IoT何をいまさら(30) トホホな失敗の詳細

前回のサーミスタの電源ON/OFF制御の失敗の件、「速報」を投稿させてもらったのですが、時間がなかったので詳細については書いてませんでした。その後、追加で測定をして、

現象についての理解

は出来たので今回それを書かせていただきます。どうもその上でPSoC 5LP Prototyping Kit, CY8CKIT-059と搭載のPSoC 5LPをもっと調べないとならない雲行きではあるのですが。

※「IoT何をいまさら」投稿順Indexはこちら

まず、失敗をおさらいしておきます。

サーミスタ測定時のみサーミスタに電流が流れ、その他の時間は電流が流れないようにするために、サーミスタに電圧をかける端子にON/OFF制御を追加した。「余裕をもって」サーミスタ測定の1ms前に電圧をかけるように制御した。ところが、サーミスタと参照抵抗の間の端子の電圧が1msたっても過渡状態であったため測定に失敗した。

こんなところでしょうか。実際に測定した波形を以下に示します。C1の黄色の信号はサーミスタに約1Vの電圧をかけている端子の波形。25℃で10kΩのサーミスタと10kΩの参照抵抗がGNDへとシリアルにつながっています。C2の青色の信号は、サーミスタと参照抵抗の間の端子の波形。1Vを10:10で分圧する形になっているので、定常状態では、25℃付近の温度なら500mVほどの電圧が観測される筈です。

 

しかし、青色のC2の波形を見ていると500mV付近に電圧が達するのに遅延がついています。図を見れば、500mVの約63%, 315.5mV付近まで達するのに4.8966ms(C1が500mVに達した点を0msとして)もかかっていることが見てとれます。時定数の計算ぐらい、自分でやれよ、と言われそうですが、「愛用」のAndroidアプリケーション

ElectroDroid

にこの条件のキャパシタンスを計算させると以下のようです。

 

 

デカイです。

490nF

0.47μFのコンデンサとほぼ同じ容量がついているような波形であります。

想定外に大きい。回路図に「相当容量」を書き込むとこんな感じ。温度が下がるとサーミスタの10KΩがさらに大きくなる(ただし、使用サーミスタ的には25℃~50℃でB定数をスペックしているから低い温度は適正な仕様の外)ので、時定数はもっと大きくなってしまう。現在、測定の40ms前に電源ONにしていますが、0℃まで測定するのであれば、それではマズイ気がしてきました。

なんででしょう。最初は、外付け部品、サーミスタ、参照抵抗、サーミスタを銜えるためのスクリュー式の端子台、ブレッドボードなどを疑ってみました。

しかし、外付け部品は白

でした。大きな0.49μFなどという容量が隠れている気配もありませぬ。

最後に、PSoCの端子につながっている配線を外してみました(当然測定できなくなりますが)。その時の波形は以下のような感じ。時間の単位がまったく違うことにご注意ください。上のグラフは10ms目盛り、下は10μs目盛りと1000倍違います。C1の直後にC2も「立ち上がって」いるではありませんか。もともと「余裕をもって1ms」も待てば定常状態だろう、と考えたときに期待した波形です。

これだけであると、PSoC 5LP Prototyping Kit, CY8CKIT-059のボードなのか、搭載されているPSoC 5LPのチップ(CY8C5888LTI-LP097 QFN88)なのか断定はできませんが、限りなくチップ側が臭い。

チップ端子のデータシートで端子の入力容量を見てみました。以下Cypressのデータシートの引用。7pF。そんなものでしょう。これではない。

とはいえ、内部のデルタシグマADCは、チャネルを切り替えた後に問題なく測定できているのでこれは疑い難い。ということで、「アナログマルチプレクサ」部分、多分、実体は「入力端子からADCに至る配線とスイッチ」に目が向いてしまうのであります。そこで、アナログマルチプレクサのデータシートのDC、ACスペックを眺めてみます。以下Cypressのデータシートの引用。

これだけです。OKな電源だったらちゃんと動くよ、ですか。あまり見ないDC, ACスペックの書き方です。

    1. 入力端子とアナログマルチプレクサの間にボルテージフォロワ入れてみる
    2. 入力端子を別な端子に変更してみる
    3. アナログマルチプレクサを省略してみる

といった追及方法を思いつきましたが、眠くなりました。本日はここまで。

IoT何をいまさら(29) トホホな訂正 へ戻る

IoT何をいまさら(31) Raspberry Pi Zero W がやってきた へ進む