<これまでのあらすじ>
サイコーエジソン株式会社の詠人舞衣子(よんびとまいこ)です。訳あって4ビットAIを内蔵しています。心理学科卒文系女子ながら先端技術製品のICの営業に携わっています。10年近くに及ぶ海外赴任(アメリカ、ドイツ)を経て、日本勤務中です。20世紀も終焉に近づいていく中、我々の電子デバイスビジネス(半導体、液晶表示体、水晶デバイス)、そして日本の産業はどこへ向かって行くのでしょうか。
(日本半導体の栄光と挫折?『詠人舞衣子』総目次はこちら)
第132話 どっと混むのはどこ?
私、詠人舞衣子(よんびと まいこ)は、サイコーエジソン株式会社の20年生。文系ですが技術製品(半導体などの電子部品)を販売しています。10年にわたる海外赴任生活(アメリカ、ドイツ)を経て1999年3月に日本へ帰任しました。家族は3人一緒でラブラブですよ。うふっ。世界はITバブルの真っ盛り。半導体の売上げもサイコー!・・・だった頃です。
「ドットコム どこが混むのと 聞く上司」
この頃の旧人類(失礼!)を揶揄した秀逸な川柳ですね。サラリーマン川柳というのを第一生命が1980年代後半から始めていたのですが、次第に世間での認知度が高まり、ITバブル時代の傑作が冒頭の川柳でした。
当時の50代くらいの部長クラスの方々は、PCを上手に使いこなす事ができないなど、私たちの世代からすると、少々かっこ悪く見えた時代でした。今では、Z世代などと言われる若者から自分たちこそが旧人類と思われているのでしょうが(汗笑)
で、その頃、世の中は再びバブルの様相を呈していました。いわゆる 「ITバブル」です。
事の発端は、アメリカはシリコンバレーです。1990年代末期に、インターネット関連のサービスが注目を集め、多くの企業や投資家が資金を投入し始めました。電子商取引やSNS、PC、ネットワークなどに関連する新興企業が急激に注目を浴びるようになり、ドットコムバブルなどと言われました。
ドットコムバブルの由来は、勿論、どこかが混雑するという事ではなく、ドメインネームの末尾が .com となるIT関連企業です。数年でバブルははじけ、ドットコム企業の多くが消えてなくなるのですが、GAFA等の有力企業は残っていきます。
GAFAという言い方はその頃にはありませんでしたが、Google、Apple、Facebook、Amazonのことですね。近年ではGAFAMとしてMicrosoftを入れる場合もあります。
1グーゴル(Googol)という数の単位をご存知でしょうか。Googolは1の後に0が100個連なった値です。億だの兆だのではありません。とてつもなく大きい数字です。グーグル(Google)はそれに因んだ会社名で、莫大な情報量を提供する検索エンジンを意図して、創業者のラリー・ペイジらが命名したそうです。スタンフォード大学にいた頃です。
Google社は1998年に創業され、2004年の株式上場後にはマウンテンビューに移転して一大拠点を構えています。ご存知のとおり、検索エンジンのデフォルトのようになって、ググるという動詞も生まれました。
Appleは、ご承知のとおり、スティーブ・ジョブズらによって1976年に創業された会社で、やはり、シリコンバレー生まれです。ガレージから始まったのは有名なお話ですね。
マッキントッシュPCが人気を集めていましたが、その後iPod、iPad、iPhone、Apple Watchなど大ヒットを連発し、ハードウェアだけでなく、コンテンツも含めて大きな事業を展開していくようになります。
Steve Jobsはサイコーエジソン株式会社へもいらした事があります。iPhoneを世に出すにあたって、それまで世の中にはなかった画期的な液晶が欲しかった頃です。実際、iPhoneには、人々がびっくりするようなタッチパネルの液晶が搭載されました。
その時、ミーティングに出席した同僚から聞いた話によると、彼はとても自由な人で、我々の関係者がちょっと席を外した隙に、目の前にあったサンプルの携帯電話を勝手に分解して、そこに使われていた我々の液晶表示体を観察していたという事です。分解しちゃ駄目よ、と注意しておいたにも拘わらずだったそうです(笑)
Steve Jobsが一風変わった人だった事は、書籍や映画でも有名ですが、その革命的な発明は、世界中の人々が認めるところでしょう。こんな名言も残しています。
「Stay hungry. Stay foolish.」
Facebookは東海岸生まれです。ハーバード大学の学生だったマーク・ザッカーバーグが始めたSNSですが、2004年の事なので、詳述はもう少し先にしたいと思います。
Amazonにも言及しておきましょう。ジェフ・ベゾスさんが1993年に立ち上げたネット物流システムです。利益が出るようになるまでには2001年まで待たなくてはならなかったようですが、現代の我々はAmazonなしには生活できないほどになっています。私も通販で色々購入しますが、Amazonのお世話になる事が一番多いですね。特に、書籍はほぼ全面的にAmazonです。そのために、全国の書店がどんどんなくなってしまっています。予想だにしなかったゲームチェンジャーとなりましたが、世の中の進歩というのは、そういうものなのでしょう。
アメリカでは、このように世界を変える技術やビジネスモデルが次々と生まれていきました。日本はどうかというと、もう一歩の惜しいところまではいくのですが、ゲームチェンジャーにまではなれずにいたと言わざるを得ません。例えば、iPodのような音楽プレーヤーも、世界をあっと言わせたのは、ソニーではなくAppleだったように、同じような技術開発をしていても、世の中へのリリースの仕組みまでセットで考えていないと、勝者にはなれなかったのではないでしょうか。消費者が本当に欲しいモノとコトまで察知したAppleこそが世界を変えたのです。
マーケティング感覚に長けた方が勝ち組になるという事象は、半導体ビジネスにも起こっていくのですが、そのお話はまた次回。