お手軽ツールで今更学ぶアナログ(14) TMP01、温度コントローラ

JosephHalfmoon

前回は、アナデバ社の温度センサ2種、電流出力と電圧出力のものをとりあげさせていただきました。今回は、同じアナデバ社の温度センサでも、温度コントローラと銘打った?TMP01であります。8ピンのアナログデバイスにして、サーモスタット的な働きをできるもの。出力的にはON/OFF制御なのでデジタルとも言える?

※「お手軽ツールで今更学ぶアナログ」投稿順 indexはこちら

TMP01、型番はともあれ、8ピンDIPのデバイスで、Analog Devices社のロゴがマーキングされてありますれば、オペアンプかい、と早合点するかもしれません。が、温度コントローラです。「温度コントローラ」という言葉がちと耳慣れないためか、ご本家のホームページにも以下のように()の中に温度センサーと書かれております。

TMP01 温度コントローラ(温度センサー)、低消費電力、プログラマブル

センサでなく、コントローラであるのは、単に温度を測るのではなく、温度を測った結果として、何か制御することができる、という点でありましょう。

  • 第1の設定温度より高ければOVER信号がロウになる
  • 第2の設定温度より低ければUNDER信号がロウになる

OVERもUNDERもオープンコレクタ出力で、20mA引けます。実際の制御対象、ファンとかを制御するための駆動回路にトリガをかけるための出力としてはまずは十分なのではないかと思います。

まあ、上記のページからダウンロードできるデータシートを御覧になればその構造が説明されていますが、掻い摘んでいうと

  1. VREFからは定電圧(2.5V)でている。
  2. その電圧をR1,R2,R3の3つの抵抗で分割して、設定温度に対応する設定電圧を作る
  3. 内部の温度センサの電圧出力と入力された設定温度対応の電圧をハイ、ロー2系統のコンパレータで比較してそれぞれ条件があうと出力トランジスタをONさせる

こんな感じです。つまりR1,R2,R3を適切に(テキトーじゃありませんよ)決めれば目的を達します。しかし、ON/OFF的な制御になるので、そのままではチャタリング的な動作が起きてしまう恐れあり。その対策として、ハイ側もロー側もヒステリシス特性が持たされており、温度が下がる時と上がる時で異なるポイントでコンパレータが動作するようになっています。その際、ヒステリシスの幅は、

R1,R2,R3に流す電流値で決まる

のであります。よって、

  1. ヒステリシスの幅を決めるとVREFから流し出すべき電流決まる
  2. 設定電圧は温度で決まる
  3. 電圧と電流決まったので抵抗値が決まる

ということで、R1, R2, R3が決まってしまいます。今回、ヒステリシスの幅はデータシートにあった例の通り2℃としたので、電流は17μAであります。OVER信号がアクティブになるのを30℃、UNDER信号がアクティブになるのを25℃としたので、これを計算して以下の回路図を描きました。なお、温度制御するデバイスがあるわけではないので、それぞれ信号がアクティブになったらLEDを光らせるという私でも作れる単純明快(?)な回路であります。なお、温度によって変化するアナログ電圧出力がVPTAT端子に出ているので、ここの電圧を測ることで内部の温度センサが動いていることが分かります。(以下の図面は水魚堂さんの回路図エディタを使わせていただいております。)

しかし、計算した抵抗値、容赦なく細かいです。手元にはE24 5%の抵抗が幾らか買ってあるとはいえ、それほど種類の持ち合わせもありません。ありものをテキトーに選んで、なんとか近い値に近づけました。

R1は22kΩ2本と10kΩ1本、6.8kΩ1本で、

22 + 22 + 10 + 6.8 = 60.8kΩ、実測59.6kΩ 57.9kΩに対して+2.9%

まずまずか。R2は1.2kΩ1本と330Ω1本、

1.2 + 0.33 = 1.53kΩ、実測1.51kΩ 1.5kΩに対して+0.6%

良い感じ。R3は、33kΩ2本と22kΩ1本、

33 + 33 + 22 = 88kΩ、実測87.2kΩ 87.7kΩに対して-0.6%

かなりねらい目どおりかも。でも、ブレッドボードに「抵抗ラダー」を差し込んでいくと、こんな感じ。かなり醜い。。。

黒いTMP01チップの左上のLEDのうち、左がOVER、右がUNDERに対応するLEDです。

  • 30℃越えたらOVERが光る
  • 30℃から25℃の間はどちらも光らない
  • 25℃以下はUNDERが光る

まあ、実際には温度精度が1℃くらい、ヒステリシスの幅が2℃あるので、26~27℃くらいで、不点灯ってな感じと予想しました。

今回使用したお手軽アナログ学習ツールは

アナログデバイセズ社ADALM1000(M1K)

でありますが、単に5Vの電源というのがお役目であります。なお、VPTAT端子と出力端子の電圧をモニタしてみていますが、グラフを掲げる必要も感じない平和な実験です。

恒温槽

でもあれば、立派に実験ができるのですが、そんなものは手元にありません。冷蔵庫から保冷剤を取り出してきて、結露をしないように覆いをかけてチップをば冷却いたしました。御覧じろ。

UNDER側が光りましたね。後は今の季節、ほって置けば温度が上昇いたします。不点灯のシーンはツマラナイので割愛いたしましたが、ちゃんと消灯いたしました。しばらく待てば、このとおり。

OVER側も点灯いたしました。ま、あまりOVER側で喜んでいると熱中症が心配なので止めます。

確かに温度コントローラ

お手軽ツールで今更学ぶアナログ(13) AD22100, AD592 温度センサ に戻る

お手軽ツールで今更学ぶアナログ(15) QSD123、赤外線フォトトランジスタ へ進む