特許の失敗学[23] 経営の失敗学

特許の失敗学

 セグウェイの生産終了のニュースが2020年6月にあった…今頃やっと気がついたですよ。セグウェイが2001年に発表された当時は絶賛されたものの、20年後には事業の失敗が確定しました。特許登録の後の「産業の発達に寄与」までの過程の厳しさを現すものです。

出典:体を傾けるだけでスイスイ移動可能な未来の乗り物「セグウェイ」が生産終了へ – GIGAZINE
 https://gigazine.net/news/20200624-segway-end-production/


◆ セグウェイの失敗


 「セグウェイの失敗」については、数年前から多数の記事がヒットします。スウェーデンの「失敗博物館」によれば、セグウェイは2017年には既に失敗例として選ばれていた模様です。失敗博物館の展示作品には、ソニーのベータマックスやApple社のPDAのNewtonなどが出展されてます。技術的に優れていても、産業的な成功に至らないケースが多数あります。技術的なイノベーションは、商品としての成功の十分条件の一つに過ぎないということです。

(出典)
失敗を笑って失敗に学べ、スウェーデンに失敗博物館が登場
  | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
 2017年4月18日(火)11時30分
 https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/04/post-7427.php

Museum of Failure
 Learning is the only way to turn failure into success.
 https://museumoffailure.com/
 https://collection.museumoffailure.com/segway/

 技術的なイノベーションが優れていても、商業的成功を得るためには継続的なマーケティングまたは改良のイノベーションが必要です。後知恵でセグウェイの失敗の理由を挙げることは容易ですが、問題は2000年の当時に失敗を避ける対応ができたのかということです。セグウェイについては、次の記事がありました。

(出典)
生産中止の「セグウェイ」が示した価値の本質 | 日経クロステック(xTECH)
 坂口 孝則 未来調達研究所 取締役
 2020.07.03
 https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01268/00009/

 セグウェイは残念だったが、結局は早過ぎたということだろう。デザインの進化や低価格化、あるいはちょっとした機能の追加によって一気に普及するモビリティーがどこかから出てくるに違いない。あの「グーグル」は12番目の検索エンジン、「フェイスブック」は10番目のSNS(交流サイト)、「iPad」は20番目のタブレット端末だったのだから。

 ラストワンマイルの課題は交通分野にも存在するので、いずれセグウェイの失敗に学んだモビリティーが普及するだろうということでした。ちなみに、セグウェイの登場は遅すぎたという分析の記事もあります。

ドンキホーテでセグウェイ類似品が販売されてました。
 (出典)
 ドンキで買える電動モビリティ。キックボードやスケボーなど3種類+1が発売! 2020/07/20公開
https://forride.jp/news/fg-series

 今は昔、ソニーにCLIEというPDAがありました。フラッシュPROMが高額で利用できない時代の製品で、電池の残量がなくなると保存したデータが消えるというトンデモ仕様でした。これを買ったときには、何とかなると考えてましたが、何度もデータを消失した後で使わなくなりました。シャープから最初のスマホが販売されたときには、追加の電池が無料というキャンペーンがありました。つまり、電池の稼働時間が極端に短いとメーカーが自認していると考えて、購入を見送りました。

◆ 経営の失敗学

 セグウェイの失敗について検索しているうちに「経営の失敗学」という本があることを知りました。かつて「○○力」というタイトルの本が流行りましたが、「○○の失敗学」のブームは来るのでしょうか。

「経営の失敗学」の目次を参照すると、

・ビジネスは本質的に失敗する運命にある
・成功学の幻想
・成功は学べない
・失敗学の有用性

 これらの目次で心がときめいた方は「経営の失敗学」ご購入をお薦めします。

 個人発明家は、発明特許が売れれば目的達成ですが、発明品がヒットして普及すればより大きな成功となります。マーケティング、MOT、更に「経営の失敗学」を研究することは、「特許の失敗学」において「遠きをはかる」ための重要なテーマと考えます。

 素晴らしい(と確信する)発明アイデアがあっても、その発明品が普及するためには、失敗を回避し、さらに外部環境を含む「運」が必要です。それだけスタートアップ企業が成功するのは困難であるという事でしょう。個人発明家が製造・販売を目指すのであれば覚悟が必要でしょう。


◆ Afterword

 勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし

 野村克也監督の言葉として有名ですけど、江戸時代の大名で剣術の達人でもあった松浦静山の剣術書『常静子剣談』にある一文から引用されたものであるとのこと。「経営の失敗学」の一部を開示する記事がおました。

 かつて、Steve Jobs は John Sculley に、“Do you want to sell sugar water for the rest of your life, or do you want to come with me and change the world?” 言うてApple社に誘うた。成功事例のあらへん新規事業を目指すんやったら、「失敗学」の研究は必要やろう。

経営の失敗パターンは大きく3つある|日経BizGate
 https://bizgate.nikkei.co.jp/article/DGXMZO3115089030052018000000

 経営の失敗学 (日経ビジネス人文庫)
 http://www.amazon.co.jp/dp/4532198534

(出典) 菅野寛 著 『経営の失敗学-ビジネスの成功確率を上げる』(日本経済新聞出版社、2014年)第5章「失敗学の有用性」から

成功の必要条件は「戦略×努力×運」

 私が観察したところ、「結果として」成功しているのは、負けない戦略、他社を凌駕する努力、時の運という3つの条件がすべて揃った企業です。
(1)負けない戦略
(2)他社を凌駕する努力
(3)時の運=結果としての成功