レガシー8051を追いかけていると、否が応でも中国(人民共和国)のMCUベンダ各社を調べてみないとイケなくなります。欧米日本などが、合併、買収等によってMCUベンダの数がどんどん少なくなり、その結果、製品ラインも絞り込まれる傾向がある中、中国のMCUベンダ、いったい何社あるの?数え切れない、という感じです。まさにここは勃興期で、昔、狭い日本にMCUベンダが溢れていたごとく、雨後の筍か百花繚乱か、といった塩梅。勿論、レガシー8051も、Armも登場します。今回は第一回ということで、調べられた限りのMCUベンダを列挙したいと思います。
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英文サイトがあるMCUベンダはそれを手掛かりに調べましたが、中国語のサイトしかないMCUベンダも多数あり、なんとかArmや8051などのコアが判別できるものの、やたら多い「自力更生」的コアがどのくらい存在するのかはまだよくわかっていないです。
ベンダ名(英語表記) | 8bit(16bit) | 32bit |
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Actions | Arm Cortex-A | |
AppoTech (Buildwin) | 独自8bit? | |
C*Core Technology | 32bit RISC (IP) | |
C-SKY | 32bit RISC (IP) | |
CACHIP | 独自8bit? | |
China-CPU | Arm | |
China Micro simicon | 8051(1T) | Arm Cortex-M0 |
CHIPSEA | 独自8bit? | |
CR MICRO | 独自8/16bit? | |
HUADA SEMICONDUCTOR | 8051/80251 | Arm Cortex-M0+/M4 |
H-sun | 独自8bit? | |
Ingenic | MIPS32 | |
GigaDevice | Arm Cortex-M3/M4 | |
mindMotion | Arm Cortex-M0/M3 | |
myorbita(欧比特) | SPARC v8 | |
Shanghai Belling | 8051 | |
Shanghai Eastsoft Mocroelectronics | 独自8bit? | 独自32bit? |
Shanghai Fudan Mocroelectronics | 80251 | Arm Cortex-M0 |
SiGma Micro | 独自8bit? 8051 | |
Silan | 8051 | |
SINOMCU | 独自8bit? | |
SINO WEALTH | 独自8bit? 8051 | |
Yspring | 独自8bit? |
まず表から分かるのは、8ビット機と32ビット機がほとんどで、4ビットは無く、16ビットもごく限られるということです。メインランドの半導体産業の勃興期には既に32ビットの時代に入っていたので、古い4ビットや、上下を抑えられて活路のすくない16ビットなどには目もくれず、小さい方は8ビット、大きい方は32ビットと割り切っているのが見て取れます。
そこで印象的なのは、「独自CPU」の多さです。日本も昔は各社各様、独自CPUだらけだったですが、このごろはかなり淘汰されてしまいました(Armのせい、いや、お陰と言っておきましょう)。この独自CPUの多さを見ているとやってやるぞ、と力こぶが入っている設計者が多数いることが想像できます。ただ残念なのが、中国語の資料しかないものもあり、どういう仕様なんだか分からないものが多いことです。CPUのIPを売っていると思われるベンダも2社ほど見つけたので、実は、ソースは限られる、ということも考えられるのですが、いまのところ詳細は不明です。
やはり、8ビットでは8051、32ビットではArmの存在感があります。32ビットではArm以外にMIPSやSPARCなども見つかるのですが、8ビットでは独自コアか8051系かという2択状態に見えます。レガシー8051系が中華圏でかなり強みを発揮しているように思われます。なお、欧米の8051系MCUでは8051か8052かという選択であったのに、ここでは80251という8051の子孫がみられます。これは8086の後80186、80286といった86系のチップが続いたような子孫です。80251は、8051のアドレス空間を拡張し、16ビット演算など強化したチップですが、依然8ビット8051のコードと互換性も保っているもの。欧米系8051MCUでは忘れられてしまった感じですが、中国本土で生き延びていたようです。
「Armのお供にレガシー8051説」が成り立っているベンダ一部ありますが、そうでないベンダもあります。今のところ8ビット機主体のMCUベンダが中心なので、そのうち遅かれ早かれ32ビットMCUを皆さんやるようになり、そのときはArmということになり、将来的には説が成り立つベンダが増える気もします。
今回はリストのみ作ってみましたが、とても1回で調べられるような層の厚さでもないので、機会をみてまた、調べていきたいと思います。