物置の中から300Ωフィーダ線のきれっぱしが出てまいりました。多分、いや確実に若者は300Ωフィーダ線、知らないのではないかと想像します。だいたい地上波デジタルになって久しい。それ以前からほとんど同軸ケーブルに置き換えられていたような気がします。それにしても気になっていた「300Ω」の件。特性インピーダンスをM1Kで測れるものかどうかやってみました。その前にM1Kでインピーダンスの測り方を復習しておかねばなりませんでしたが。
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遥かな昔、ご家庭のテレビというテレビ(ブラウン管式)には300Ωフィーダ線という平行2芯で幅広のリボン状のケーブルがつながっていた筈です。この度その遺物を発見、約140cm弱の切れ端です。このようなケーブル、既に絶滅したのかと思いきや、検索してみるとオヤイデ電気様にて販売されておるようです。以下は300Ωフィーダ線をFMラジオの簡易アンテナに使う件。300Ωフィーダ線は死なず。
しかし、残念ながら手元の140cmではFMアンテナには長さがちと足りませぬ。それにしても昔、オームの法則を習ったばかりの少年であったころ、300Ωフィーダ線の300Ω不思議でした。実際にテスター当てたことがあるような記憶がありますが、導線の抵抗が300Ωもある筈がない。どこが300Ω?まあね、その辺は複素数とか、交流とか習わないと辿り着かない。私などは、説明聞いた後も未だに不思議は不思議のまま。
さて、折角出てきたフィーダ線、特性インピーダンス300Ωという数字をM1Kで測れるのですかい?という試み。ちょっと、特性インピーダンスの測定方法を検索してみました。例えば、沖電線株式会社様の
などが見つかる。ちょっと引用させていただくと、
測定系が「分布定数回路」としての領域に達しませんと、このTDR測定法は成立しません。そのため、高速なパルス信号(立ち上がり時間 tr:20~50ps)を発生するジェネレータと高帯域かつ高解像度のオシロスコープが必要になります。
駄目だ、こりゃ。手元のM1KでもAnalog Discovery2でも無理。それにね、TDR法など使って、特性インピーダンスを測りたい、などと思う人は、
GHzが普通
な世界に生息している筈。そういう世界の測定方法ではなく、も少し簡単な測定方法はないかいな。ありました、日置電機様
まあ、ぶっちゃけ、簡単にまとめると
- 解放端でインピーダンスを測る。抵抗無限大(の筈)なのでコンダクタンスG=0のときのキャパシタンスCを測定する
- 次に終端を短絡させてインピーダンスを測る。まあ小さい抵抗はあるのだろうが(目をつぶって)R=0と見なしたときの、インダクタンスLを測定する。
元々の特性インピーダンスの定義にはRとGがいるのだけれどどちらも0なので消え、すると複素数jωの項だけが残るけれども、分母分子の両方にjωがいるために、LとCに掛かっていたjωも消滅、なんと美しくも簡単な、
左の式にて特性インピーダンスが求まるわけでございます。日置電機殿としては、日置電機製のLCRメータを使用して上記の手順にて測れる、という意図でありましょう。
調べてみたら、注文通り、日置電機製のLCRメータをお使いになり、50Ω同軸ケーブル(TV用の75Ωではなく、無線系の人々御用達)の特性インピーダンスを測っているページを発見。そちらへ辿るとコールサインがを掲示されておられます。
ううむ、日置製のLCRメータをお買い上げできれば、同軸ケーブルの特性インピーダンスは測れるのね。測定周波数1MHzなり。
今回、お楽しみ実験装置、アナログデバイセズADALM1000(M1K)で、同軸ではなく300Ωフィーダ線をは測れないかということですね。
M1Kでインピーダンス測定する方法については、こちら。
「ADALM1000」で、SMUの基本を学ぶトピック15:インピーダンスの測定、周波数の影響
基本、参照用のRと直列にDUTを接続し、GNDならぬ2.5V(M1Kではおなじみの手ですが)に接続。参照用のRとDUT全体にはチャネルAからサイン波を与え、DUTの電圧はチャネルBで測定する、と。これで、インピーダンスが測定でき、ちゃんとLとかCとか計算して出してくれる。まあ、LCRメータではないけれど、LCRが測定できる筈。
そこで必要な参照用のRのために、密かに部品を買ってありました。アイキャッチ画像に掲げた高精度の抵抗であります。
1kΩ±0.05%
普段使用のE24系列(5%)とは段違いに精度の良いもの。ま、M1Kの測定ソフトであるAliceのデフォルトが1Kなだけで、設定を変更すれば、実は何でもよいのでありますが、測定基準になるだけに少し良いものにしたかった。なお、与えるサイン波の
- 周波数
- 振幅
