鳥なき里のマイコン屋(33) Dragonchip、リモコンに生きる?

JosephHalfmoon

スマホやスマートHOME系のデバイスが広がってくるとそのうち無くなってしまうのではないか、と想像されるデバイスの一つに「赤外線リモコン」があります。ボタンを押したらテレビがつく、あれです。といっても現段階ではまだまだ絶滅の恐れはないでしょう。「平均的なご家庭に」はテレビ用やエアコン用など複数台のリモコンがあると推測されます。全世界の総数を想像するとトンデモない数です。しかしついていて当然、無いと不便ですが、あったからといって他と差別化できる部分も少ない「デバイス」です。正直、家電屋さんにしたら無くせるものなら無くしてコスト削減したい「デバイス」ではないかと思います。

しかし、リモコンの登場は、かなり衝撃的なデビューだったようです。今を去ること60年以上前、場所は米国、シカゴが本拠のZenithという会社の製品でです。米Zenith社は、今では韓国ディスプレイ大手、LGの子会社になっています。法人としては残っているようですが、ホームページを見る限り昔の大メーカの面影はまったくありません。元々は100年前くらい前からラジオを作っていた老舗のメーカです。当然のごとくラジオからテレビへと製品を広げ、第二次大戦後の米国の繁栄の時代、全米のご家庭にはZenithのテレビが多く鎮座することになったと聞いています。そこでソファーに座ったままチャンネルを変えられるリモコン “Zenith Space command” というものを世に出したわけです。私は見たわけではありませんが(生まれていない)、この「衝撃」をもっていまだにZenith社は歴史に名を残しています、とくに電子デバイス業界には。

古くから家電用の赤外線リモコンはマイコン応用の一大分野でした。携帯電話登場以前の世界では、家電製品というのが電子デバイスの主要な行先の一つで、そこの多くの主力製品の製造台数と同じだけ、需要があったのですから。ただし、先ほども書いたように、「できれば掛けたくないコスト」でしかないリモコンにはお高いマイコンは不要。それで「安い4ビットマイコン」の出番となることが多かったのです。一方、そんなリモコンがどこで作られていたかというと、当時はまだ日本の家電産業が強かったころです。しかし、コスト削減で海外への製造移転は進んでいました。リモコンのようなローエンド技術で「付加価値」を生まない部分は、真っ先に海外に出された口じゃないでしょうか。その行先の一つが、香港、深圳地区です。最初期こそ、日本製のマイコンを輸出して使うことが多かったでしょうが、そのうち台湾製などに置き換わっていったのだと思われます。また、やがて絶滅危惧種化した4ビットから、8ビット化も進んだのでしょう。

ようやく本題にたどり着きました。そんな流れの中で登場してきたのが香港Dragonchip社のMCUです。創業はかなり遅く2001年。既に日本半導体の敗色濃厚、家電にも暗雲が垂れ込めています。日本の電子デバイス屋は皆必死に携帯電話に注力するのですが、そのうちスマホの登場とともに携帯の主要プレイヤーが総入れ替えになるなどとは予想もしていない時代です。そういえば、この会社が取引先として挙げている会社、やたら日系の家電系の会社が目立ちます。そこから想像するに、リモコンの製造から日本半導体が去っていた「隙間」を埋めたのではないかと思われます。

コアは8051のみ

あれこれ色気を持たずにこの会社、コアは8051だけです。「8051業界用語」で言うと オリジナルより速い “1T” のコアです。主力と思われる機種にはリモコン用の赤外線のキャリアを生成するための回路がもれなく入っています。大雑把にわけると

  1. LCDに接続できるリモコン用マイコン
  2. ディスプレイ無リモコン用マイコン

リモコンでLCDが必要なのは、エアコンなど向けが中心でしょう。ディスプレイ無はテレビが中心でしょうが、他にもいろいろあるのでは。

割り切っているといえば、割り切った製品ラインナップなのですが、「リモコン」だけの1本足打法では危ない、と思うのは当然でしょう。ホームページをみるかぎりもう2本の柱があり、3本柱を考えているようです。

  • ポータブル&ホームエレクトロニクス(リモコン)
  • 無線
  • イメージディスプレイ

ただ、IR系のマイコン以外の製品では1機種 A/Dコンバータを搭載したマイコン(これも8051コア)があるだけで、無線と、イメージディスプレイに該当する汎用製品はホームページにまったく見当たりませんでした。ホームページ上にはSoCなど、とも書かれているので、もしかするとカスタム品などで公開できないのかもしれません。イメージディスプレイのページから引用させてもらうと

At Dragonchip, we don’t make the digital image display products that people use everyday but we make them run better through the design and development of smarter, faster and cheaper embedded systems-on-chip solutions.

なにかはやっているのでしょう。でも汎用マイコン(マイクロコントローラ)ではなく。

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