お手軽ツールで今更学ぶアナログ(9) インダクタンス測定再び

JosephHalfmoon
JosephHalfmoon

前回は、M1Kでの特性インピーダンス測定がうまく行きませんでした。その原因はM1Kのインピーダンスアナライザでは十μHほどの値のインダクタンス測定で誤差が大きすぎるためでした。大体100μHほどの値のコイルのインダクタンスの測定すら誤差が大きいのに、それより小さな値のインダクタンスを測ろうとしても無理があります。今回はなんとか100μHのコイルのインダクタンスを測りたい、というのが目標であります。

まずは、測定方法のリサーチ。といって、つらつらWebを眺めているだけですが、参考にさせていただきたいページが直ぐに見つかりました。東京静電株式会社様の以下のページです。

VI法によるリアクトルのインダクタンス測定

東京静電さんは、リアクトル(電力系のデバイスなので、電子系?の本サイトからはちと遠いっちゃ遠いのですが、バリバリのインダクタンスです。)などを販売されています。多分、力率とか出てくる世界。

VI法の測定原理は、上記のページを見ていただくとして、結論だけ掻い摘んで書くと、RとLの直列回路に電圧振幅Vの正弦波を加えたときに、流れる電流(やはり正弦波)の電流振幅Iを測定すれば、正弦波の角速度ωと、抵抗値Rとあわせて左の式でインダクタンスLが決まると。測定する値は明快であります。

ただし、ちょっと気になる事があります。そのことについて言及していたのが、前回も参照させていただいた日置電機様のサイト内のページです。

インダクタ (コイル) のインダクタンス測定

上記から、1箇所引用させていただきます。

コイル(インダクタ)のもつインダクタンスと、コイルの寄生容量でLC共振する現象を自己共振と呼びます。また、この自己共振がおこる周波数を自己共振周波数と呼びます。コイルの評価では自己共振周波数よりも十分低い周波数でLとQを測定してください。

そうです。アンテナでも作るのであれば共振点を狙いますが、今回は共振してもらっては困ります。コイルのほうは、現物からだいたい100μHの筈なのですが、LC共振周波数はどのくらいかしら? ここでもWebが威力を発揮、ただただ値を代入するだけで求まってしまいます。時々お世話になっております、カシオ様の高精度計算サイト内、Tawly様御作成以下のページであります。

LC共振の周波数

まあね、コイルの寄生容量がどのくらいあるのか予想するに、せいぜい数十pFくらいかね~。でもエナメル線被覆薄いからキッチリまくと意外と付くのかな~。かなり過大な見積もりを入れて計算してみると、こんな感じ。

100uH 100pF 1.59MHz
100uH 500pF 0.71MHz
100uH 1nF 0.50MHz
100uH 10nF 0.16MHz

まあ、最低でもMHzオーダーだろうから、数kHzから100kHzくらいまでなら大丈夫だろうな、などと甘い見積もり。

抵抗値も決めないと。コイルの抵抗成分はmΩで測る程度の値だろうから、まともにやると大電流が流れてしまいそう。ここは、LTspiceに計算していただこう。とりあえず100mΩ、電圧振幅1V、1kHzといったところで、電流は3アンペア超えている!M1Kの上限200mAにはとても収まりませんな。Analog Discovery2使うにせよ、安全をみて電流はせいぜい数十mAくらいにしておきたい。Rを2桁くらいデカくしてみるか。よく言う「エイヤー」で47Ω。目の前にあった抵抗だけれども。どうだ。

電流21mAくらいまで落ちました。ま、電流値的にはOKな値。このシミュレーション結果を測定値に見立てて、最初に掲げた式で、Lを計算してみますか。周波数1kHz、Rは47Ω、電圧振幅1V、そして電流はグラフから読み取った21mAを代入。

1218μH

ぜんぜんダメじゃん。でもね、この設定だとLの値が電流値に非常にセンシティブなのであります。電流値を21.275mAとしてみると、

91.6μH

たった0.275mAの変動で10倍以上変わります。とてもこの感度に対応できるような精度で電流を測れないだろな。仕方がないので、周波数を上げてみます。さすれば、きっと上の式を手なずけられよう。LC共振周波数の検討から、多分大丈夫であろう100kHzという周波数を選んでみました。

電流値を0.5mAほど変化させてLを計算してみると、

  • 11.5mAのときは116.4μH
  • 12mAのときは109.5μH
  • 12.5mAのときは103.0μH

このくらいの精度なら電流測れるんでないかい。ついでに抵抗Rの変化についても見てみると、

  • 46Ωのときは110.6μH
  • 47Ωのときは109.5μH
  • 48Ωのときは108.4μH

大丈夫かね。それでは電圧振幅もちょっと振って計算してみる(みんなExcelだけれども。)

  • 1.05Vのときは117.5μH
  • 1.0Vのときは109.5μH
  • 0.95Vのときは101.4μH

ま、ちゃんと精度を計算したわけではないけれど、多少の誤差があってもプラマイ20%くらいの測定値は得られるのでないかな~。

そこで、実際にブレッドボード上にDUTを作り、Analog Discovery2の信号源を使い1V振幅100kHzの信号を与えて、抵抗の両端の電位差を測ってみます。現物はアイキャッチ画像をご覧あれ。残念ながら取り扱う信号の周波数を100kHzにしてしまったので、100k上限のM1Kには出番がありません。

波形はこんな感じ。青がRとL直列回路に加えている電圧、黄色が、R両端の電位差です。

波形にカーソル当てて値を読み取る必要はありません。Measurementsタブからクリクリやっていけば、値がバッチリ表示されます。

まず、ポータブルDMMで測定した「47Ω」の抵抗の抵抗値Rは

45.5Ω

でした。左のチャネル1の測定結果からもとめた電流振幅Iは

12.519mA

念のため電圧振幅Vは

1.0006V

ここから求まったインダクタンスLは、

105.0μH

いい加減なことを積み上げているので、どのくらいの精度なのかは微妙ですが、100μHの筈のインタクタンス(仕様はプラマイ20%精度だと思われる)を測ってこの値なので、まあいいんでないかい。大分もっともらしい。前回よりはずっと良さげだ。。。

と自画自賛したところで、今回はお開き。

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