土木でエレキ(7) AIの活用を道路の点検技術にみる

JosephHalfmoon

前回、AIとかICTとか使って何をやりたいの?みたいな視点で勝手に調べてみました。今回は、AIといって具体的にどんな算法を使っているのか手がかりないかと調べてみることにいたします。またもや手がかりにしたのは、NETISの維持管理支援サイトです。前回までは主にコンクリートの道路橋中心に調べさせてもらいましたが、今回は道路の舗装が対象です。昨年の年末に『「路面性状を簡易に把握可能な技術」の事後評価結果について』という「お知らせ」が公開されていました。ここに「いくつか手がかり」があったのです。

「事後評価」と書いてある通り、このお知らせは、1年半くらい前に公募された新技術について、応募してきた会社(1社でいくつも申請できないように縛りがかかっている)が、それぞれの技術を引っ提げて(費用は自分持ち)、指定日時に指定箇所(四国のどこかの一般道1km区間)で計測を行った結果を一覧にして公開しているものです。前提条件として

交通規制不要

という条件が課されているので、自動車を走らせながら計測をするしか方法は無さそうで、実際、16社全てが計測用の車両(当然自前)を持ち込んで計測に臨んだようです。3つの計測項目について検出率(実際に分かっている損傷を検出できた割合)と、的中率(その技術で検出した損傷の数のうち「正解」の割合)の両方、そして費用も比べています。ただし、以下に引用させてもらいますが、「チャンピオン」を決めるためのコンぺというわけではないです。

複数の類似技術の性能を同一条件の下で比較し、技術特性を明
確にすることを目的としたものであるため、比較表を路面性状調査業務にどのように活用するかは、各道路管理者の判断と考えています。

全部で16社(申請すれば無条件に計測テストに参加できるという分けでもないようです。計測テストに行きつけなかった会社があるのかどうかは不明です。)が計測に参加し、結果が比べられています。この16社を、素人が勝手に分類させてもらうと以下のような感じ。

  1. 3項目の全て、「ひび割れ率」、「わだち掘れ量」、「IRI」計測可能
  2. 評価対象のうち「ひび割れ率」、「わだち掘れ量」の両方か片方のみ計測可能
  3. 「IRI」のみ計測可能

ここで、この測定項目の背景をちょっと調べてわかったのですが、

「ひび割れ率」と「わだち掘れ量」は昔から日本で使われていた維持管理の指標

これと今回は登場しないもう一つの量を加えた「公式」(計算には最低関数電卓必要)があり、それで維持管理指数というものを計算して、メンテナンス工事をやるかどうかの判断にしていたようです。それに対してIRIというのは、

International Roughness Index 「国際ラフネス指数」

という指数だそうで、これは国際的な指標でした。「乗り心地」から道路を評価するためのもの。日本で本格的に使われるようになったのは21世紀になってからみたいです。字ズラからも分かるように「ひび割れ率」と「わだち掘れ量」は、道路そのものを計測しないと求めにくい量で、「IRI」は道路そのものを見ないでも「乗り心地」を計測(クオーターカーモデルというモデルでシミュレーションして算出する)できれば求まります。このため、計測に必要な道具だてが大分違うようです。

3項目全てを測定できる方法は16社のうち8社。そして、ほぼ共通するのは路面を撮影するためのカメラとレーザーセンサによる3次元計測です。道路の路面そのものを測定しないとならない関係上、このような道具立てになるのだと思います。「簡易に把握」ということから、車の改造などが必要という項目に書き込みがある会社はないのですが、車内からでは路面が見えないと思うので、路面撮影用のカメラとかレーザセンサなどを取り付けるためのマウントのようなものは必要ではないかと想像します。どうも従来技術では、計測用の車両に、測定用の小さな車輪とか、そのカバーとか、何らかの改造が必要だったようなので、そういう車両改造が不要というだけでも十分「簡易」なのかもしれません。なお、位置情報はGPSで行うものもありますが、距離計(車軸にとりつけるタイプもあり)が中心。

これに対して3項目のうちの一部の項目しか計測しない、残りの8社の方が「簡易」度はより高いです。とくに乗り心地のIRI計測オンリの6社のうち3社は、

スマホの加速度計(ジャイロセンサも併用機あり)

で計測です。スマホで済むのですから、極めて軽くて確かに「簡易」です。ただ、アプリ単独で結果が出るわけではなく、クラウドにデータを送って処理してもらうので契約が必要。リカーリング・ビジネスモデルになっています。

「ひび割れ率」が計測できる2社もフル計測の8社とは違いを見せていて

市販のビデオカメラのみ利用

です(東芝の子会社が「SONYのアクションカム推し」だったりします)。レーザ使った3次元計測などはないので確かに「簡易」ではあるようです。

さて最後になってしまいましたが、本題のAI利用の状況です。

  1. ランダムフォレスト
  2. ディープラーニング
  3. CNN
  4. SVM

の4種類の使用が確認できました。蛇足ですが、2は資料には「ディープランニング」と書いてあって何のこっちゃと思いましたが、意図を勝手に汲み取り上記のように書き直しました。でもディープラーニングでもいろいろあるので、CNNとか書いてある会社と記述レベルあわせてちょ、とも思います。1と4は機械学習範疇としては今や古典的ですかね。2と、多分3がニューラルネット系。意外と少なかったです。

この4種類とも目的は、カメラ画像から「ひび割れ率」を算出するのに用いているようです。前の2つが、3種計測の「フルセット」タイプ、後の2つが1種また2種の限定計測タイプで使われていました。IRIのみを計測するタイプではAI利用機はありませんでした。IRIの算出自体は、加速度データと走行位置のデータがあれば、クオーターカーモデル(普通の4車輪の車の4分の1の車輪1個しかない車の力学モデル)で算出できると思われるのでAIなど不要、ということでしょう。カメラ画像から「ひび割れ率」が診断区分I, II, IIIのどれに該当するかを識別するのに上記のようなAIが使われているということです。診断区分Iはヘルシー、IIは劣化中程度、IIIは修繕段階です。なお、結果を見る限り

AI使っている方法が特に結果が優れているようには見えない

です。ふーん。ただ、わざわざ

AIの活用

という項目が立てられていること自体、「AI使えよ」的な方向性を感じるのですが、どうなのでしょう。

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