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自分で試作してみるのか、部品を買ってくるのか。ソフトも作って、測定もやってみて、というところを一通りやってみれば、そのセンサの特徴、特にトラブルところとか、限界とか身に染みて体感。とりあえず、この後しばらく、ボケが入ってくるまでは忘れますまい。一方、誰かが使っているのを眺めたくらいの体験では、ふん、ふん、と話を聞いていても、何が勘所なのか、直ぐに忘れるどころか、最初から頭に入ってこない今日この頃です。といってお安いセンサであれば自分のおこずかいで実際に購入してみてちょっと遊んでみるくらいはできますが、お高い「計測器」的なものはそうはいきません。そんなお高い装置の中で前から気になっていたもの一つに「赤外線イメージセンサ」があります。最近でこそお手頃なものも出てきているみたいではありますが。
気になった直接の理由の一つとしては、「土木でエレキ」の方で時々赤外線イメージセンサの応用が出てくることでした。インフラの維持管理のためにコンクリート内部ダメージなどを、赤外線イメージセンサで測った温度分布のムラから検出したりするあれです。遠くからお高い赤外線カメラの展示物を見たことはありますが、自分じゃ使ったことありません。「ゲルマニウム・レンズ」高いんですよ、みたいな話を聞いても「何でゲルマニウム?」という感じ。とても良し悪しなど良く分からない。
そう思っていたら、私にとってはとても素晴らしい連載講座が日経BP社の日経エレクトロニクス誌に連載されていました。
2018年9月号から2019年4月号まで全8回
先月号(といっても雑誌の通例として一カ月ほどまでに手元に届いていた号)までで完結。立命館大学理工学部特別任用教授、木股雅章先生の誌上講座です。
赤外線センサーの基礎から応用まで
もともとは「車載ナイトビジョン応用などを念頭においた赤外線イメージセンサ」の有料講演であったものに、内容を加えて連載にしたもののようです。私は日経エレ誌の紙媒体で読ませていただきましたが、日経BP社は有料のウエブサイトでも公開しています。日経BP社のご商売の邪魔にならない程度に勝手な感想を述べさせていただきます。
2018年9、10、11月号、第1回から第3回
最初の3回は、赤外線センサ類の物理、構造、各種特性や方式などを説明していただいているのです。これを読ませていただいて、頭が整理される感じがしました。「赤外線イメージセンサ」だけではなく「サーモパイル」から「PIDセンサ」にいたる赤外線をセンスするセンサ類全般について、共通するところ、違うところ、が分かったからです。「赤外線イメージセンサ」はちょっとお高いし、遊んでみるには技術的な敷居も高いですが、サーモパイルはぐっとお手頃価格だし、PIDセンサ(人感センサ)にいたっては、目の前の箱の中に部品として買ってあります(マイコン開発ボードにセンサの一つとして接続するつもりだった。)また「介護の隙間」の方で、かなり掘ってみた気がしている「徘徊検知装置」ではPIDセンサで「徘徊する人」を検出するというのが定番になっていて、思わぬところでつながりもでき、腑にも落ちた次第。
2018年12月、2019年1月、2月、第4回から第6回
真ん中の3回は、「赤外線イメージセンサ」(液体窒素で冷やして使う量子型ではない常温で使える、産業応用、車載、セキュリティなどに期待されているタイプ)にフォーカスが絞られ、画素ピッチの微細化とその限界、コストを左右するパッケージング技術、それに性能とコストを大きく左右するレンズについて解説していただいています。ここにいたって、ようやく「ゲルマニウム・レンズ」の意味がよ~く分かりましたです。それに材質をシリコンにすれば、レンズもシリコン・ウエファーから作れるのね。そんな技があるとはまったく知りませんでした。
2018年3月、4月、第7回と最終回
最後に市場動向、応用の拡大、市場で活躍するプレイヤーなどが紹介されます。ビジネス的には一番興味を引く部分かもしれませんが、御手許の日経エレ誌を読むなり、日経BP社のウエブページにログインするなりしてくださいませ。(まあ、電子デバイス屋さんであれば日経エレ誌は読んでいる筈。隔週刊が月刊になってしまったときは、日本の電子産業の凋落をまざまざと感じましたですが。)
勝手なことを書きながら思い出しました。1990年代末か、2000年代初め、欧州に出張に行かせていただいた折、ある組織で「赤外線センサー」のウエファーや、といって目の前にウエファーを突き付けられたことがあったのでした。この講座を読んだ今なら分かります。ちょうど赤外線イメージセンサー技術が急速に立ち上がってきたまさにその時代のただなか。当時の私は、
ウエファーなんて、欧州で見ても日本で見ても一緒じゃけんのう
などと(心の中で)ブーたれていました。応用も軍用ヘリでナイトビジョンみたいな話で、日本は武器輸出三原則あるからの~という具合。ああ、今なら質問すべき勘所も分かるし、良し悪しもちょっとは理解できる気もする。後の祭り。