前回は温度センサを取り上げさせてもらいました。日常生活では、温度とくれば次は湿度ですよね。そこで今回は湿度センサを調べてみます。温度センサは基本的な物理量を測るものだけに、測定原理、用途、精度とも実に多様で、お値段の方もピンキリでした。それと比べてしまうと湿度センサはそれほど多様でもなく、十数年前の印象では、それほど多くのセンサメーカはないように思っていたのです。ところが、今回調べてみたところでは出るは出るは、多くのメーカが湿度センサを出してきていました。これもIoTの影響に見えます。「温度とくれば、湿度も」知りたい、ということなのでしょう。
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通常「湿度センサ」として取引されているセンサは、飽和水蒸気量に対する割合、相対湿度Rh(Relative humidity)を測るものです。同じ水蒸気量でも温度によって相対湿度は大きく変わります。多くの場合、湿度センサのみ、というよりは温度センサと組みあわせて温湿度センサとして実装されているケースが多いと思います。形状としては、
- 「コンポーネント」としての湿度センサ
- 「モジュール」としての湿度センサ
- 「プローブ」としての湿度センサ
くらいの3段階に分かれ、用途も異なります。「コンポーネント」つまりは部品レベルの湿度センサは、まさに電子部品で、何か上位の装置に組み込んで用いるものです。「デバイス商売」のメイン対象です。それに対して「プローブ」は、測定装置に取り付けて用いるワイヤの先にセンサが取り付けられた計測器です。通常、使う人はプロに限られますし、値段もコンポーネントとは2桁3桁異なります。真ん中の「モジュール」はちょっとグレーで、会社によって、プローブに近いような計測器を「モジュール」といっているケースもあるし、ほとんどコンポーネントに近い部品なのだけれど、センサを小さな基盤に載せているから「モジュール」と称しているケースもあります。今回はIoTデバイスへの応用をメインで考えるので、「コンポーネント」部品レベルのみ列挙します。
このような絞り込みをした場合、相対湿度の測定原理はほぼ2つに限定されます。
- 高分子膜の電気抵抗が湿度により変化するのを検出
- 高分子膜の誘電率が湿度により変化するのを、電極間の静電容量変化として検出
どちらも高分子膜に空気中の水分が入り込んで電気的特性が変わるという現象によっているので、反応時間はそれほど早くなく、数秒はかかるのが普通のようです。また、電子デバイスにしては珍しくケースに穴をあけないと目的を達しないデバイスでもあるので取り付け場所にも注意が必要でしょう。
単体のアナログセンサとしては抵抗を測るタイプの方が測定回路が簡単にできる為か、昔は抵抗変化を測定する回路を構成する場合が多かったように思うのです。しかし最近はセンサを駆動し、値を測定して補正するような回路までIC上に作り込んでしまって、端子から温度と相対湿度がデジタル値として読み出せるような「センサ」が増えました。そのためか、静電容量変化を見るタイプが増えているように思います。これは、抵抗変化のタイプは、湿度3%などの低い湿度や(夏至の日のデスバレーへでも行かないとなかなか体験できませんが)、結露すれすれの高い湿度や、高温環境などには向かないのに対して、静電容量タイプは低いところも高いところも一応測定できる(精度は落ちる)ことも一因じゃないかと考えます。なお、湿度計測には常に「結露」の問題が付きまといます。高湿度で液体の水がセンサ部にたまってしまうと、測定できなくなります。センサによっては温めて水を飛ばすような仕組みをもっているものもあります。結露しても乾けば大丈夫、というものもありますが、結露すると壊れます、というものもあるので要注意です。また、温度などに比べると測定精度は高くありません。昔は実力10%単位くらいの精度だったです。今でもせいぜい2~3%精度で測れるものは良い方ではないかと思われます(出力の単位としは0.1%くらいは平気で出てきますが、それをそのまま信じてはいけない、ということです)
以下、部品としての湿度センサを扱っているベンダのリストです。
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- 神栄テクノロジー 抵抗式湿度センサ老舗です。
- TDK 抵抗式湿度センサ
- センシリオン 温度センサ湿度センサ一体型で、デジタルで測定値を出力できるタイプのセンサの草分け的存在。
- Silicon Labs 温湿度コンボ、デジタル出力基本
- Integrated Device Technology 温湿度コンボ、デジタル出力基本
- TI 温湿度コンボ、デジタル出力基本
- AMS 温湿度コンボ、デジタル出力基本
- ハネウェル 温湿度コンボ、デジタル出力基本
- アルプス 温湿度コンボ、デジタル出力基本
- タイコエレクトロニクス 温湿度コンボ、デジタル出力基本
- IST センサ部単体製品、それを組み合わせたモジュールもあり
- 帝人エンジニアリング 温湿度コンボ、デジタル出力基本
- Aosong Guangzhou Electronics(ASIR) 温湿度コンボ、デジタル出力基本
- ボッシュ BME280は温度湿度に加えて、圧力センサまで一体化