マイコン(マイクロコントローラ)をメインに推している半導体ベンダもあれば、他の主力商品の影でひっそりとマイコン売っているベンダもあります。このシリーズでは「丹念」にそういう「ひっそり系」?ベンダもカバーしていきたいと考えております。今日はそのような中の1社。Integrated Silicon Solution Inc.(略称: ISSI)のマイコンを調べさせていただこうと思います。
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多分、業界の中ではISSIというと、本社米国だけれど限りなくチャイニーズなメモリの会社、という認識なんじゃないかと思います。実際、主力商品は、DRAM、SRAM、FLASH(NOR型)といった感じ。しかし、これらメモリ部門とは別に、
ANALOG & MIXED SIGNAL PRODUCTS
という部門があるのです。歴史的な経緯は存知上げないのですが、略称AMS。単純に頭文字とっただけだと思います。ついつい、AMSというと欧州半導体の名門(旧名称:Austria MicroSystems)が連想されるのですが、これは単なる綴り字が被っているだけ、と思われます。(違っていたらご指摘ください。)
この、名前からするとマイコンとは縁遠い感じの部門は、オーディオ系のアンプとか、LEDのドライバ、タッチセンサなどを扱っているのですが、その中にMCUが隠れています。例によってどんなコアを使っているのか見てみましょう。
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- 8ビット 8051
- 32ビット MIPS-X
コアの構成としては、8ビット機と32ビット機という最近のマイコン屋さんに「ありがち」なプロダクトラインの編成パターンです。そして8ビット機はレガシー8051です。これはオリジナルより性能の高い “1T”系のコアです。米国の会社は8051コアを使っていてもあまり 1T とか 6T/12Tとかいう表現をしないので、この表現を見ただけで台湾風味を感じます。8ビットの方は鉄板のレガシーですが、ここの32ビットは相当珍しいです。
MIPS-XはMIPS系の流れはくむけれど、いわゆるMIPS Rxxxx系とは違う
90年代中盤くらいまで、「RISCがx86を打倒する」ということになっていました(この頃はArmがに変えればそんな気になります)。そのころのRISC業界といえば、代表はSPARCかMIPSでした。当時もARMは存在しましたが、何か細かい携帯装置に入れるための「地味」で「小さな」なイギリス風味のRISCという扱いで、まさかARMが他のRISCから抜け出し、x86の座を脅かすことになるとは誰も予想していなかったと思います。MIPS自体は、オリジンは大学ですが、商業化して名前そのままの会社を作り、R2000, R3000, … という感じに着々とシリーズを拡充していきました。しかしそれも今は昔、このごろはArmに市場を取られ、MIPSコアの製品はかなりディープなところに細々と生き残っている感じじゃないかと思います。しかし、このMIPS-Xは、MIPS社のMIPSの系統とは異なるMIPSです。大学に残っていた根っ子から、再び芽を出した「同根」だけれど別系統なものだと理解しています。ただ、MIPS-X自体の商用利用は、Rxxxxシリーズと比べると、もともとかなりレアです。研究開発ルーツで開発され、登場してきたころには商業市場で蔓延るための「生態系上のポジジョン」がほとんど見つからなかったのではないかと思うのです。ごくわずかな会社が商業利用に使用していた、という理解です。しかし、ここに1機種MIPS-X搭載MCUが存在(ちゃんと製造ステータスもプロダクションと書いてある)しました。
CS6257
誰がお使いになっているのか知る由もありませんが、かなりなレアものだと認識しています。ついレアなMIPS-Xばかり書いてしまいましたが、ここのMCU製品の主力は、レガシー8051です。売りのポイントを探すと
12ビットの逐次比較型のADコンバータと16ビットのPWMを乗せている
12ビットはまあまあ良い目の部類ですけれど、これだけで勝負掛けられるほどのものでもないと思います。他にないかと見ているとありました。
CANバス搭載、メモリECC
CANは車載などで使用される通信規格です。最近車載Ethernetなどで高速化の機運が著しいですが、現段階では自動車の根幹をささえている通信規格だと思います。また、ECCはエラー訂正です。8ビット8051の大した分量のないROM/RAMですが、誤動作しないようにECCで守るというわけです。この方向性からすると
車載がメインなの?
とも思ったのですが、ラインナップを調べ、勝手な推測をするに
車載の方向で生息域を広げたいのだけれど、まだまだ
という感じじゃないかと思います。多分、ヘッドライトなど用のLEDドライバなどで自動車屋さんへの販売ルートと実績があるのだろうと思います。それで車載向けを拡充したい、それにはやはりMCU無いとという感じじゃないかと想像します。上述のCAN搭載品とはさらに別に「オートモーティブ向けMCU」というカテゴリが別に設けてあるのです。これは車載向けやっているマイコン屋に共通することで、品質規格などが車載向けは一般向け(汎用)と異なるので、一線を設けて区別するからです。このカテゴリ向けのページを見るとオートモーティブ向けの信頼性規格対応がちゃんとうたわれています(ということは前述の汎用品はCAN搭載といっても車載規格品ではないと推測される)。しかし、こちらのステータスは
sample
でした。sample、サンプルは出せる(つまり設計的には完了している)、けれど量産ではない(大量にお客さんに出せる状態にはいたっていない)ときに使う言葉です。やる気はあるんだけれど、まだまだ、なんでしょう。prod にステータス変わっていたら、成功の印です。