「Dual NPNトランジスタ2個の特性はそろっているので良かったね」の回があり、Dual MOSFET(Nch)でも2個の特性は揃っているものと思い込んでおりました。しかし、やってみたらどうも変。半田付け不得意な私がなにかやらかしているのだと思っていたのですが、どうもそうでもないらしい。ホントか?特性を揃えてみたら、期待通りの結果が。。。
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ディスクリートのトランジスタをテキトーに(何も調べずに)2個組み合わせて差動ペアを作ても特性がそろっていないです。そのため差動ペアの2入力に同じ信号を与えても(コモンモード)、結構デカイ差動出力が出てビックリ。だから特性計って「そろっているヤツ(Matched)」を組み合わせよ、と。
でも特性など調べるの面倒デス。デュアルトランジスタというものを買いました。1パッケージにトランジスタが2個入っているもの。ワンチップに2個だからきっと特性もそろっているに違いないと。東芝製のNPN BJT、HN1C01FU(皆大好き2SC1815に「似た」特性らしいです。知らんけど。)これを使ったら上手く行きました。「Dual NPNトランジスタ2個の特性はそろっているので良かったね」の回は、以下です。
お手軽ツールで今更学ぶアナログ(94) NPN トランジスタのシンプル差動アンプその3
これに味を占めて、MOSFETでも同様なこと(Dualチップの購入)をすれば、わざわざ手作業で「選別」せずとも、そこそこの結果ができるのはあるまいか、と考えてツボにハマりました。以下です。
お手軽ツールで今更学ぶアナログ(96) 差動ペア、MOSFET編その2
デュアルNch MOSFET、2N7002DWなるデバイスを購入。半田付け不得意なのに無理やり0.65mmピッチのUltra-Small Surface Mount Packageに挑みました。オープン、ショート的にはOKそうなんですが、どうも変。結局2個DIP化ボードに載せてみたものが以下に。米粒以下、ゴマ粒パッケージ、手先不器用な老人は半田付けに苦しみましたぞ。
さて第1のデバイスで差動ペアを作り入力に三角波を与えたときの時間波形はこんな感じ。黄色が差動入力(11:1のアッテネータを通る前の波形)、青色が差動出力です。なんか上下非対称でないかい?
Xに入力、Yに出力をとるとより一層明らかです。当方「点対称」期待しているのだけれど、ずれとりますがな。
アリガチなことですが、ありがたいことに6ピンのDualデバイス。180度回転してもトランジスタが入れ替わるものの、機能的なピン配変わりませぬ。ゲートはゲート、ソースはソース。そこで外部回路(ブレッドボード)はそのままに、Dualデバイスのみ180度回転させてみたものが以下に。やっぱり非対称だよね!
XYグラフも当然非対称。予想通りというか「逆」方向にズレます。あたりまえか。
もしかすると「たまたま」この1個は私の拙い半田付けで何か不具合起こったのではないのか?なけなしのDIP化基板を使ってもう1個作ってみました。デバイス2と呼びまする(先のものはデバイス1としております。)
デバイス2の時間波形が以下に。デバイス1よりはマシな感じだけれど、やっぱり非対称っぽいぞなもし。
XYグラフにすると明らか。ずれてます。
先ほど同様180度回転してみました。ううむ。「症状」は同じだね。
そのXYグラフ。もはやいうことはありません。
こういうことなので、差動ペアに同じ入力波形を入れても、結構な大きさの差動出力がでてきてしまいます。以下のようにデバイス1は振幅1Vのとき、振幅200mV以上出力がでておると。
デバイス2は多少ましだけれど振幅は100mV超えてますな。理想は0V期待なんでありますが。
仕方が無いので特性を測ってみました。
よく考えたらDualデバイスの2個のMOSFETの特性が揃っているなどということは「データシートのどこにも書いてないです」、1個の特性について規定しているのみ。デュアルBJTはそろっていたけれどもこいつはどうなのか。
元の木阿弥。特性(もどき)を測って比べてみることにしました。2個のMOSFETの識別のため、デバイスの1ピンを上向きに置いたときの下側をDown、180度回転させたときをUpと勝手に名づけました。
ソースをGNDに落とし、ドレインには100Ω抵抗を介して電源(3V)につなぎます。そしてゲートに電圧を加えてみて、上記の100Ω抵抗のところの電圧降下を測る(ドレイン電流相当値が計算できる筈)というテキトーな測定です。4個の結果を1枚のグラフに重ねたものが以下に。X軸がゲート電圧。Y軸が抵抗での電圧降下です。
紺色とオレンジがデバイス1です。黄色と緑がデバイス2です。なんだ、デバイスの中でばらついているじゃん。よく見るとデバイス1の紺色と、デバイス2の黄色を組み合わせると良さげでないかい。
デバイス1のDownとデバイス2のDownで差動ペア
デュアルデバイスなのにわざわざ片方を殺し、マッチングした上記の紺と黄色で差動ペアを作ってみました。
まず決定的なのはコモンモードゲインの様子。上の方グラフ2枚と同じ設定(ちとDIV設定が違ってましたが。)出力に現れる振幅は約30mV。格段によくなってね。
差動ペアを作って差動入力信号を与えてみました。ただアッテネータをわざわざ構成するのがめんどかったので、ここでの入力信号は「アッテネータ通過後」とほぼ同じ振幅のものを直接与えてしまってます(黄色C1)。
すると青色C2の出力、なんとなく期待どおりなんじゃね。
XYグラフにしてみましたぞ。ほぼ原点を通っておりますな。対称になった!
なんだ、結局、特性測ってマッチングとらなければ駄目じゃん。わざわざDualの「ウルトラ・スモール」に苦しむことなかったなあ。トホホ。