SOT-23パッケージは老眼の目には辛い大きさです。前回はこのパッケージに入った参照電圧源LT1790を触ってみました。今回も同じSOT-23パッケージ。旧リニアテクノロジー(現Analog Devices)製のデバイス、LTC1799をちと触ってみます。中の回路は(多分)アナログなのだけれど、用途としてはデジタルに無くてはならない発振器であります。
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まずは、アナデバ社のLTC1799のページへのリンクを貼り付けておきます。ちゃんと「製造中」なデバイス。日本語のデータシート(あくまで参考という位置づけですが)もあります。
LTC1799 1kHz~33MHz、抵抗設定SOT-23発振器
このチップの機能については、下の式をご覧いただくだけでバッチリかと思います。式のところをLTC1799の参考用日本語データシートから引用させていただきます。
出てくる数字が、10とか100とか計算しやすいところがまず嬉しい。そしてプログラム(といってハードウエアでですが)するのは抵抗値Rsetのみです。この簡明さ素晴らしい。私でも計算できます。
この発振器使えば、私のようなものでも「確実」に方形波の信号を得ることができます。アナログ音痴の私でも「発振」しなかった「残念!」などということはありませぬ。(発振して欲しくないときに発振させてしまうのが音痴か)
デザインノート262 抵抗1個で周波数を設定できる1kHz~30MHzのSOT-23発振器
この発振器の利点というべきものを、上の日本語デザインノートから引用させていただきましょう。(データシートとデザインノートで微妙に周波数が違っている件についてはツッコミますまい。)
RSETをポテンショメータと置き換えると、回路が完成した後、出力周波数を「調整」することができます。一旦設定されると、LTC1799は全動作条件にわたって所要の周波数を正確に維持します。水晶とセラミック共振器はこの方法で調整することはできません。555タイマや他のRC発振器にはこのレベルの安定性はありません。
確かに、抵抗1個で結構な周波数に対応でき、さらに言えば周波数の調整も簡単にできるというのはなかなかお手軽でよいです。周波数の精度的にはセラミック発振器くらいか、でも最近のセラミックは精度良いのもあるので、多少落ちるか。水晶の正確さはないけれども、メンドイ発振回路の検討など不要なので、用途によっては良いかも。いちおう、ホームページに
シリコン発振器
と書かれていたので、一瞬、シリコンMEMS?とも思いましたが、このデバイス2001年頃の量産です。MEMSの発振器は、今でこそバリバリですが、20年近く前は、まだまだだった筈。アナデバ様も技術は持たれているようですがね。結局、シリコンMEMS量産しているところは限られるので、これは違うでしょう。中身の回路とかの説明は見当たらないですが、多分、伝統の555の「延長」上にあって近代化されたアナログ回路と思います。
今回、触ってみるためにブレッドボード上に作成した回路は以下のようです。もろ、データシートの回路そのまま。唯一、上のデザインノートのサジェスチョンどおり、単体の抵抗をポテンショメータに置き換えました。これで周波数の変更も可能。ま、分周用の端子で、3通り(これまた10進!この徹底具合、素晴らしい)に周波数を変更することもできます。ここはスイッチにいたしました。(例によって水魚堂さんの回路図エディタ使わせていただきました。)
肝心のLTC1799ですが、SOT-23パッケージをDIP式のピンにするためのBOB基板に半田付けした上でブレッドボードに刺しました。アイキャッチ画像の、
半田付けがうまくなくてナナメっているLTC1799
見えますか。最近は、少し上手になった気でいたのだけれど、駄目だコリは。でもね、とりあえず動きます。
とりあえずポテンショメータは 40kΩ に設定いたしました。電源電圧は3.3Vです(電源電圧に関係なく同じ周波数が出せるところもお手軽。)上の簡単な式により、
- ÷1で2.5MHz
- ÷10で250kHz
- ÷100で25kHz
となります。
まず÷1のときの波形と、周波数の計測結果です。使用した「お手軽ツール」はDigilent社 Analog Discovery 2であります。プラス電源で3.3Vを供給し、オシロのチャネル1で波形を見ているだけです。簡単。
次に÷10のときの波形です。同じ波形に見えますが、時間軸10倍になっていますぞ。横の周波数も御覧ください。
次に÷100のときの波形です。時間軸は2倍にしかしていないので、方形波の波形がよく見えるのではないかと思います。周波数もね。
そして、電源電圧だけ、3.3Vから5Vに変更してみました。おんなじ幅の方形波の縦方向だけが広がったの分かりますか?それに周波数、ほとんど変わってない。
どんな用途にも使えるという分けには行かないですが、このお手軽さ、「お手軽」を標榜している本連載にはピッタリだな。今回、全然、アナログな感じしないが。。。