今回は介護というより、生体計測ネタです。最近気になっているデバイスに、カフ(腕などに巻いて、ブーと膨らませるあれ)無しで、血圧が測れると称するスマートウオッチ?があります。勿論、BTでスマホにつながるウオッチではあるのですが、血圧どころか、脈拍、SPO2、当然、歩数に運動量など生体計測テンコ盛な一品。それらがインターネット上のコマースサイトなどで数千円くらい(皆中国製ですが)で売られています。他の項目はともかく、カフ無しで血圧測る?どうやっているのか?ちょっとヒントを調べてみました。
なんで気になったかといえばお友達の一人が宴会で見せびらかしていたから。年寄りが集まると、すぐに「血糖値が」とか「血圧が」とか言い出す「あれ」です。
まず従来型のカフを使ったタイプのものの写真を載せておきます。今でも主流は上腕にカフをはめるタイプですが、これは手首で測れる小型タイプ。
「血圧」というくらいですから、圧力をかけるのであります。ポンプを使ってカフを空気で膨らませて血管を圧迫して測定を行います。カフを使った一般的な血圧計の測定原理については、血圧計のメジャープレーヤー、オムロン社の以下のホームページにとても分かり易い説明があったのでURLを貼り付けておきます。(写真はパナソニックなのに、説明はオムロン。。。)
ところが、気になっている「スマートウオッチ群」(気になったらメジャーな通販サイトで調べてくだされ)には、カフなどついておりませぬ。圧迫とは無縁なところで測定しておるようです。そこで直ぐにピンとくるのが、同様に測れる他の項目です。加速度センサを使う歩数や、活動量に加えて
- 脈拍
- SPO2(血中酸素濃度)
がふくまれとります。これは光電系に違いありますまい。当方も、ちょっとセンサで「遊んで」みて、いくつか投稿させていただいております。
NJL5501Rはちょうどこの用途のためにJRC社がだしている複合デバイスです。(秋月電子で買えます)この手のデバイスがあれば、「外乱のほとんどない環境で」脈拍を測定するのはそれほど難しくはありません。しかし、上の投稿でもちょっと苦しみましたが、いざ実用レベルにしようとしたら大変だと思います。外乱だらけ、信号はノイズに埋もれてしまって安定しておりません。また、アナログ波形のダイナミックレンジも広く、個体差もあり、同じ個人でも状況によりで千差万別。ここを乗り越えるノウハウはちょっとGW期間に工作してみたくらいでは乗り越えられませんな。ましてやSPO2の測定などどうやって計算して良いか。上記のデバイスなどはSPO2も念頭に2波長分の部品を1パッケージに入れた優れものですが、素人にはなかなか手の出る領域ではないですね。
しかし、今回は血圧です。フォトセンサからの波形から直感的に処理できる脈拍や、酸素濃度に応じて波長に対する反応が違うと原理だけは分かっているSPO2に比べると、かなり雲をつかむような感じです。実際に圧力かけられるわけではないので、なにか光電系で測定できる値が、血圧と相関がとれ、それから血圧はこれだ、と推論しているのだ、とは思いますが、どうしているんでしょ。
こまった時の特許検索で、アタリをつけてみることにいたしました。血圧とベタに調べると膨大な数がヒットしてくるので、そこを絞り込むのがミソです。結構ヒットしてくるのですが、最初に見つかった以下の2件を眺めてみました。
- 特開2019-069236 三星電子株式会社 血圧測定装置、腕時計端末、及び血圧測定方法
- 特開2008-302127 株式会社デンソー 国立大学法人 岡山大学 血圧測定装置及びプログラム並びに記録媒体
どちらも脈波の測定から血圧を求めるものです。三星電子の方から引用させていただくと、
脈波の特徴点を抽出し、特徴点に基づいて求められた特徴量を、血圧に換算する、ものである。
わかったような、わからないような。しかし、上記2つの特許から、良いヒントをいただきました。
- SBP2
- AI
AIといって人工知能ではありませんよ。AI = Augmentation Index です。そして、SBP2 = second systolic blood pressure のようです。日本語で書くと
橈骨動脈第2収縮期血圧
橈骨動脈ってなんじゃらほいと見てみれば、なんのことはない、冒頭の血圧計を巻いているあたりを通過している筈の動脈。そして腕時計をはめるのならばそこでしょう。これらのお言葉が見つかると、よい文献が次々と見つかります。
個人的に(よく読めば)分かりそうな気がしたのは以下の2つであります。
【ダイジェスト版】血管機能の非侵襲的評価法に関するガイドライン
「AI、中心血圧」というタイトルで1節もうけられとります。
動脈圧脈波の波形指標 AugmentationIndex(AIx)とは
こちらは「またもや」オムロン殿の文献。
ちゃんと読んで実験したら、NJL5501Rで測定できますかね。でも中国製、買った方がずっと安いか?クーポンつかったら2000円切る値段になってたし。。。