お手軽ツールで今更学ぶアナログ(26) 100円スピーカの素性?

Joseph Halfmoon

大分間隔空きました。前回はスピーカを調べるつもりが、M1KとAliceソフトウエアの「挙動を勉強」してしまいました。今回はスピーカのインピーダンスを調べるつもりがお求めやすいスピーカの「方式について勉強」することになってしまいました。アナログというより部品の話。

※「お手軽ツールで今更学ぶアナログ」投稿順 indexはこちら

前回脇道にそれてしまっていたSpeakerの件、今になってまた調べ始めたのには切っ掛けがあります。別件で、

BBC micro:bit にスピーカをつなげ、Node-REDからの遠隔操作で鳴している

からであります。実はこれに使っているスピーカ、アナデバ製のアナログ実験キットADALP2000付属のもの。この「素性が明らかな」スピーカをmicro:bitに取り付けてしまうとアナログの実験やりにくいじゃん。micro:bitには何か「お手軽」で「テキトー」なスピーカを取り付けたらええ。そこで思いついたのがアイキャッチ画像に掲げましたる「遊休中」の小さなスピーカであります。

100円(税込み110円)、100円ショップにて購入

であります。猪口才にもステレオ・ミニプラグ(3極)付、しかし実際にはモノラルの品。当然アンプなどは内蔵するわけもなく、PCやラズパイなどのイヤホンジャックにとりつけると蚊の鳴くがごとき音で鳴きます。micro:bitのBOB基板のネジ式ターミナルに取り付けるのにミニプラグは余計だね、配線途中で切って剥いてしまおう。しかし、取り付ける前に前回うやむやになっていた

スピーカのインピーダンス・プロファイルの測定

の題材に使ってみようと思ったんであります。魔が差した?測定の道具立てがこちら。

1ooYenSpeakerDUT

Analog Devices製ADALM1000(M1K)で駆動波形の印加と測定を行います。比較対象用に素性の分かっているADALP2000のスピーカ(左の方の黒いやつ)を使います。ターゲットである100円スピーカは上の白いやつ。なお、まだ配線を毟っていないので、ミニプラグのままなのですが、ADALP2000には良いものが含まれているのであります。Aduio Connector BOBであります。

Audio Connector BOBオーディオ用のミニプラグを差し込んでブレッドボードに刺し込めるようになっています。3極どころか4極でも信号取り出せるようですが、今回はモノラルの2極なので、ピン1とピン2のみ使用。測定方法については以下のアナデバ様の資料(立派な日本語)をご参照ください。

「ADAML1000」で、SMUの基本を学ぶ トピック16: ラウドスピーカのインピーダンス・プロファイルを測定する

まずは、素性の分かっているADALP2000付属のスピーカ(8Ω,1W)について測定してみます。上記の資料のグラフと同じような見かけになるようにボード線図の縦軸調整したら、クリソツな波形が得られました。ADALP2000 speaker

上のグラフの生データからインピーダンスのピークは、約327Hzで約13.5Ωであります。ほぼ資料と一致。そして資料ではその先の課題として、測定結果からスピーカの等価回路のL,C,Rを求めてSpiceシュミレーションしてみよ、とあります。すみません、ずるしてしまいました。

ほぼ同じ測定結果だから結果も同じだよね。アナデバ様は問題の答え(答えは英文のみ)もちゃんと掲げられているので見てしまいました。ともあれ、参照用のスピーカについてはちゃんと測定できている、と確信いたしました。

さて、100Yenスピーカの方です。まあ大きさもかなり違うので共振周波数とかは大分違うかもしれないけれど、だいたい同じような波形がとれるんじゃない、とやってみたところ、上と同様な設定で50Hzから1000Hzの範囲ではほとんどフラットな波形になってしまいました。そのくせちゃんとスピーカは「鳴いている」のです。接続は間違っていない。よくみると500Hz付近に微妙なピークが見えるのですが、あまりに微妙。範囲を50Hzから5000Hzに拡大し、さらに限界まで縦軸を引き延ばしてみてみました。

100Yen Bode plot

500Hz付近のなだらかな山以外に、3500Hzくらいにもピークらしきものが見えます。それにしても先ほどのスピーカとは大違い。何がこうするのか?スピーカ素人の私が考えても分からないので、とりあえずプラスチックのシャーシからスピーカを取り出してみました。左がADALP2000のもの、右下が100円ショップ。

100Yen Speaker Back

100円ショップのものも一応 8Ω、0.5Wとスタンプがあります。左のスピーカにはモロ磁石がむき出しになっているので、鉄製のクリップがパチンとくつきます。しかし右の100円スピーカの裏側にはクリップがつきません。そして高さが極めて薄いです。でも、圧電サウンダとは形状が違う。表にひっくり返してみると、

1oo Yen Speaker Front

中心部の狭い領域にのみ、クリップがつくきます。中央部に磁石があるようです。いろいろ調べてみると、この形のスピーカ、AMAZONや楽天などで大量に売られていました。大体 uxcell という中国商社経由。それらeコマースサイトでは

内部磁石スピーカ

と呼ばれているようです。それって何?しかし、良い世の中です。私のような素人にも分かる説明をしていただいている方がおられました。

集まれスピーカー好き!マグネットについて2

上のサイトで扱われているのは高級なオーディオ用スピーカで、100円スピーカはターゲットじゃないのだと思いますが、外磁型磁気回路と内磁型磁気回路というタイトルで説明あり。内磁型だと理解すると、その構造から裏側にクリップが付かず、表の中央だけにクリップが付くのか説明できます。さらに気になる一文あり、引用させていただきます。

明らかに外磁型と違う点として、アンプから見た時ボイスコイルのインダクタンスがボイスコイルの位置によってあまり変化しない

これは私が目撃したフラットな特性の一因ではないかしらん。。。ほんとか。またまたグダグダな終わり方だなあ、スピーカ。

お手軽ツールで今更学ぶアナログ(25) M1KとSpeakerで気付く に戻る

お手軽ツールで今更学ぶアナログ(26) BBC micro:bitのスピーカ駆動波形 に進む