特許の失敗学[4] 「2対6対2の法則」

特許の失敗学
「2対6対2の法則」
今回は特許には直接関係しない「失敗学」の番外編です。
「特許の失敗学[3] 特許副業のススメ」の投稿後に、[作家・江上剛氏の記事] を読んで、かねてから疑問に思っていたことが、なんとなく理解できた気がしました。
「2対6対2の法則」とは、会社をはじめとする組織において、勤勉な人が2割、普通の人が6割、怠け者が2割という比率に分けられるというものです。働きアリの社会で観察された事象が、人間社会の組織にも当てはまるという驚きの法則です。

Araha が働いていたH社とR社での経験です。

◆優秀な社員(勤勉な社員)
H社では長年勤続した社員に長期休暇を与える制度がありました。長年の勤務に対する報奨制度ですが、その社員が不在でも組織が問題なく運営されることを確認する目的もあると聞きました。確かに長期休暇で問題が起きないように業務の引継ぎやマニュアル化を促す効果があります。そして優秀な社員に対して「あなた無しでも組織は問題ないですよ」というメッセージを伝えます。その反面、長期休暇後に優秀な社員が会社を辞めてしまうこともありました。
R社では優秀な社員が社外の活躍の場を求めて自主的に退社する例がよくありました。設計部門でもありましたし、知財部門では、Araha の在籍期間だけでも、社内弁理士の3人の社員がR社を去りました。

◆成果が少ない社員(怠け者)
H社では定期的な業績考査で最低ランクが2回連続すると降給となり、それが続くと社員ランクが降格となりました。会社員にスポーツ選手のような年俸制度があることに驚きました。R社でもH社と同様の業績考課に制度改革していきましたが、Araha が在籍中には業績考課で降格となる事例はなかったように思います。R社ではその代わりというか、社内リストラで職場を異動となることはよくありました。H社とR社のどちらも、業績考課の結果によって解雇されることはありませんでした。

◆「2対6対2の法則」の考察
働きアリの観察では、怠け者のアリを取り除くと普通のアリの中から怠け者のアリが出現するそうです。とすると、人間社会でも怠け者の社員を解雇することは意味がないことになります。優秀な社員が会社を去ると会社組織が弱体化するのではと勝手に心配していましたが、実際はH社とR社ではそのような心配は杞憂でした。その人がいないと組織が成り立たないような天才的人材は稀であり、逆に天才的人材なしでは成り立たないのは弱い組織ということでしょう。
小規模な組織では、少数精鋭で全員活躍しないと成り立ちませんが、大規模な組織では「2対6対2の法則」から逃れられないのかもしれません。また、組織の危機に際しては怠け者の社員が頑張ることで対処できることもあるそうです。怠け者が不在で、優秀な社員だけでぎりぎり回っている組織は危機に対応する余力が無いのでしょう。今思うに、Araha は怠け者社員として組織に貢献していたのでした。

最後に冒頭の記事にあったエピソードを引用します。日本の経営者がリストラを実行する際に考えてもらいたいものです。

さて最後に電力王、福沢桃介のエピソードを紹介する。
桃介は松永安左衛門(彼も電力王だ)からリストラの相談をされた。
桃介は「リストラするなら優秀な社員から辞めさせなさい、駄目社員は大事にしなさい。その意図は、優秀な社員はすぐに転職先が見つかるし、泥舟の会社からはすぐに逃げ出す。しかし、駄目社員はどこにも転職できないから、温情をかけてくれた君のために家族総出で必死に働くだろう。それで会社はうまくいく」とアドバイスした。
松永は、桃介のアドバイスに従わず、結局、会社をつぶしてしまったという。

出典

「70歳まで雇用」を奨励する政府と「40~50代リストラ」を加速させる企業【怒れるガバナンス】◆作家・江上剛
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020020500763

2対6対2の法則!組織を作るなら理解しておきたい集団心理
http://zero-biz.com/2-6-2housoku

「2対6対2の法則」と「ビル・ゲイツの法則」
https://nextvision.exblog.jp/26730207/