昨年に引き続き「出歩かない」GWということで、GW前に秋月殿から買い込んであったもの1つに「ソルダレス60秒録音再生キット」というものがあります。台湾APLUS社のAPR9600というチップを使い、マイクからの音声を録音(不揮発メモリ)し、スピーカに再生できるもの。
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マイク、スピーカ関係の実験に活用すべく、秋月電子通商殿から購入させていただいたのは、以下の「キット」であります。
ブレッドボード・60秒録音再生ボイスキット APR9600使用
ブレッドボードと必要な部品を含んでおり(電池ボックスは含まれますが、単三電池4本は含まれません)、ブレッドボード上に部品を差し込んでいけば、はんだ付け無にすぐに動作いたします。基本的には28ピンのIC1個の端子に受動部品とマイク、スピーカを接続するだけ、お手軽。
搭載ICのメーカはといえば、以下にURLを貼り付けましたる台湾のファブレス半導体メーカ、APLUS社であります。
APLUS INTEGRATED CIRCUITS INC.
なかなか親切なことに、日本語のサイトもあり(上記は日本語サイトへのリンク)です。音声IC専業メーカさんのようです。主として各種組み込み装置向けに音声ガイド用のチップを販売されているようです。その応用分野はセキュリティから玩具までいろいろある、と。その中でちょっと目を引いたのが以下です。
宗教 読経応用分野
電子デバイス業界、たまにそういう需要があったりしますな。APLUS社の仕向け先がどちらであるかは分かりません。私が過去ダレぞから聞いたところでは「お祈りの時間と方向を」ガイドするデバイスなどが中東などで「安定的に売れていた」らしいです。以外と昔から「電子化」進んでいたのではありませんか。ただ、今じゃスマホのアプリでできそうだものね、もう流石に無いか。それともお守り替わりでご利益あるのか。
昔に比べると音声ガイドもやたらと普及したように思われます。喋るデバイスだらけで煩い昨今。しかし、その多く、カーナビとかスマートスピーカとか、「スマホ」的世界の側の「高度な」SoCが処理してるんじゃないかと思います。今回取り上げさせていただくような単機能の音声ICの活躍の場所、かえって少なくなっているような気もしないでもない。せいぜい電池で長時間動作しないといけないようなスタンドアロンのマイコン応用のお供には使えるとは思うのですが。
そう思ってAPLUS社のNews & Eventsを見てみると、最終のニュースが
2017年7月
でした。ううむ、ここしばらく動きが無いのね。まあWebサイトがあるから、既存の製品は流れていて、オペレーションはされているのでありましょう。ただ、新製品はしばらく出ていないみたい。寂しい。
なお、今回使用したAPR9600に連なる系統の「最新」機種は aPR2060 というものになっていました。その Features の冒頭から1行引用させていただきます。
Replace APR9301 & APR9600
とあります。APR9000は現状の「推し」製品には見当たらないので、「ディスコン」になってしまったのか、「既存のお客には販売する」けれども新規販売はしない「保守品種」といった扱いになってしまっているのだと想像します。
APR9600
さて実際のAPR9600です。受動部品の数点のみでマイク接続可能、またスピーカは直結可能です。この辺は普通のマイコンではできませぬな。マイク入力には内蔵プリアンプ接続しており、AGC(Automatic Gain Control)通過後、いったん外に出ます。そのアナログ信号を再び中に戻して、サンプル&ホールド、そしてAD変換して、記憶という録音の段取りのようです。アナログ信号が一度外に出るところ、後で実験に使いたいと思っています。
録音の「媒体」はチップ内蔵のFlashメモリのようです。ここは、このチップのお手軽さでもあり、限界でもありじゃないかと思います。ワンチップで完結する点は使いやすいですが、容量限られ、オンチップメモリの分、チップ単価も高くなるでしょう。外付けのSPI-Flashとか、それこそSDカード(実際にAPLUS社の別製品ではSDを媒体にしているものがありました)の方がフレキシブルじゃないかと個人的には思います。しかし、このチップはあくまで
シングルチップ完結
のお手軽さを狙ったものみたいです。なお、搭載メモリはFlashということなので、書き換え上限回数がチト気になるのですが、不明。
今回ブレッドボードの配線をやって気づいたのですが、Flashメモリに記録される音声情報は当然デジタル化されている筈ですが、サンプリング速度の決定はアナログであるようです。サンプリングを制御する発振器の速度を外付け抵抗で設定するのでありますな。発振周波数の結果としての60秒とか30秒録音であります。約30秒のときサンプリング周波数は8kHz、約60秒のとき4kHz。いずれにしてもピッタリ何kHzというような正確なサンプリング周波数ではない筈(もちろん再生も。)
記憶、および出力の「ビット幅」的には8ビットみたいです(素直なマルチビットのPCMではなく、もしかすると内部的にはΔΣ的動作してないかい?とも思ったのですが、妄想か。)まあ、サンプリング速度が遅いので、ボイスにはOKでしょうが、音楽は無理でしょう。
録音、再生の制御は、比較的単機能なデジタル端子なので、手動のスイッチでもよし、マイコンで制御するのも簡単でしょう。実際にキットを組み立てたところがこちら。
最初、キット付属の説明書をみて、ゴチャゴチャしているなという印象をうけたですが、やってみれば結構スッキリできました。秋月殿の「ブレッドボードの達人」の人がブレッドボード1枚にキッチリ収まるようにレイアウトされたのでしょう、流石な感じ。私がやると、ゆるゆると部品を置いて2枚になってしまったに違いないです。なお、キットではジャンパ線替わりに0Ω抵抗がついてくるのですが、手元に線材があるのでそちらにしました。若干配線迂回させたところもあり。
ブレッドボードなので組み立てそのものは大した時間かかっていませんが、やはりSWとか手で操作するものは外れそうで頼りないです。後で時間があるときに回路全体を別基板に半田づけとし、貴重なブレッドボードは回収の予定。
あ、現物ちゃんと鳴っています。
『ただ今マイクの試験中』
ありがち。