前回、前々回と河川の水位計測を勉強してまいりましたが、電子デバイスネタの本丸と思しき非接触式の水位計測には行きつけませんでした。今回は、初回でちょっと触れた国土交通省水管理・国土保全局 革新的河川プロジェクトの第1弾の評価結果を読ませていただきたいと思います。この中には、非接触式を使用した水位計測の事例が多数。読めば非接触式センサのいろいろとその得失がみえてまいりましょう。
さてこの革新的河川プロジェクトですが、なかなか長期間にわたるプロジェクトのようで、第1弾から第4弾(私が勝手に「第1弾」などと唱えておるわけではなく、お国のサイトにそのように記述されておるのです。)まで存在します。第4弾が終わる予定は今年度末のようなので、まだ現在進行中であるのですが、うち、第1弾と第3弾については試験計測結果の一部が出ています。ざっくりとまとめると
- 第1弾、第2弾は「洪水時に特化した低コストな水位計」
- 第3弾は簡易型河川監視カメラ
- 第4弾は流量観測機器の無人化・自動化
となっています。今回は、既に試験計測結果の発行されている第1弾のメインと思われる部分について見ていきたいと思います。「メイン」とことさらに言うのは、第1弾がさらに3つに分かれるのです。なかなか複雑。
- クラウド型・メンテナンスフリー水位計
- 全天候型ドローン
- 陸上・水中レーザードローン
1.がメインの洪水時に「特化した低コストな水位計」です。これは明らかに土木系ネタに見え、参加しているチームは12と最多。複数組織合同の1チームもあれば単独会社の1チームも含まれます。2,3は「流行り」のドローン応用。しかし難易度が高すぎたのか、土木ネタから離れているためなのか、参加チーム数は少ない(2)です。そして技術仕様への適合状況は開示されているものの、試験計測結果はまだのようです。さて、この1について求められたものを勝手にかいつまませていただくと
低コストであちこちに簡単に設置できるクラウド連携可能な無給電で5年以上稼働できる水位計を作れ、なお、洪水の時は5分毎に計測!
ということであります。悪くはない要求事項に見えますが、それもお値段次第。具体的なコストイメージが書かれていて、装置は100万円/1台、通信コストは1000円/月と書かれています。まあね、いい線かなあ。ある程度の台数が出る見込みがあればやるというものかな~。実際に参加したチームのソロバン勘定を聞いてみたいものです。
さて関心のセンサ部分なのですが、分類すると以下のようでした
- 水圧式 4チーム
- 画像処理型 2チーム
- 超音波式 2チーム
- 静電容量式 1チーム
- 電波式 2チーム
- 伝送率センサ 1チーム
前回も接触式分類で出てきた「水圧式」と「静電容量式」「伝送率センサ」の合計3つが接触式で、残りの3つ、「画像処理」、「超音波」、「電波」の3つが非接触式に分類できます。「伝送率センサ」というのはどんなものだか個人的に関心を引いたのですが、残念ながら機器設置までいたらず実験できなかったようです。また、機器を設置したものの計測できなかったものとか、実験(前後4回の「洪水」、といってたかだか2017年の秋口の1か月ほどの期間中に起きた実測ケースなのですが)中に不具合起きたもの、要求仕様の計測をできなかったものなどあり、まともに「完走」できたのは5チームという結果です。まあ、屋外の環境がいろいろ辛いのは私も知ってはいるのですが、電子系の会社チームが結構脱落しているのがちと情けない。河と海では条件違うものの、毎年浜辺で装置を調整していたことのある私としてはもっと頑張れよ、と言いたい。(ま、私も最初の年は海水と塩分に大分やられましたが。。。)
さて、要求仕様を満たした上で「完走」できた5チームのうち、実に4チームが接触式の水圧式センサを使用していました。水圧式はもともと実績十分、土木屋さんはお手の物かと。非接触式は超音波式の1チームのみ。
画像処理型などが代表的なのですが、5分毎計測という要求なのに間隔が長くなってしまっているのは消費電力のせいかしら。バッテリー切れで計測できなかった回とか、夜間で水位算出できなかったとか、設定水位の調整を間違えてデータ取得できなかったとか、画像処理の手法を売りにしていたみたいですが、それ以前の問題でコケているのは残念。この手の屋外での計測は、私が言うのも何ですが、
雨にもマケズ、風にもマケズ、電気はクワズ
だものねえ。