介護の隙間から(14) 電池の要らない無線、EnOcean使われていた

JosephHalfmoon

『マットセンサで離床を検知し、特小無線で介護者の近くにあるアラームを鳴らす』というのが、ティピカル(デバイス屋らしい言い方です)な徘徊感知機器の姿ではないでしょうか。しかし、今までいろいろ調べてきた通り、各社いろいろ工夫をしていて、平均像に収まらないところこそ、「差別化」部分であると言えます。前回、使用されている無線の中間まとめをしていて、ちょっと目を引いたのが、3社(うち1社は推定)もEnOceanという無線方式を使っている会社があったことです。EnOcean、コンセントも電池も要らない無線です。

まずは、EnOcean方式の無線をなんらかの形で使っていて、徘徊感知機器の登録がある会社を列挙いたします。もしかするとこれ以外にもあって私が見落としているだけかもしれないので、抜けていましたらお知らせください。

なお、上の2社はハッキリEnOceanと書いていますが、NISSHA株式会社は使っている無線センサについてEnOceanと書いているわけではありません。しかし、写真を見ると、入手可能なEnOcean製品に限りなく似ている無線センサが複数なのでこちらで勝手に断定させてもらいました。

正直言うと私にはちょっと意外でした。実はEnOceanは、最新というほど新しい技術でもなく、登場は21世紀も初頭です。元々は欧州、ジーメンス社が起源のようです。既に20年近くの「実績」があるのです。当初、エナジーハーベスティング技術を使って自ら発電する無線機ということで、一気に注目を集めましたし、実は私もすこし勉強させてもらったこともあるのです。確かに「はまる用途」はあります。しかし、スイートスポットにはまれば良いのですが「向かない用途」もままあると考えています。面白い技術なんだけれども使い道が難しいという感想をもっています。IoTの第一回でもその辺の話をちょっと書いています。まずは、ご本家、EnOceanのサイト(日本語)にリンクしておきましょう。

EnOcean

EnOceanの「自家発電」無線、何が良いのでしょうか。ビジネス面から断言すれば、身も蓋もない言い方ですが、①配線工事代が浮く、②電池交換の工賃が浮く、という2点です。まさに「コストカット」。あまり、配線工事の発注をやられた方はいないかと思いますが、これ、結構費用がかかります。電力を供給する線と、通信のための線、2本となるとなおさらです。末端のセンサ装置代などとは「桁違い」な金額がかかると断言していいでしょう。なにせ、人間様が作業しなければ配線できないのですから。しかし、配線工事が要らない、という点では電池駆動のセンサ+無線装置も同じです。ここで「天秤にかけられる」のは「電池交換にかかる人手」の費用対、設備更新期間に対する自家発電(環境発電というべきですが)の費用の比較です。数年、数か月に一度、電池交換して回る(人件費に比べれば電池代はタダみたいなものです。)のと、だいたい10年、メンテナンスフリーで人手をかけないで済むのと。この辺になってくるとまさに「現場」毎の事情が大きく効いてきます。ある(多少古めでLED化の進んでいない)ビルで聞いたら、蛍光灯約1万本弱、使っていると言っていました。毎日どこかで切れ、その度に係の人が毎日交換しています。すでにかかっている人件費の横で、毎日数個の電池交換する(それでセンサ数千個は維持できる)のであれば見えてこない話でしょう。それに対して、センサが非常に高いところに設置されていて、高所作業車でも使わないとダメだとなると、電池交換は非常に高いものにつきます。あまり高所作業車を借りたことのある人は多くないと思いますが、電池より4桁高いと言っておきます。そういう場所では、エナジーハーベスティングな装置は電池より1桁高くてもとてもリーズナブルだと思います。しかし、忘れてはいけません、徘徊検知、特に介護保険適用は「在宅のみ」です。在宅でセンサ1000個は使わんでしょう。数個のセンサ、数か月か年に1度の電池交換、大変なのか、そうでないのか、それが問題です。

ブツブツとお金の話ばかりしましたが、まさにエナジーハーベスティングが生きるシーンというのは、そういうお金のせめぎ合いの境界のこちらかあちらかというところ。ここで3社の製品をまじまじと見るならば、確かにエナジーハーベスティングで電池交換が要らない、という点が効果があるようにも見えないことはないです。でも本当はどうか。実際に使われている方、あるいはビジネスしている3社の経験をお聞きしたいものです。

さらにディスるつもりはないのですけれど、エナジーハーベスティングで得られる電力はとても小さく、かつ、不安定です。このため、動画を伝送しようなどという目的にはとても使えません。数バイト、といいった数値データを時折伝送するのがせいぜいじゃないかと思います。また、データ量が少なくても、脈拍を24時間監視するような目的にも向かないと思います。そのためには1日10万から20万回くらいの通信が必要になるためです。つまり、送信したいセンサデータにも向き不向きがあるということです。数十分に一回温度を測って送信するとか、ドアが開いたときだけ送信するとかにはピッタリではあります。電池がない、ことに価値を見出せるかどうか、アプリを考案する側のアイディアによりけりのように思われます。

なお、EnOceanのセンサ無線装置、日本ではRohm(どうこう言う必要のないバリバリの電子デバイスメーカです)が「押して」います。

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