「アナデバ社(ADI社)のWeb記事『StudentZone』を初回からすべて読む」の2021年12月号はCMOSインバータを反転アンプにつかう件です。「その1」なのでLTspiceで雰囲気を味わう(お茶を濁す)回なのです。ま、実習やろうにも手頃な「アンバッファ」タイプのCMOSインバータが手元にない、と。
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アナデバ様の2021年12月号Web記事(日本語版)へのリンクが以下に。
巻末問題への解答編(英語)もあり、そちらのリンクは以下です。
December 2021 StudentZone Quiz Solution
ターゲット部品の件
アナデバ様が今回の記事でご指定の実験用ターゲット部品は以下のCMOSインバータICのうちどれか一つです。
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- CD4069A
- CD4069UB
- CD74HCU04
- CD4007
手元にもCMOSインバータICの在庫はあるのですが、「アンバッファ」タイプではないフツーのロジック用ばかりです。「発振回路」にもつかえるような「アンバッファ」(シンプルな1段構成のインバータ)タイプの在庫は無いと。そして頼りのアナデバ製ADALP2000学習用部品キットにも上記のデバイスは含まれておりません。
ほぼほぼヤケクソ(失礼)で手元に大量にある単体のMOSFET、BSS138(Nch)とBSS84(Pch)を組み合わせてインバータにしてみるか、と思ってSPICEで眺めてみたのです。しかし(手元のSPICEモデルを使う限り)上下のバランスが悪くて「アンプ」にするには忍びない特性デス。しかたがないので、以下のようにいたしました。
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- 74HCU04相当品は多分手に入るので発注かけ、届いたら実機で動かす
- とりあえず今回はCD4007をターゲットにLTspcieでシミュレーション
シミュレーションにCD4007を使うことにしたのは、「DISKの肥やし」のファイル群の中に、いつのものともしれない、出所も不明なCD4007のSPICEパラメータを発見したからであります。
単体インバータのゲイン
まずは単体インバータの特性を観察するための回路が以下に。
入力に3角波を与えた上記回路の過渡解析(.tran)の結果が以下に。まあ、ほぼほぼアナデバ様の記事の波形と近いような気がします(個人の感想です。知らんけど。)
さて、上記の時間波形から、X軸を入力電圧、Y軸を出力電圧として書き直したグラフが以下に。ちょっとヒステリシスしてる?
上記の肝心なところを拡大したグラフが以下に。0~5Vで動作なので、ちょうど中央2.5V付近でパタンとヒックリ返る期待ですが、使用したパラメータでのシミュレーションではちょいと電圧高めのようです。そのうえ、頼みもしないヒステリシスな特性が見えてます。適当にカーソルをおいて、入出力電圧の比(勾配)、つまりはゲインを測定してみました。以下のSlopeのところをご覧くだされ。入力電圧の約137mVの変化に対して出力電圧は-3.72V変化しているので、約27倍だと。グラフを見れば「中央」付近であればもっと高めのゲインが得られるのは明らかですが。
負帰還(フィードバック)回路を入れて単段のアンプだと。
単体で約27倍以上(多分もっと)の増幅ができることが分かったので、次は入力にフィードバックをかけてみろ、と。R1とR2の比は1:1なので1倍の反転回路となる筈。LTspiceの回路図が以下に。
以下は時間波形です。入力は振幅1V、オフセット0Vの正弦波です。出力は位相反転で振幅同じとなる筈が、微妙に振幅が小さくなっとります。この辺、シミュレーションについて考察すべきなのでありますが、アナログ素人は見なかったことにして通り過ぎてしまいます。なんだかな~。
本題は、ボード線図を描いて振幅、位相特性を確認することであります。AC解析用に微妙に変更した回路図が以下に。
LTspiceで求めた上記回路の特性が以下に。アナデバ様の記事のボーデ線図とほぼほぼ同じ(アナデバ様記事は「ボーデ」と表記しとりますです。私は「ボード」派。どっちでもいい。)と
3段構成のアンプ回路
アナデバ様記事には、単段構成の後、3段構成のアンプ回路と、チョッパアンプ回路が続いております。まず、チョッパアンプは置いておいて(後で時間をかけて味わいたいデス)3段構成のアンプ回路です。記事通りに回路を描いて、AC解析した結果、ボード線図も記事とほぼ同じものが得られることを確認してます。しかし、ちょいと引っかかるのが、
この3段アンプ発振するんじゃね、
という点。アナログ素人の私が言うんじゃありません。LTspiceがそういうのです。。。まあ、次回、実デバイスが入手できたら発振するもんだかどうだかやってみる、と。いいのかそんなことで。