前回は、大振幅出力のとき周波数応答を「支配」するスルーレートを勉強しました。今回は出力信号が「期待される」誤差範囲に落ち着くまでの時間であるセトリング時間です。結構微妙な数字みたい。気になる用途のオペアンプもあれば、その辺気にせんでもええやろ、というものもあり?オペアンプ素人の年寄には事情が呑み込めませんのう。
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原著はOp Amp Applicationsという書物だったらしいです。
セトリング時間
『OPアンプ大全』の「第2部Chapter-1、4-6 オペアンプの周波数応答」には分かりやすいセトリング時間の概念図が掲載されております。
セトリング時間=不感時間+スルー時間+回復時間
「入力パルスの立ち上がりからOPアンプの出力が規定の誤差範囲に入るまでの時間」と掻い摘めるかと思います。この測定回路も掲載されているのですが、これがなかなかに繊細。まず入力からして「波高が平坦な高精度で低ノイズの高速パルス」が要求されます。これはダメだと今回も早々と測定を断念しました。テキトーにOP07のマイナス1倍反転増幅回路で上記のセトリング時間の説明図もどき(ほんわかしたやつ)のみ描いてみました。冒頭のアイキャッチ画像。なんだかな~。
『OPアンプ大全』から一か所引用させていただきます。
0.01%へのセトリング時間は0.1%へのセトリング時間の30倍かかる
%で規定しているのは誤差です。誤差を一桁小さくしようとすると30倍もの時間がかかるのだと。それゆえにデータシートを読んでいても以下のことに注意せんといかんようです。もう1か所引用させていただきます。
製造メーカーはしばしば、OPアンプの特性が見掛け上よくなるような誤差幅を選択する
ううむ、これを書いている人も「中の人」なんでないの、と心の中でツッコミましたです。
データシート上のセトリング時間
前回、データーシート記載のSlew Rateの値を比較してみました。以下の表のLT6206からOP177までは前回登場のOPAMPどもです。うちLT6206には記載がありましたが、その下の4品種のデータシートにはそれらしい数字が見当たりません。どゆこと?
そこでAD549, AD8531, OP282という記載のある3品種の値を追加しました。
OPAMP | Slew Rate (typ.)[V/us] | Settling Time | 誤差範囲 |
---|---|---|---|
LT6206 | 450 | 15nS | 3% |
OP37 | 17 | — | |
OP27 | 2.8 | — | |
LT1006 | 0.4 | — | |
OP177 | 0.3 | — | |
AD549 | 3 | 5uS | 0.01% |
AD8531 | 3.5 | 1.6uS | 0.01% |
OP282 | 9 | 1.6uS | 0.01% |
Settling Timeを記載するか、しないのか、そして記載するとしてどのくらいの誤差範囲で規定するのか、どうもオペアンプの種類というか用途によって判断が分かれる見たいっす。
上記のように、LT6206は速いよ速いよ(でも精度は大目にみてね)という雰囲気ですし、規定のない奴らは高精度だけれども(応答時間のことはつべこべ言うな)という感じ?そして追加した3品種は精度も応答速度も両立せんといかん用途向けという感じでしょうか。規定の誤差範囲とセトリング時間を見るとまったく「土俵が違う」ことが分かります。
なかなか奥深いというかオペアンプ素人には闇が深そうな値です。