「妄想」という言葉を初めて知ったのは星新一の作品でした。先日、村田製作所の新社長のインタビューにて「妄想」という言葉を聞き、「妄想特許」という言葉を想いついた次第です。
(出典)NHKおはよう日本 村田製作所 社長 インタビュー
妄想→仮説→検証
2020年8月18日(火) “若手の声に耳を傾ける”
|おはBiz NHKニュース おはよう日本
https://www.nhk.or.jp/ohayou/biz/20200818/index.html
京都の電子部品メーカー、村田製作所のトップに今年就任した中島規巨(なかじま・のりお)さん。エンジニアとして世界を相手に仕事をしてきた中島さんの信条の一つが、「若手の声に耳を傾ける」です。
「技術者に必要なのか、あるいは経営者に必要なのか、“妄想”って大事なんですよね。それを仮説にして証明していく、そういった技術者の好奇心はすごく大切にしたい」
◆ 「妄想」の定義
「妄想」の定義って何?
一般的には「妄想」は病的な思想を意味します。電子辞書の広辞苑およびWikipediaで「妄想」を調べても、病的な定義のみです。
(出典)これでスッキリ!「想像」「空想」「妄想」の違い ? スッキリ
https://gimon-sukkiri.jp/think/
結論:考えることの現実味によって変わる
「想像」は頭の中だけで考えること。
「空想」は現実にはあり得ないことや、現実と関係ないことを思うこと。
「妄想」は病的に抱く誤った判断や確信のこと。
しかし、星新一や、中島社長の言うところの「妄想」の定義は、「イノベーションをもたらすような、従来の常識を打ち破る思想(アイデア)」であると考えます。そのような思想を、数十年前の日本のSF作家達は「空想」ではなく「妄想」と称していました。それらのSF作家の作品を読んで影響を受けた者たちは、辞書の定義に無い「妄想」という言葉を違和感なく使います。例えば、成毛眞氏の記事です。
(出典)起業家はSFで「妄想力」を鍛えている! 成毛眞が語る必読の10冊
https://theacademia.com/articles/naruke-books
◆ 「妄想」の定義を探しながら
「妄想」の定義を検索しても「SF的な妄想」の定義は見つかりません。
そこで、こんなキーワードで検索してみました。
”妄想の定義” “SF” – Google 検索
そして、検索ヒットしたのがこんな論文です。
(出典) どんな論文がどのように不採択となるのか – J-Stage
[PDF] https://www.jstage.jst.go.jp/article/kokoro/4/1/4_1_27/_pdf
論文の「妄想」の記載部分を拾い読みしましたが、スッキリするような定義はありませんでした。「妄想」という言葉のSF的な用例が数十年前からあるのに、広辞苑の追記はありません。
「SF的な妄想」が一般的でないのかというと、村田製作所社長の中島規巨氏が「妄想」と話しても、「それはどういう意味ですか」という質問はインタビューにありません。そのインタビューのWEB記事にも「妄想」について広辞苑に記載の無い意味の解説はありません。
NHKのインタビューは、こんな感想でクローズしてます。
『私は、中島さんが最後に言っていた「妄想が大事」という言葉に、一瞬「えっ?」と思ったのですが、中島さんの考えでは、想像を膨らませることから新しい可能性、方向が見えてくるということなのかなと思いました。』
「妄想」という言葉をあえて定義(解説)しなくても、視聴者に理解されると考えている節があります。でもね、その「妄想」の定義を問われたら、答えに困るのではと思うのであります。
◆ 「妄想特許」のススメ
というわけで、「妄想特許」であります。
「妄想特許」とは、「妄想→仮説→アイデア→発明→特許」を短縮した造語です。
ありふれた「発明アイデア」を「特許」として出願する、よりも、「妄想特許」はより優れたイノベーションが実現できる気がします。もちろん、ハズレが大多数でしょうが、ちまちました改良発明よりも大ヒットが期待できそうです。
◆ Afterword
Stay Hungry. Stay Foolish. Steve Jobs
(出典)Steve Jobsのスピーチ、山口訳: H-Yamaguchi.net
http://www.h-yamaguchi.net/2006/07/jobs_2f1c.html
有名なスピーチの対訳記事です。
「Stay Foolish」は、「SF的な『妄想』を行うことも含む」、ではないかと思うのであります。村田製作所社長の中島規巨氏は、Steve Jobs と同じような遠い目標を目指しているのではないでしょうか。