鳥なき里のマイコン屋(9) Z8とZ8051

JosephHalfmoon

そろそろ「Armのお供にレガシー8051」説も打ち止めにして、次の話題に進みたいものだ、と考えている今日この頃なのですが、まだまだ成り立ってしまう事例が現れてくるのです。今日取り上げさせていただくのは、IXYS CORP.という米国の会社です。パワエレの会社で、正直、あまり馴染みがありません。しかし、この会社に「Z80の」Zilog社が買収されていたのです。さらにIXYS社はLittelfuse社というもともとヒューズの会社だったらしい会社(あちこちの会社を買収しまくっている)に買収されたので、Zilogはいまやヒューズの会社の孫部門ということになるようです。最近、合併とか買収でMCU製品が「呉越同舟の梁山泊」状態、になっている会社が多いですが、ここもまた例外ではありませんでした。

まずは例によって、Zilog社が現在ラインナップしているMCUシリーズとそのコアを見ていただきましょう。

Z8 Encore!8bitZ8上位互換
Z8 Encore!
Z8 Encore! XP
eZ808bitZ80上位互換、拡張
Z80518bit8051
S3 Family8bitSAM8RC core
Samsung S3C8/S3F8
ZNEO16bit(32bit)Z16F
ZNEO31!32bitArm Cortex-M3

Zilogというとつい一世を風靡したZ80にばかり目が行ってしまいますが、16ビットプロセッサZ8000が出遅れてパソコン分野から脱落してしまった後のZilog社は、周辺ICとMCU、Z8で食いつないでいた時代が長かった筈です。Z8はZ80とは似ても似つかないCPUですが、MCU向けのコアとしてはよくできていて結構顧客をガッチリ抱え込んできた筈。Zilog、やはり今でもMCUの主力は伝統のZ8のようです。ただし、シリーズ名はZ8 Encore!という自ら「アンコール」を求めているシリーズで、Z8とは命令セット上位互換をうたっているのでいくらか改良や拡張がなされた版なのでしょう。さらに Z8 Encore! XPというより上位らしい版もあります。何が ビックリマークで、何がXP なんだかちょっとツッコミたくなりましたが、ほじくるのは止めにしておきます。

しかし、御世辞にも会社規模が大きいとか、儲かっているとか思えない割りには、ここの会社の8ビットMCUラインの多さは半端ありません。看板であるZ8の横に、eZ80という、Z80の上位互換のCPUを使ったMCUシリーズもあります。前回はレジェンド6502がMCUになっていましたが、今回はもう一つのレジェンド、Z80がMCUになっているわけです。昔のZ80互換のモードと拡張モードがあって、拡張モードではメモリ空間などが拡張されるようです。住み分けとしては、Z8は組み込み向でも小規模なアプリ、eZ80はそのちょい上あたり(かつ、Z80のレガシー資産が必要な人)に向けたという感じでしょうか。ZilogなんだからZ80は無いと示しがつかない(何の?)、Z8とZ80の共存は納得です。

その後に登場するのが8051コアのMCUです。これがあるお陰で「Armのお供に8051説」がまたまた成り立ってしまうのですが、Z8あるのに8051もあるとは納得いかないです(個人的に)。性格からしても、Z8と8051もろ被りだと思います、昔は市場でガチンコで戦っていた遠い記憶があります(この2人、Z80とは被りません)。その上、Z8051というネーミング。なんじゃこりゃ、です。ともかく、ZilogはZ8051もちゃんと売る、というスタンスを表明しています。わざわざそういうことを書いているところを見ると、何か不穏な話でもあったのかもしれません。なお、台湾「8051業界式」の符丁はZilogのホームページには見当たりません。データシートから読み解くと、Zilogの8051は「2T」というタイプになります。オリジナルからすると3倍速ですね。命令セットは互換ですが、オリジナルとは異なるコアであることが分かります。

さらに8ビットMCUのシリーズがあります。そのS3ファミリのデータシートを読めばそのコアが分かります。データシートの表紙にはちゃんと最近のファンシーなZilogのロゴ(その下にはIXYSの傘下にあることが書かれています)があるのですが、文章の出だしは、”Samsung S3C8/S3F8” とばっちり Samsung書いてあります。元Samsung社が売っていた8ビットのMCUライン(4ビットもあったらしいですが見当たりません)が、IXYS社に売却され、それをIXYS傘下の「マイコン屋」であるZilogが面倒を見るようになったものらしいです。性格的にはやはりZ8、Z8051と被りまくりな感じ。

その上は、16ビットという位置づけのZNEOというブランドのZilog独自コアZ16Fです。内部を見ると、このコアは16ビットというより、ごく軽い32ビットと言うべきじゃないかと思います。ただ後から出てくる Arm コアの32ビットとの「ポジジョニング」をハッキリさせるために、16ビットと名乗っているような気もしないでもありません。

そしてZilogのフラグシップは、またArmです。MCU向けのArmとしては標準的なCortex-M3を使っています。下の製品ラインと一体感を持たせるためか、こちらはZNEO32! と名乗っています。Zilog やたらと「!」マーク使いますね。そんなに!しなくても良いのにと、他人事ながら思います。まあ、ちゃんとArmも8051もあったので説は成り立ちました。しかし、ここの8ビットラインをみると、ともかく売り先がある間はどれも生産続けるぞ、という感じの扱いに思えます。戦略などなくても売ったもん勝ち。でも、その先はどうなるんだか。もしかすると偉大な戦略が隠されているのかも、ですが。

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