定番回路のたしなみ(23) ど定番「電子工作業界?のハローワールド」非安定マルチバイブレータ

Joseph Halfmoon

前回PLL-ICなどいじりながら気がついてしまいました。定番といいつつ、一番の定番をやってないんじゃないかと。そうです、電子工作業界?の一丁目1番地、いやHello Worldというべきか、皆さまお馴染みの非安定(無安定?)マルチバイブレータであります。LEDとりつけて目でチカチカするのが分かる周期の遅いやつです。

※「定番回路のたしなみ」投稿順Indexはこちら

マルチバイブレータ

世にマルチバイブレータ、特に勝手に振動する非安定型のマルチバイブレータの動作を解説したホームページやご本などあまねくある中で、この老人が感銘をうけたのが以下の御本であります。15年ほど前の御本ですが、老人にしたらつい最近の御本です。みんな大好きブルーバックスのB-1553。以下は版元、講談社殿へのリンクです。

「図解 つくる電子回路」加藤ただし著 2007年5月20日 講談社

上記は、はんだ付けのやり方、工具の使い方から、ボードの工作にいたる「電子工作の入門書」なんであります。その題材がバイポーラ・トランジスタ(これまた定番2SC1815です)2個でつくるマルチバイブレータです。マルチバイブレータの回路動作の説明は掃いて捨てるほど(すみません)ある中で、このご本は、トランジスタは勿論、抵抗、コンデンサ、LEDと全て現物のデータシートを参照し、データシートのここにこういう数字が書いてあるから、こういう計算をした結果として、こういう部品選択、そして回路になる、という筋道を解説してくれているのであります。この老人はその懇切丁寧な内容に圧倒されました。まさに電子デバイスの鏡デス。しかし、お教えは忘却力の彼方。テキトーに回路作って、泥縄でデータシートを眺めてます。

さて今回NPN型BJT2個のマルチバイブレータをこさえるにあたって、BJTは2N3904という米国じゃ定番(多分)だけれど、国内では2SC1815ほど有名じゃないヤツにいたしました。2SC1815は互換品が広く売られていて手に入りやすいですがオリジナルはディスコン。LTspiceに付属のBJTモデルにも記載がないです。Spiceモデルそのものは、あちこちに「落ちている」ので入手可能ですが内容は不明っす。そこでLTspiceの付属ライブラリにモデルがあって、かつ当方の手元在庫にあるトランジスタ、ということで2N3904です。多分、2N2222でも大丈夫じゃないかと、知らんけど。

まずはLTspiceシミュレーション

バイブレータのシミュレーションについても、あちこちに解説ページがあります。SPICEで「発振」させてみたことがある人は皆ご存じの通り以下2点は必須かと。

    • トランジェント解析する場合、startupオプションをつける
    • シミュレーション開始時に回路内の電位が「非対称」になるように、テキトーに初期値を.ic で与える(そうしないと数値シミュレーションなので両側が完璧に一致して発振が始まらないかも知れない。)

でもね、今回もう一つ必要事項を発見しました。

Nonstable_sim_cir

上記回路図でシミュレーションすると、A点において、以下のような波形が得られました。まあ、発振はしとります。でも、このシャクリ的な真ん中のトゲトゲは何?Nonstable_sim_tim

発振が安定すれば同じ波形を繰り返す筈と思い込んでいたところが、なぜか不安定です。なんでや?

理由は、LEDのモデルでした。デフォルトのまま「無名」のLEDを選択していると起こる現象みたいデス。以下はLTspiceのライブラリに含まれていた日亜製(ブランドだな~)のLEDモデルを指定した場合の回路。Nonstable_sim_cir_upd

上記でシミュレーションしてみると、発振2発目からは安定、妙なシャクリあげるようなトゲトゲが消えましたです。よかった。Nonstable_sim_tim_upd

実機動作確認

ブレッドボード上に実装した回路が以下に。ぜんぜんデータシートの確認なんかしてないです。ダメダメ。だいたいLEDなんか怪しい中華製です。データシートどころか出元もよくわからんやつ。だって安かったんだもん。

Nonstable_multv

上記のような成り行きの回路でも、つなげば動くマルチバイブレータっす。波形を観察すると以下のような感じ。Nonstable_real_tim

まあ、電源いれたら赤と緑でLチカしてるし、いいか。

定番回路のたしなみ(22) CD4046でFM復調(FM Demodulation) へ戻る

定番回路のたしなみ(24) LC発振で正弦波、コルピッツ発振回路、トランジスタ編 へ進む