連載小説 第73回 4ビットAI内蔵 “詠人舞衣子” の思い出

Momoe Sakurada
ペンネーム
桜田モモエ

<これまでのあらすじ>

サイコーエジソン株式会社の詠人舞衣子(よんびとまいこ)です。訳あって4ビットAIを内蔵しています。心理学科卒文系女子ながら先端技術製品のICを販売する米国現地法人のSS-Systemsへ赴任しちゃいました。運命の人、Appleの青井倫吾郎さんと、とうとう結婚しちゃいまして、うふっ、楽しいです、仕事も生活も。

(日本半導体の栄光と挫折?『詠人舞衣子』総目次はこちら

 

第73話 パソコンがカードサイズに?

 

私、詠人舞衣子(よんびと まいこ)は、サイコーエジソン株式会社の14年生。文系ですが技術製品(半導体)を販売するアメリカの現地法人SS-Systemsへ赴任。アップル・コンピュータの青井倫吾郎さんと遂に結婚しちゃいました!ステキです。うふっ。今回は、スゴい製品ができちゃったらしいんです。

 

「おい、舞衣子、スゴい事になっちゃったぞ」

「え?」

トム君が私のオフィスに来て言いました。

「パソコンがカードの大きさになっちゃうらしいんだよ」

「そんなに小さくなる訳ないじゃない。何バカなこと言ってんのよ」

「いや、まあ、俺はバカかも知れないけど、バカな事じゃないかも知れないんだよ」

「何なのよ、じゃあ」

「我が、サイコーエジソン株式会社の小型化技術のスイを集めてだねえ、PCを一挙にカードサイズにしちゃったらしいんだよ」

「そりゃいいけど、PCってパソコンでしょ」

「そうなのだよ、パーソナルコンピュータなのだよ」

「だからさあ、そのカードサイズって何のカードサイズなのよ、トム君?」

「え?」

ガリバー旅行記のサイズかも知れないでしょ、カードのサイズが」

「ガリバー旅行記?」

「知らないの?スウィフトよ」

「知ってるよ、ガリバー旅行記」

「だから、ガリバー旅行記なみに大きいカードなら分かるわよ」

「あ、いや、そういうんじゃなくて、本当のクレディットカードなみの大きさらしいよ」

「本当の?」

「そう、本当の」

「Visaなみの?」

「そう、Visaなみのだよ

「へええ。だったら、かなり小さいわね」

「だろ、舞衣子」

「だったら、見せてみなさいよ」

「うん、明日見せるよ」

「え、明日? もうできてるの?」

「うん、できてるらしい」

「そうなの?」

「うん、急なんだけど、明日、日本から持ってきてくれるんだって、開発した人が」

「へえ、そうなんだ。それ、私たちが売っていい商品なの?」

「ああ、基本的にはそうなるらしいよ」

「そう。やるじゃん、トム君」

「いや、俺がやるってわけじゃないんだけどさ(笑)」

「まあ、いいよ。明日見てあげる」

「ははあ、見てくださいませ、舞衣子さま」

「うん、苦しゅうないわよ、トム君」

という訳で、何だか面白そうな話が舞い込んできました。ずっと、ICのマーケティングや納期のフォローなんかをやっているのですが、ICからもう少し付加価値のついた製品を扱う事ができるかもという話です。しかも、それはカードサイズのPCらしいというので、期待がふくらみました。

果たして、翌日、日本から三二村(みにむら)さんという開発を担当したエンジニアが出張にいらっしゃいました。トム君をはじめとして、何人かのメンバーが集まり、三二村さんの話を聞くことになりました。

「OK, guys. Let’s get started. Today, we have Mr.Minimura from Edison Japan, who has developed a brand new product, so called “Card PC” ! 」

てな感じでトム君が始めました。ローカルのマーケティングも一緒にいるので英語なのですが、分かりにくいので、日本語訳でいきます(笑)。

「ええ、三二村さんは、サイコーエジソン株式会社の小型化技術のスイを集めて、PCをカードサイズに集積してしまったのです」

「おお、それはスゴい。ならば、IBMマシンと互換性があったりするのですか?」

「ええ、それでは、ここから先は三二村さんにお答え頂きましょう。宜しくお願いします、三二村さん

「はい、ありがとうございます、トムさん。ご紹介いただきました三二村です」

ぱちぱちぱちぱち

「ええ、ワタクシは我社の小型化技術のスイを集めまして、小型基板の上にCPUから何から全部搭載してしまったのですよ」

「おおお!」

「何故かと申しますと、デスクトップPCやラップトップPCの中に入っている大きな基板って不必要なくらいに大きくて、無駄なスペースも多い事に気づいたのです」

「おおお!」

それで、できるだけ小さな基板に載せるならと計算してみましたら、クレディットカードサイズに乗るのではないか、となった訳です」

「おおお!」

そこで、いよいよ実物でデモを見せてもらうことになりました。

それと、確かその時、三二村さんは質問に答えて、ATバスだとか、ISAバスだとか、PCIバスだとか、なんかそんな事を言っていたように記憶しているのですが、私には良く理解できていませんでした。そうです。何てったって、私は心理学科卒業の文系女子ですから。うふっ。

そもそもバスって、アメリカ社会では、走ってない事はないんですけど、基本的にそこは車社会なので、車を持てない人のための乗り物なんですね。シリコンバレーは所得の高い人が多いので、あまりメジャーな乗り物ではありませんでした。因みに、私は一度も利用した事はありません。

で、そのバスとあのバスが同じものなのか違うものなのかなのですが、どうやら大きさや形状は違うけれども意味は一緒らしいのだそうです。何のこっちゃか、私にはよくわかりませんでしたが・・・。

ま、いいでしょう。

三二村さんは、持参してきたカードPCを高らかに掲げ、

「ここにPCの機能が集積されているのです!」

と宣言しました。

「おおお!」

という歓声が上がった事は言うまでもありません。

 

第74話につづく

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