は、どちらも何時もの設定ウインドウ内で設定する値がそのまま使われるようです。この辺の選び方でも適、不適が出るんでないかい。それに、
以下は全てブレッドボードに差し込んで測定、ワニ口やらなんやらも酷い
ので、目には見えない余計な「ものども」がきっと一杯ついている筈。
さて、まず、1kΩの参照抵抗に直列に100Ωの抵抗を並べて測ってみたものがこちら。測定周波数は1kHz、振幅2Vで測定。額面?100Ωといいつつ、ハンディDMMで測定したら98.9Ωだった品。勿論5%品なので規格内。M1Kの測定値は、98.8Ω。ここはなにか自信が持てるな。Aliceが出力するグラフはこんな感じ。X軸プラス方向に一直線、いいね。
次に、抵抗を0.01μF(10nF)のコンデンサに取り換えてみました。DMMで測ると9.36nF、M1Kで測ると9.95nF。0.6nFほども多めに見えるのは周囲にいろいろついているからじゃろか。0.6nというと小さい感じもするが、600pFと言えば結構大きな「余分なもの」が見ている感じもする。コンデンサなので、グラフはこんな感じ。
一番やっかいなのが、インダクタンス。ADALM2000には、いくつかコイルが入っておりやすが、とりあえず後の測定と「なるべく似たあたり」かということで取り出した「額面」100μHのコイルを測ったものがこちら。測定値の絶対値が小さいので、約62μH。コイルはなかなか高精度の部品を作り難いので、多分精度20%くらいではないかと想像いたします。それからしても小さい。結局、リアクタンス成分は、LとCの引っ張り合いで決まるので、コイルのLの値が、周りについているよからぬものどものCのお陰て相殺されてしまった結果の約62μHではないかしらん、などと想像。グラフはこちら。真ん中辺にとても小さく見えている。勿論、表示サイズを限界まで拡大してのこれなので、もともとM1K-Aliceでは想定外の範囲なのかもしれない。
さて、どうもCにもLにも不穏な兆候がある中、考える前に300Ωフィーダ線を繋いで測り始めてみました。その上、測定周波数を1kHzから10kHzに上げてしまいました(振幅は控えめ?に1Vに落としました)、大体VHF周波数帯、数十MHzといった信号を通すための300Ωフィーダ線だから少しでも高い方が良いだろ、くらいのの乗り、と、ぶっちゃけこの方がベクトルが長くなってグラフの見栄えがするから。
とりあえずフィーダ線の端をショートさせてLを測れば、12.52μHなる値を得ました。でもね、先ほどのLの測定からすると、よからぬものどものため20~40μHくらい損しているのかもしれない。すると何測っているのかわからんが。
しかし、オープンで測った、キャパシタンスの方がもっとヤバイ。666.8pFと読めたけれども、ベクトルが第3象限?これは何か良からぬことが起きているに違いない。
どうも測定周波数が影響していると思われたので、少し変えて様子を窺いました。その様子はこんな感じ。
- 100Hz、ベクトルが飛び回って測定不能
- 1kHz、安定、測定可能。ベクトルは第4象限。
- 2kHz、安定、測定可能。ベクトルは第4象限。
- 5kHz、安定、測定可能。ベクトルは第3象限。
- 10kHz、安定、測定可能。ベクトルは第3象限。
- 100kHz、Alice落ちる
どうもM1K-Aliceは、ある一定の時間区間で計算を繰り返しているようですが、あまり周波数を落とすとその時間区間に対して十分なデータ数が使えないのではないかと想像します。よって1kHz以上の周波数を使うのが無難。しかし、元々サンプリング速度100kのハードに周波数100kなどと指定すると黙って落ちます。AliceのGUIは、M1Kで扱えないような信号やら設定やらがされた場合、特に何も言わずに落ちる、という経験を結構しています。ベクトルが第3象限に入ってしまうのは、どのような波形が見えてそう計算されているのか追及したいところですが、今のところパス。
安定な2kHz、1V振幅で再測定。
5.98μH、326.6pF
この値から、特性インピーダンスを計算してみると、135Ω。駄目だね、桁はあっているけれど。。。
しかし、浮遊容量?に邪魔されるのかLの値が大分小さくでる傾向がある。先ほどのコイルの測定じゃ、少なく見ても20μH以上も損していた。20μHだけL値が小さかったと「妄想」して計算すると280Ωくらい、いいじゃないか。。。
考察するに、
- 単位長さ辺りのLとCの比なので、長さには無関係といいつつ
- 短い長さ=測定値の絶対値の小ささ=よからぬものどもの影響に埋もれる=ついでに測定系の測定精度の限界にもひっかかる
というロジックで、信頼できる測定は不可、であったと。切れ端の
140cm
短すぎた? 75Ωの同軸でももっと長いケーブルが出てきたらもう一回トライしてみるか。物置にはまだまだ埋もれていそうだし。