参加します。審査官は「立行司の軍配差し違え短刀の覚悟」のような使命感で審査されているのでしょうか。
・特許審査官の採用案内に、業務説明のスライドがありました。
『Page.45 (参考)働く環境等に関する評価 官公庁ではすべて1位』とのことです。
特許審査官の採用 -国家公務員総合職(技術系)- | 経済産業省 特許庁
特許審査官業務説明スライド資料(PDF:3,323KB)
◆特許行政年次報告書2019年版
特許行政年次報告書2019年版
知財の視点から振り返る平成という時代
「特許庁ステータスレポート2020」も洗練されてましたが、こちらは更にお値段が張りそうな報告書です。電子BOOKもあります。
第1部 知的財産をめぐる動向
▼特許審査実績 (page.3)
2018年の特許審査実績(546,660件)から計算すると、
2018年の平均審査件数は 546660/1682×200=1.6件/日 でした。
実際には、1682名の審査官には管理職や初任研修審査官(3年)が含まれており、年に200日も審査業務はできないので、審査官は平均して2件/日の件数を審査しているでしょう。
1-1-25図 五庁の審査官数の推移 (page.11) を見ると、他国と比較して日本の審査官は少ない人数で一人当たり多くの件数をこなしています。
▼世界のPCT国際出願件数 (page.6)
日本はPCT国際出願件数では健闘してますが、平成時代に中国にPCT出願件数でも追い抜かれております。
第2部 特許庁における取組
▼第1章 2018年度における特許庁の取組
デザイン経営に関する取組 ………. P.96
スタートアップ支援に関する取組 …. P.97
標準必須特許に関する取組 ………. P.97
平成29 年度に経済産業省・特許庁が開催した「産業競争力とデザインを考える研究会」において取りまとめた「『デザイン経営』宣言」において、行政においても「デザイン経営1」を実践していくことの必要性が提言された。
これを受け、特許庁では、行政サービスの品質の向上を図るため、2018 年8 月に「デザイン統括責任者(CDO)」を設置し、その下に「デザイン経営プロジェクトチーム」を立ち上げ、デザイン経営の実践を開始した。
▼特許庁 ビジョン・ミッション
『デザイン経営』の推進にあたり、特許庁では「特許庁ビジョン」を策定しました。
特許庁ビジョン
ホーム> 特許庁について> 特許庁ビジョン
特許庁ビジョン
~「変化に柔軟に対応し、変わることに躊躇せず、活き活きと仕事をする特許庁をめざします」~
▼Column 17 アップルvs町の発明家 齋藤憲彦氏
特許行政年次報告書2019年版 (Page 236-239)
Column 17
事実は小説より奇なり 巨象アップルをひれ伏せさせた〝町の発明家〟
「Column 17」の記事を含む分割版の [PDF 8page] です。
第10章 新たな産業財産権制度の見直しについて(PDF:3,540KB)
特許の失敗学[6] クレーム(その1) で記載した、逆転人生「最強アップルVS.貧乏発明家」についての特許庁による記事です。NHK番組で特許庁から発明者に電話があった(普通は審査官から電話は来ない)という話は本当のことでした。詳しい経過年表がありまして、NHK番組では不明だった該当する特許番号がわかりました。J-Platpatで審査経過を見ることができます。
齋藤氏の特許第3852854号「接触操作型入力装置およびその電子部品」。
特願2005-133824 特開2005-285140 特許3852854 無効2009-800060 訂正2009-390032
●One more thing
特許庁もSNSや動画公開をしています。ただし、特許庁HPでは目立たない表示です。
動画チャンネル | 経済産業省 特許庁
YouTube(JPO Channel)(外部サイトへリンク)
特許庁YouTubeは、再生回数100回以下の動画がほとんどでした…、が
突如、再生回数166万回の動画が出現しました。その名は『商標拳』
「商標拳~ビジネスを守る奥義~」動画及び特設サイトを公開します
2020年1月21日
(YouTube)商標拳~ビジネスを守る奥義~
●Afterword
『お上の事には間違いはございますまいから』
森鴎外 最後の一句 (出典:青空文庫)
ふと、学校の教材として読んだ小説を思い出しました。
「特許庁 システム開発 失敗」で検索すると…
Google検索と、特許庁HPの検索と、では得られる情報がかなり違います。
失敗学の趣旨によれば、特許庁ビジョンにて「説明責任と透明性、改革と改善」を宣言するからには、「特許庁は過去の失敗について分かりやすい報告書を開示してほしい」と思うのであります。
ビジョンとは、見えないものを見る術である。| 出典:きょうのひとこと
ビジョンとは、見えないものを見る術である。Vision is the art of seeing things invisible. (ジョナサン・スイフト)
スイフトといえばご存知『ガリバー旅行記』を著した英国の風刺作家です。ビジョン、それは想像力であると。
ぼくはそれを「あるべき姿」「目指す目的地」とし、道しるべのように捉えています。
このビジョンとセットになるのがミッション。
これは「自分が存在する理由」ですね。
または「自分の果たす価値」と言い換えてもいい。