帰らざるMOS回路(3) アナデバM1KでIV特性?

JosephHalfmoon
JosephHalfmoon

何を隠そう(隠しませんが)秘密兵器はアナデバ製ADALM1000であります。略称M1K。アナログ回路の「自主練習」用にアナデバ殿が販売している教育用のものです。お値段お手頃、しかし、「お値段以上」なツールです。これを使ってMOS回路の実機の動作を見てみよう、というわけです。

従来、Digilent社のAnalog Discovery 2というお道具を使ってきたのですが、それでできないわけじゃないのです。AnalogといいつつDigitalもカバーするくらい機能は満載、測定回路をちゃんと計画したら今回やりたいことも立派にできるでしょう。またAnalog Discovery 2搭載のADコンバータ等主要部品もアナデバ製です。

けれどもね、ADALM1000、以降M1Kと略します、はDC特性など測定するときに

無類のお手軽さ

でできてしまうんであります。本サイトはお手軽指向。

まずはパッケージを開けてみます。

本体の表に書かれているブロックダイアグラムこそ、このツールの神髄でしょう。2つのチャネルがあるのですが、2つとも同じ構成です。左側にSOURCEとして3つ描いてあるのが、HiZ(実際には1MΩ)、電圧源、電流源です。このうちのどれかを選択。電源2つは、単なる電源ではなく、サイン波、三角波等の波形(外部からのデータ読み込みもできる筈)を生成できるジェネレータです。そして電源に直列に電流計、並列に電圧計、勿論計測はプログラマブル、がはいっておるというわけです。ですから、ちょっとした回路ならこのチャネル1本を接続(もちろんグランドもね)、すれば即計測可能です。電流はかるのにシャント抵抗入れたりとか考えずともよいわけであります。

基板の裏側を見れば(基板上下はプラスチック板で保護されていますが、透明なので中のチップはよく見えます)、アナデバ製のLSI満載です。バラ売りでそれらのチップ買ったら相当するのではないかしらん。ただ、制御に使われているマイコンは、アトメルのマークでした。自社でもMCUもっている筈のアナデバ殿ですが、デジタルなところにはこだわらない、感じがします。

さて、このツール、お勉強用だけあって「オープンソース」を標ぼうしており、複数存在する計測用のソフトウエアのソースコードがGitHubで公開されています。今回、お手軽にバイナリパッケージからインストールして使ってみたのは以下の2つです。Linux、MacOSにも対応らしいですが当方で使用PCはWindows 10です。まずは、

Pixelpulse2

こちらをインストールすると、同時にM1K対応のUSBデバイスドライバがインストールされるだけでなく、本体ファームウエアのアップデート書き込みも行えます。それ故、まずは最初にインストールすべきものでしょう。インストールしたら即本体を認識し動作したのですが、ファーム・アップデート後本体認識しなくなって多少焦りました。再起動したらアップデートしたファームで再認識されました。ちゃんと手順読めよ。なお、デフォルトインストールでは、M1Kが接続されるとPixelpulse2を起動する常駐プログラムもインストールされました。起動にちょっと時間かかるので注意かも。

M1Kの主要機能そのものはPixelpulse2で制御でき、UIもシンプル、見かけはダークでカッコイイのですが、細かいところをいろいろいじろうとすると次のソフトの方がよいかもしれません。

Alice M1K DeskTop

こちらはいかにも「計測器」風の面構えです。ソフトウエア的にはPython処理系上で動作しているようで、Pythonでプログラムすることも可能なようです。ただし、処理系が使用しているバージョンは2.7というところがちょっと引っかかります。Pythonからの呼び出しは3.6と3.7でもできるみたいですが、私が最近使っている3.8はインストール時のリストに入ってなかったです。今後に期待。なお、インストール直後、こちらは立ち上げ失敗して困ったです。調べてみるとPythonのモジュール内で呼び出しているLibsmuというDLLが見つからない、というエラーでした。ファイルそのものは存在しているので、なぜ?と思ったら導入したバージョンが良くなかったみたい。何も考えず x64をインストールしたのですが、インストーラでインストールされるAlice本体は32ビットらしい。よってLibsmuもx86版を入れる必要がある、と。ちゃんと手順読めよ。

Aliceを立ち上げて、計測しているところのスクリーンショットはこちら。いかにもアナログな感じが嬉しい。

さて、早速、前回から問題になっているMOS-FET、BS138の単体トランジスタをM1Kに接続し、DC特性風なものをちょっと測定してみました。測定系?の写真はこちら。ブレッドボードに刺してあるユニバーサル基板の上にごてごてな手半田でとりつけられているのがBS138です。CH1(赤)をドレイン、CH2(オレンジ)をゲートにとりつけました。ソースはGND。

まずは、ゲート電圧固定(下のグラフは1.7V)で、ドレインーソース間の電圧(VDS)を0~2.5Vくらいの範囲で振ったときの、ドレインーソース間電流(IDS)のグラフがこちら。縦軸はmAです。小なりと言えディスクリートなので電流流せるわい。

同じ回路のまま、今度はゲート電圧(チャネルB)を振って、IDSを測ってみました。M1Kの流し出せる電流範囲を超えるとまずいので、ゲート電圧は2Vにも届かぬところで止めています。

それらしいグラフを2つ描けたので、とりあえずM1Kでの「測定」できそうな感じ。でも、SPICEとの挙動の乖離は埋まるのか?

次回からは、まず回路をSPICEでエントリし、シミュレーションで挙動をしらべ、次に実際に回路を作って、M1Kで実動作を測定する、という感じで「古代」の技術に迫っていきたいと思います。

帰らざるMOS回路(2) 苦手なSpice トホホ へ戻る 

帰らざるMOS回路(4) 牛刀割鶏、電源の制約 へ進む