別シリーズでOPアンプのSlew Rateの勉強をしました。いつものことですが「Slew Rateを見たい、出来れば遅い奴と速い奴を比べて~」と思い立ちました。取り出したのは大分前に仕入れてあったOPアンプ2機種、どちらもNJMの型番が示すとおり元の新日本無線、現在の日清紡マイクロデバイス社の製品です。ディスコン?
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NJM2722「超高速・広帯域オペアンプ」とNJM741「汎用オペアンプ」
データシートから、2つのオペアンプとスルーレートの値を引用させていただきました。参考のため「電圧利得」と「ユニティゲイン周波数」もです。
OPAMP名 | 電圧利得(typ.) | ユニティゲイン周波数 | スルーレート |
---|---|---|---|
NJM2722 | 60dB | 170MHz | 1000V/uS |
NJM741 | 110dB | — | 0.5V/uS |
上記をみたら一目瞭然、NJM2722のスルーレートはNJM741の2000倍も速いデス。これだけ差があればいくらボンクラでも分かるでしょう。一方電圧利得ではNJM741に軍配が上がります?ま、当然か。なおユニティゲイン周波数はNJM2722には誇らしげに170MHzと書いてありましたが、NJM741には記載がありません。そういうことを聞くなってこと?
しかし、どちらもちょっと悲しい品種です。まずNJM2722ですが、日清紡マイクロデバイス社のホームページを訪ねると以下に記載されてます。
ディスコン済とな。しかしま、シブトイ秋月電子通商殿(回し者ではありませんよ)では販売継続中です。通販サイトが以下に。
一方、NJM741は以下のページに記載されとります。
もう終わる寸前。継続顧客のために細々販売が続いている「かも」しれない扱い。かの741のお名前を冠するオペアンプでもダメだったか。
しかし秋月電子通商殿では依然販売中っす。
実験
実験は簡単です。ボルテージフォロワ回路、電源±5V、負荷抵抗1kΩの回路をブレッドボード上に作り、入力に100Hz、ピークツーピークの振幅1Vの矩形波(オフセット0.5V)を与え、出力波形を観察するだけです。
以下はNJM741を差し込んだところ。NJM2722もDIP化ボードに取り付けると端子配列はNJM741と互換なので、差し替えれば両方測定できます(ま、そのつもりで選んだペアなのだけれども。)
まずは時間軸の長い方から波形を眺めていきます。黄色C1が入力波形、青色C2が出力波形です。
まずは741の「遠くからみた(5mS)」波形。ほぼほぼ100Hzの波形が入って出て行っているのが分かると思います。
同じ時間軸設定の2722の波形ですが、測定ウインドウが無い分横長です。ま、この時間軸では、2つのオペアンプの差は見えませぬ。
さて時間軸を1メモリ0.5μ秒にした場合が以下に。
まずは741です。この条件ではデータシートに書かれている0.5V/uSよりも立ち上がりが速いように見えますが、Slew Rateで制限かかっているのが見てとれます。
一方2722です。元気よく立ち上がっているのでまったくスルーレートの制限などどこ吹く風です。ただ、元気が良すぎてオーバーシュートが揺れてますな。
さてここからは一目盛り50nSです。使用している「お手軽ツール」Analog Discovery 2の100Gs/Sの制限がチラついており、ちょっち波形が汚くなってきます。
まずは741から。だらだらと立ち上がっており、この画面の450nSの区間では登り切れてないです。
そして2722です。1000V/μSは伊達じゃないようです。ほぼほぼツール的に測定限界に近づいているのだけれども、まだSlew Rateの制限が感じられないデス。
2722確かに高速、でもディスコンなのね。