鳥なき里のマイコン屋(18) 絶滅危惧種4ビット、欧州の牙城EM

今日はある種の新年会とて気持ちよく一杯飲んでいたので「筆」も軽く、団員も数名増えそうとてめでたい限り。

さて、古くは「電卓」のために生まれた4ビットCPUですが、その後、家電製品などで一気に拡大放散、生態系のあらゆるところに蔓延った時代がありました。しかし、それも今は昔、電卓用、家電用などはすでに絶滅してしまっていると言ってよいでしょう。そんな絶滅危惧種の4ビットマイコンですが、今生き延びているそれは深く時計関連業界と結びついている、と言っても過言ではありません。

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昨日取り上げさせていただいたエプソンは、日本を代表する時計メーカであるセイコーの製造の一翼をになってきているわけです。「これをもってこれを見れば」、「時計といえばスイス」(アップルのせいで、スイスの牙城も揺らいでいる気もしないでもないですが。。。)です。スイスにも必ず4ビットマイコンを作っている会社がある筈。前振り長かったですが、実際その会社はあります。

EM Microelectronic-Marin

スイスの会社です。そしてスイスを代表する時計メーカであるSwatchグループの子会社です。Swatchはいわゆる「スオッチ」だけではなく、傘下に高級有名ブランドもかかえるスイスいや時計業界における1大グループです。

そこのホームページに行ってみると「かっこいい」というかスタイリッシュで4ビットマイコンをうかがわせるものはトップページの方にはありません。やはり欧州。センシングとかRFとか、ソリューション、アプリケーションを全面に打ち出す構成です。(実はデバイスビジネス開拓団的にも「そうしたい」という気持ちだけはあるのですが、そうなっていません。)マイコン作っている半導体会社でありがちなシリーズの「ロードマップ」もマイコンのスペック一覧比較表のようなページも影も形もありません。

しかし、丹念に読み進んでいくとちゃんと4ビットマイコンが登場するのです。

EM66xx シリーズ

いくつか変種(EM65xxなど)もあるのですが、66という型番をいただくシリーズが主力、とみました。なぜといって古風にもこのシリーズ

マスクROM品のみ

です。最近の若い人はマスクROMなど見たことがないでしょう。FLASH全盛の世の中なので、マイコンをプログラムするのはFLASHに書き込むことと「見つけている」に違いありません。でも時計を頭にいただく4ビットマイコン業界(とても狭いですが)ではそうは言っておれません。いまだに工場で半導体を製造するときに使うマスクでプログラムを設定するマスクROM品が量産機種(数がでる。半導体は数でてナンボ)であるのです。なぜかと言えば、マスクROMの方が、ともかく小さく、電気を食わないからです。時計関連技術ではぎりぎりまで大きさと消費電力を削るためだ、といっておきましょう。(今さら、そんな小さくで儲からないところにFLASHなどもったいない、という意見はこらえて飲み込みましょう)。

しかしね、この主力66シリーズ、ウェブを見る限りは高々3機種。エプソンの「充実した」保守品種ライン以下の寂しさです。その上、

LCDドライバのおまけに4ビットマイコン

というこちらが勝手に立てた「説」にも関わらず、3機種のうちLCDドライバ搭載機種は1機種のみ。残りの2機種はLCDドライバ、ありませぬ。どちからと言えば、センシングとか通信制御向けか。でも単体のLCDドライバとかとの接続方法なども解いているのはよく分かってチップを分割しているようにも見えます。実際、よくよくこの会社のホームページを読み解いてくと、そんな4ビットマイコンに深い愛情を感じてしまうのです。

  • 8ビットと4ビットのマイコンがあるのに開発ツールの紹介は4ビット
  • やたら4ビットマイコンの「細かいテク」のアプリケーションノートがある

実際、非力な命令セットしかない4ビットのマイコンで、キャリー入りのローテートするのは知らない人には厄介なことかもしれません。こういうのはEMだけでなく、4ビット業界全体の問題かもしれません。しかし、「保守品種」といっって逃げていたのでは4ビットのプログラムを始めて書く人(そんな人がいるのでしょうか。。。)には何の解決にもなりません。そこにEMはちゃんと、コードを示しているのです。真に「ソリューション」と申せましょう。品種は絞れるだけ絞ってしまったと言え、「やる気」を見せているEMに脱帽です。

欧州の4ビットはEMがしょって立つ、そんな感じがします。でもね、止めないで続けてね。

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