特許の失敗学[15] 特許庁の広報(5) 特許庁の特許 (その2)

特許庁の特許 (その2) 

特許の失敗学[12]  にて紹介した「特許庁の特許出願」について、特許庁広報室あてにウェブフォームで質問送付しました。そして回答を受け取りました。特許庁から「特許の失敗学」の記事で開示する了承を得ましたので公開いたします。


◆ 特許庁の回答

経緯:
 2020/04/28 特許第6691280号 発行日
 2020/05/03 Araha J-PlatPat検索で特許庁の特許を発見
 2020/05/05 Araha 特許庁広報室へ質問送付
 2020/05/11 特許庁ニュースリリース
 2020/05/11 IP Force 知財ポータルサイト 知財ニュース  15:15
 2020/05/11 Araha 特許庁からの回答受領 19:42

>>> 特許庁の回答 ここから

(1) 出願人は「特許庁」ではなく「特許庁長官」何故か?

以前に出願しました、地域団体商標マークにつきましても出願人は特許庁長官としておりまして、今回の特許出願もこれに揃えております。
補足させていただきますと、規定上、財産の処分権限が特許庁長官にあることからも特許庁長官を出願人としています。

(2) 出願と同日に早期審査を請求して権利化を急ぐ理由は?

本件特許出願は、早期審査出願の要件を満たしており、また、今後、権利化したい技術範囲を変更する必要性もないと考えられましたため、早期審査制度を活用しました。早期審査制度に関しまして、下記のページもご参照いただけますと幸いでございます。
https://www.jpo.go.jp/system/patent/shinsa/soki/v3souki.html

(3)「早期審査に関する事情説明書」の開示をしない理由は?

未公開情報を含んでいる場合は、一般的に開示されておりません。これはどの出願でも同様でございます。

(4) 特許庁が出願を行うのは、世界の歴史として初めてか?

複数の検索データベースで検索しました範囲では、これまでに他国も含めて特許庁が出願したという前例は把握しておりません。

(5) 特許庁がこの出願をした目的は何でしょう?

本件特許出願の目的は、①自ら開発した特許文献検索システムを安定的に自己実施できるようにすることと、②国内ユーザーや諸外国の特許庁等に広く安心してこの特許技術を活用頂くことでございます。

本件特許に関しましては、本日、プレスリリースを掲載いたしましたので、あわせてご参照いただけますと幸いでございます。
https://www.meti.go.jp/press/2020/05/20200511001/20200511001.html

>>> 特許庁の回答 ここまで

◆ 知財ニュース記事

 特許庁のニュースリリースを受けて、知財ポータルサイトに2020年5月11日から「特許庁が特許取得」のニュース記事が出始めました。

 IP Force 知財ポータルサイト 知財ニュース・知財求人など
 https://ipforce.jp/

5月11日(月)知的財産権ニュース
 特許庁が特許文献検索システムに関する特許権を取得しました 経済産業省 15時15分
 https://www.meti.go.jp/press/2020/05/20200511001/20200511001.html

5月12日(火)知的財産権ニュース
 特許庁が特許取得。特許文献検索システムで  PC Watch 10時39分
 https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/yajiuma/1251780.html

 特許庁、初めて特許を取得「公正に審査しました」…プログラムできる審査官が発明(弁護士ドットコム)  Yahoo!ニュース 17時49分
 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200512-00011198-bengocom-soci

 特許庁、初めて特許を取得「公正に審査しました」…プログラムできる審査官が発明 – 弁護士ドットコム 2020年05月12日 17時49分
 https://www.bengo4.com/c_23/n_11198/


◆ 謎は残る

 弁護士ドットコムの記事は、発明者にインタビューした詳細な内容です。経済産業省のニュースリリース(知財ポータル  5月11日15時15分)から、発明者のインタビューを実施して、ニュース配信(弁護士ドットコム  5月12日 17時49分)まで約26時間です。特許庁の発表前に特許公開の情報を得ていないとすれば、マスコミ並みのスピードでしょうか。その記事をYahoo!ニュースは同時刻に配信とはどういう仕組みなんでしょう。

 特許庁の最初の特許出願が 特許の失敗学[13] にて調べた商標「アドバス」と関連しているとは思いませんでした。それにしても、「早期審査に関する事情説明書」の開示をしない理由という『未公開情報』とは何なんでしょう。

 特許庁が開発した「アドバス」により、今後の特許審査において世界中の先行技術を調査するとのこと。かつて、Arahaの発明の特許出願をArahaが知財部員として担当した際に、審査官は拒絶理由においてドイツ語の文献を先行技術として提示しました。当時は「アドバス」のようなシステムは無いので、審査官をそこまで駆り立てた発明であったと自負しております。ほんとか?


◆ Afterword

 『ニューヨーク・タイムズだってしょせん地方紙ですよ。』
  出典:とんかつカラオケ クライマーズ・ハイ ~史上最悪の航空機事故を追った新聞記者たちの激動の7日間を描いた社会派ドラマ~
  http://ferh.blog.fc2.com/blog-entry-212.html

上毛新聞
 地元群馬県の上毛新聞社は、8月14日に御巣鷹の尾根に墜落した事故機を、世界で初めてカラー写真で一面トップ掲載した。
 出典:日本航空123便墜落事故 – Wikipedia

 特許庁が特許取得したことのWEB記事は、特許の失敗学[12] 特許庁の広報(3) 特報 特許庁の特許 が最初であった模様です。しかし、それを紹介してくれるWEBサイトが無さそうなことが悲しい。田舎者のArahaとしては、上毛新聞の記者の気概をもってこれからも投稿記事を書きます。

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