狐の尻尾です。NECはPC98純正機にノーマルモードだけではなくハイレゾモードを新設します。当初はPC98XL(富士通対抗？)にハイレゾを搭載しますが漢字表示が綺麗になる程度で売れませんでした。そこでノーマルモードとハイレゾモードが同時に動くPC9801-RLを発表します。以降、PC9801-RLが標準となります。
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PC98互換機としては、ノーマル、ハイレゾの両モードを持つPC9801-RL互換をサポートしなくてはならなくなりました。これ以降のPC98互換とは、PC9801-RL互換となります。また、昨今の液晶はマルチスキャンですが、当時のCRTは液晶と比べると接続できる本体は限りがあることも示します。
PC98本体のハイレゾの選択はswitch経由で行うことができます。ノーマルモードと比べるとハイレゾで動作するのは漢字、CAD系のソフトウェア、ゲームソフトハイレゾ版や表計算ソフト(Louts1-2-3)などでした。現在の様にWindows全盛ではありませんので、線画中心のソフトウェアが主でした。
また、初期のハイレゾではインターレスであったので、フリッカーの問題も重要です。高リフレッシュレート(ノーインタレスや液晶)では問題とならないのですが(縦線や面表示はインターレスで美しく表示できるのですが)、表示されるのはほとんど線の世界です。漢字の横線、CADの横線や表計算の横線などが表示されると、インターレスだとフリッカー現象が生じます。この現象を回避するには、いわゆる長残光CRTの接続が必須となります。
なお、接続されるCRTですが、今の様になんでも液晶表示が可能な世界ではありませんでした。ご家庭のTVがアナログ放送だった頃、TVはインタレースだったのを覚えている方は少ないかもしれません。このハイレゾ(最終的にはノーインターレスが発表されます)も、私が設計した頃はインターレスのみです。ちなみにインターレスというのは奇数ラインを表示した後、偶数ラインを表示するもので、残像効果で人間の目には奇数画面と偶数画面が一緒に見えるのです。
CRTのタイミングの話です。
CRTにはHD(Horizontal Drive、VD(Vertical Drive)とVIDEOという信号があります(HDとVDが同じ信号線にのるSYNCという概念のものや、VIDEOもそれに乗っかる(アナログ放送時の)ビデオ一体型などもあります)。現在の液晶系表示装置などにある、マルチスキャン(1対n)型ではなく、あるCRTから見ると1対1の固定タイムチャートなのです。(まあ、ノーマルレゾを含めれば1対2程度にはなるのですが)
さて、HDにはビデオ表示部分(Hdp:Hdiply)、ビデオからHD部分までのフロント部分(Hfp:HD front porch)、HD本体(Hs:Hd sync)、HDからビデオ表示部分(Hbp:HD back porch)などがあります。また、VDにもVdp、Vfp、VsとVbpなる部分が存在します。以下のタイムチャートを参照ください。それらの時間は、CRTの中の陰極線を電磁コイルによって戻すのにかかる最低限の時間に相当します。
さて、インターレスには画面の左上の原点から始まる画面と、画面中央上から始まる画面が必要です。この様に表示しないと1回目と2回目の線が重なる画面になるからです。上図で、下のグリーンの前のVbpが22.5H、グリーンの後の部分のVfpが8.5Hになっている事が大事です。下図の通りズレが生じているのがわかります。簡略にした図式ですがHD方向にズレは生じません。
上記のやりとりは、GDCで行ってくれるので、設計者としてはメモリのアクセス速度や周辺のシステムの向上に努めていれば良いのですが、、、。
＜外伝＞
この頃、課長からPC98互換機のDMACなるものを設計しろと言われました。発注先は社内の半導体事業部です。某オフィス(ssビルと言います)は2Fに私どもの機器開発部とソフトウェア部、研究開発本部などがあり、3Fに半導体事業部があったのです。昼夕食は食堂が4Fにありますので、先着は当然3Fですよね。また半導体事業部の富士見工場(海抜約950m)と、私どもの本体事業部は塩尻にあり(海抜約660m)、海抜も売り上げも負けていました。当時は半導体事業部が社内の雄だったのです。(リコー株式会社との社内比較もありましたし、、、。)
私が関わる開発の案件ですから、半導体営業との社内会議を受けることになったのですが、後にセイコーエプソン社長になるK東京本部長から、ありがたいお言葉をいただきました。なんともいやはやの世界です。