お手軽ツールで今更学ぶアナログ(40) ADALM1000、自己キャリブレション半分失敗?

Joseph Halfmoon

前回、ADALM1000(M1K)での電流測定にオフセットのっているじゃん、という1件あり。テキトーな対処でお茶を濁しました。しかし、そういえば「キャリブレーション」というお言葉を何処かで見たような。。。早速やってみたのですが、半分成功、半分失敗?やり方がマズイの?それともハード?混迷は深いです。

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AD584

さて、ADALM1000(M1K)のキャリブレーションについては以下のページに説明があります。

Self Calibration Guide for ADALM1000 in ALICE 1.3

キャリブレーションそのものは、正確な2.5V電源があることが想定されています(正確な計測器があれば以下のAD584が無くてもできると思います。)そこで登場するのが

AD584 Pin Programmable, Precision Voltage Reference

であります。2.500V(ザックリした2.5Vではありませんよ)を出力できる参照電圧源チップです。手元のADALP2000アナログ部品キットにもJバージョンが含まれておりました(アイキャッチ画像参照。)Jバージョンでは±7.5mV誤差ですが、Kバージョンだと±3.5mV誤差の一品。

先ほどのキャリブレーションの説明ページではAD584を搭載した小さな回路基板をM1Kに差し込んで使っています。ちょっとカッコイイ。これは真似させていただくしかあるまい、ということで自作してみました。こんな感じです。ううむ、自作品はカッコよくはないわね。

Self Calibration Module for ADALM1000

これをそのままM1Kの端子に接続すれば、セルフ・キャリブレーション回路のできあがりっと。接続したところがこちら。この時点では「セルフなんですから」、きっと私は何もすることがない、多分、と糠喜び。

CalibMod_M1K

セルフ・キャリブレーション機能の呼び出し方にまず戸惑う

Alice Desktopソフトウエアの右肩のところのOptionsボタンから “Run Self Cal” を選択すればセルフ・キャリブレーション用のプログラムが起動します。

Calibration Menu of Alice起動したら、ただステップを進めるボタンを押して行けば良いように思われました。初期化して良いよね~、以前の設定ロードしなくていいよね~、皆OKボタンを押してしまいます。キャリブレーションの参照電圧という設定には 2.5V と予め入力されており、これまたOK。

しかしなぜか参照電圧の測定値、ホボ0V。多少の誤差は許されるものの約2.5Vが測定できないとそこから先に進めません。念のため、ハンディDMMでAD584の出力電圧をあたりましたが、完璧2.500Vでてます。

慌ててもう一つのセルフ・キャリブレーション起動方法を試してみました。M1KのソフトウエアをインストールするとDeskTop以外にいくつかインストールされるプログラムの中にCalibrate M1Kというものも含まれているのです。

Calibration tool基本、Alice DeskTopから起動しているプログラムと同じプログラムだと思うのですが、起動時に与えられるパラメータが異なるようです。参照電圧には3.3Vと初期値が入っていました。そこは手動で2.5Vに書き換えます。先に進めると、今度はちゃんとCH.AとCH.Bの電圧測定値に2.5Vに近い値が表示されました。こんな感じ。

CalibExt Step1その後、参照電源を外せと指示があり、指示に従うと測定結果が現れました。こんな感じ。測定できてる?

CalibExtResultsまあ、疑いを持つこともなく、ボードに書き込みを選択し、自己キャリブレーション・プロセス「完了」してしまいました。

キャリブレーション後の確認、CH-Bが変?

キャリブレーションしてパラメータを書き換える前に確認しておけばよかったのですが、後の祭りです。

Checking the Calibration

という手順にしたがい、測定してみると、CH-Bが変です。緑色がCH-A電圧、水色がCH-A電流、オレンジがCH-B電圧、黄色がCH-B電流です。

CalibVerifyどちらのCHも終端は内蔵の50Ω抵抗を介して2.5Vに接続となっていて、与える電圧は2.5Vを中心に±2.25Vを上下するような設定です。CH-A, CH-Bともに電圧は予定通りの波形に見えます。電流はというとCH-Aは期待どおり。しかし、CH-Bは

  1. CH-Bから電流を流しだす方は50Ωに流れるにしては電流小さすぎ。約4.08分の1
  2. CH-Bから電流を流し込む方向はちょっと何起こっているのかわからない

ま、とにかく変。とりあえず、CB-IについてGainを4.08倍にすると「流しだす方向」のみはそれらしい波形になります。内蔵の50Ω抵抗関係のスイッチの問題?などと疑って、内蔵抵抗は切り離し(OPEN)、外付け100Ω(普通のE24系列ですが)で同様な測定やってみました。こんな感じ。

CalibVerExt100_2v5ゲインを「調整」した後も、電流引き込む方向になるとCB-Iが変。他端をGNDに接続し、電流を流すだけ、引き込み無の状態にしてみるとこんな感じ。

CalibVerExt100_GND
電流を引かなければ、期待通りのキレイな対称のグラフでないの。。。

CB-Iについては、なぜ電流を引き込む側でおかしくなるのか、またなぜGain4.08倍などという値を乗じないとダメなのか、理由はまったくもって不明。自己キャリブレーション、もっと慎重にやるべきでした。どうしたものか。

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