介護の隙間から(10) バイタルセンサ再び

JosephHalfmoon

ちょっとのつもりで調べ始めたものの、今や「徘徊感知機器のラビリンス」に取り込められた感がある今日このごろです。調べていくと次々と現れるシステムは予想を超えたユニークさです。単に物理量を測定すれば良いセンシングシステムであれば、多分これほどの多様性は成立しないんじゃないかと思います。人を測るというよりは、人をケアするという目的が、多様なシステムの存在を生み出しているのかと。今日もまた、3社のシステムを調べます。

また別なバイタルセンシング、空気圧で生体安否と離床を検出

最初に取り上げさせてもらうのは、エヌウィックさんの「生体安否確認型」の離床センサです。センサ自体は平らなマット型なのですが、他のセンサのように中に電線は通っていません。中身は密閉された空気、それをチューブで検出装置(ここは電子デバイスです)につないでいます。装置の中の圧力センサ(もしくはマイクロフォン)でマットの圧力変動(もしくは体動、脈拍音など)をセンスしているのだと考えられます。一般に圧力センサは小型のものでも、かなり精度のよいものが売られています。マットの上に人の荷重がかかっているのか否かのような大きな信号どころか、かなり微小な信号までとれるセンサを調達することはできるでしょう。この装置の場合、心拍由来の変動まで測定できるようです。当然、呼吸とか、寝返りなどの体動も拾えるようです。バイタルが取れるというのは方式は違えど前々回でもありましね。離床は当然検出できる筈ですが、離床しないのに呼吸や心拍が止まった、という緊急事態も検出できるようです。メインは病院等の施設向けのようです。よって無線通知ではなく、ナースコールへの有線接続と装置内蔵のスピーカからの警報による通知です。介護保険適用タイプの在宅向けもあるようですが。形状だけならマット型は他社と同じですが、センシング方法は圧力という手もあったのかと目から鱗です。心拍、呼吸を検出するのもこちらは圧力、前々回は24GHzの電磁波でした。いろいろできるものです。

次に取り上げさせてもらうのはアイトシステムという会社さんなのですが、ホームページにとても印象深いお言葉があったので引用させていただきました。

「たかがボタン、されどボタン」

ここの会社の見守りシステムに使われているセンサは、焦電センサ、ドアセンサ、照度センサ、温度センサなど、ごく普通のセンサで、センサの使い方としては「普通」じゃないかと思います。ここの会社がユニークなのは、センサに加えて、介護対象の人に「おやよう」ボタンとか、「お薬」ボタン、「夕ご飯」ボタンといったボタンを能動的に押してもらう機能をもっていることです。センサによって一日の活動状況が測定できるだけでなく、ボタンを押した記録をデータとして残していきます。これに最近ありがちですけど「ビックデータ」的な処理をして、日常の傾向を掴み、異常を検出して、認知症の早期発見などに役立てよう、というのです。ぶっちゃけ表面的には工場などでやられている異常検知と同様です。また、飲み忘れ、重複などが問題の服薬管理などへの適用もできるようです。道具立てとしては、ごく普通に思えますが、「見守り」という本来の目的からするととてもいいアイディアに感じられます。一方通行の「センシング」だけでは介護が不毛になってしまう危険がありそうですが、このシステムには見守られる側にも「見守られる」だけでなく何か行動をする、「忘れずにちゃんと押せた」という小さいながらも達成感を持たせられる、というプロセスが組み込まれているからです。とても前向きなシステムじゃないでしょうか。「たかがボタン、されどボタン」、介護の現場に向き合ったからこその発想に思えます。

最後に取り上げさせてもらうのが、医療機器なども手掛けられている

メディカルプロジェクト

という会社さんなのですが、ここの「新製品セレクトプラス」というのが、これまた現場の発想なのでした。センシングの原理そのものは荷重を感じる普通のマット/フロア型のセンサなのですが。

マット型センサをフロアにしいて介護対象の方がベッドから降りたぞ、と検出して信号をあげる場合を考えます。その見張り状態のときに、その人以外の介護や看護の人がベッドサイドに近づいてもセンサは反応してしまいますから、誤報が通知されてしまうことになります。誤報は介護、看護側へのダメージが大きいので、そのような場合にはあらかじめセンサのスイッチを切ってベッドサイドに近づくべきなのでしょう。実はこれがまたやっかいみたいです。一端OFFにすれば、介護、看護する側がベッドサイドから離れたらまたセンサをONにしないとならないですが、人間入れ忘れるようです(当然、認知症でなくっても!)。スイッチ入れ忘れは深刻な問題になってしまうので、結局、介護、看護側の人がセンサをONにしたまま、フロアセンサを踏まないようにしてベッドに近づいていると、「見守られている人」もそれを学習し(人間ですからこれまた当然)、うまくフロアセンサを踏まないで徘徊に出発してしまう。。。

そこで、この「新製品」のフロアセンサは大面積です。踏まずにベッドから外に出られないほど。しかし、それだけではさきほどの問題は解決できませんな。それでマット型のセンサをベッドにももう一枚敷いておくのですね。ベッドの方に荷重がかかっているならば、見守られている人はベッドの上にいるので、外からベッドに近づいた人がフロアセンサの上に足をついても信号はでない。ベッドの荷重が無くなって、フロアに荷重がかかった時だけ信号がでると、こういう解決法です。ただマット型センサを2枚つかうだけ、後はその信号の見方で「新製品」。現場らしい工夫でないでしょうか。

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