土木でエレキ(10) 鉄筋の腐食検査、特許出願、意外な会社も

JosephHalfmoon

「コンクリート」の方から「鋼」の方に調べを進めるにあたり、前回はボルトを取り上げさせていただきました。今回は、鉄筋、コンクリートの内部に埋まっているあれ、の腐食の検査について調べていきたいと思います。まずは、鉄筋の腐食の検査方法について、例によって特許を調べてみることにいたしました。誰がどんな特許を出願しているのかを読み込めば、素人にもある程度の感触は得られる筈。今回は「誰が」の方に重点を置いて調べてみたいと思います。

調べてみたのは、古いもので昭和61年出願のものから、つい最近公開になったばかりのものまで合計80件ほどの特許出願です。うち6割強は特許として成立していますが、残りは審査待ちのものもあり、成立しなかったものもあり、という状況です。ざっと洗い出しただけなので、これで網羅という分けでは全然ありませんが、

サンプリング調査

くらいな意味はあるかと思います。全数網羅しているわけでもないので、比率についてはどうこう言ってもいたしかた無いですが、どのようなカテゴリの組織が出願しているのかを見れば、

鉄筋の腐食についての検査

が誰に必要とされているのか想像がつくでしょう。勝手に以下の5カテゴリに分類させてもらいました。

  1. インフラ構造物を抱える事業体
  2. ゼネコン
  3. ゼネコンに材料を提供している事業体
  4. 土木・建築対象のエンジニアリング、検査等事業体
  5. 電子デバイスメーカ、その他

 

インフラ構造物を抱える事業体

合計21件の特許出願をこのカテゴリに分類いたしました。内訳は、電力関係が11件、鉄道3件、高速道路2件、ガス会社3件、電話関係5件です。電力会社、鉄道会社、高速道路会社は、どこも「鉄筋が腐食すると困る」インフラを大量に抱えている筈なので、自社の内部に需要があると想像できます。ただし、出願しているのは、数ある電力、鉄道、高速道路会社の中でも偏っていて、電力の場合、東京電力、関西電力、四国電力の3社だけ、鉄道はJR東とJR東海のみ(もう一件は鉄道総合技術研究所)、高速道路は中日本高速道路のみです。同じインフラ企業の中でも規模が大きい会社が出願している傾向が垣間見え、自社でそのような開発までやる気になるのにはある程度敷居が高い、と感じられるのですが、どうでしょう。そんな中、失礼ですが前2社に比べると規模の小さい四国電力が目立つのは、四国電力と「一緒に」やっている株式会社四国総合研究所 のためでしょう。四国電力から分離独立した「エンジニアリング会社」にも見えるので、第4の「土木・建築対象のエンジニアリング、検査等事業体」にいれてもよいような気もします。

ガス会社3件は、大阪ガスと、東京ガスでやはり大手に偏ります。こちらは、鉄筋も関係する特許出願ではあるものの、ガス屋さんなのでガス配管の減肉の方がメインで気になっている感じです。鉄筋腐食メインとはちょっと系統が異なると考えます。また、電話関係は、日本電信電話および、NTTファシリティーズなどです。こちらは電話の通信インフラ内にメンテナンスすべき構造物がある、ということが鉄筋腐食に取り組む発端にはなっていそうですが、社内の需要だけではなく幅広くメンテナンス事業など受託していそうな感じです。事業の実体は分からないので断言できませんが、こちらは「土木・建築対象のエンジニアリング、検査等事業体」に分類すべきなのかもしれません。

 

ゼネコン

ゼネコンは大小数あり、本命だと思っていたのですが、今回リストアップできたのは13件にとどまりました。前述のインフラ系企業の出願にも数社共同出願等あるので、それらを含めて見つけた社名を列挙させていただきます。

清水建設、鹿島建設、戸田建設、西松建設、フジタ、大林組、安藤・間、竹中工務店、五洋建設、ピーエス三菱

最後のピーエス三菱は、プレストレスト・コンクリートの専門会社なので、コンクリートの中の鉄筋には「敏感」でないといられないので、さもありなんという感じで納得(私が納得してもしかたありませんが。)また、13件のうち最多の4件を出願している五洋建設の場合、マリコン⇒塩風⇒腐食みたいな連想で、これまた納得(本当にそういう連想で良いのか?!)しかし、総じて思ったよりもゼネコンの出願数が多くないのは、この手の技術開発は、「土木・建築対象のエンジニアリング、検査等事業体」に任せているためとも想像できます。実際、ゼネコン各社とも「息のかかった」エンジニアリング会社など持っている筈。

 

ゼネコンに材料を提供している事業体

ここには12件をリストしたのですが、鉄筋を作る側は神戸製鋼の1件のみ、他の11件は全て太平洋セメントです。鉄筋の腐食は、鉄筋とそれを包むコンクリートの両方にかかわるわけですが、件数からいうと鉄筋自体の問題ではなく、コンクリート側に主因があるから、とも読めます。しかし、セメント会社は何社もあるのに、大手とはいえ太平洋セメント一社がこの問題に取り組んでいるのは、何か背景があってのことだと思います。しかし、業界知識のない私にはそれが分からないのがもどかしいところです。その上、1998年出願のものから、数年前の出願まで、波はあるものの継続して出願されてきています。素人ながら、太平洋セメントは本気で取り組んでいる、という印象を受けました。

 

土木・建築対象のエンジニアリング、検査等事業体

ここには14件をリストしたのですが、事業体のカテゴリは多岐に渡ります。うち3件は検査というより、腐食を防ぐための技術「防蝕」の会社の出願です。ナカボーテック、日本防蝕工業の2社です。他に目立つのは、株式会社アミックの3件。こちらは建築物やインフラ構造物の検査の専門会社です。ここの会社案内から1行引用させていただきましょう。

そして、「身の回りに非破壊検査」をスローガンに、巷に頭をもたげる「危険の芽」を未然に摘み取り、明るくて安心で安全な社会の構築を約束いたします。

 

電子デバイスメーカ、その他

ここには17件をリストしました。産総研や物質材料研などの国の研究所もあり、島津製作所のような高度な計測器を製造されているメーカもありなのですが、うち11件は、意外な会社の特許出願でした。

セイコーエプソン

エプソンはプリンタのメーカとして有名ですが、電子デバイス・メーカでもあります。特許出願の発明者をしらべてみると全11件同一の人物の出願でした。勿論、電子デバイス応用、勿論、開発者も電子デバイス側の人、多分、団員の誰かが知り合い。エプソンがそんな開発をやっているとは露知らず、結構意外でした。ただ、2011年ごろ集中的に出願した後、2015年を最後に出願は途切れています。開発が完了し商用化したものか、それとも残念なことになったのか、ネットの海にはその痕跡は見つからず。

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