前回までの3回を費やして「4-7 OPアンプのノイズ」を読みました。今回の「4-8 OPアンプの歪」は一撃デス。ほぼ半ページしかなく、キモは上に掲げた公式のみ。前回の公式に比べりゃどうってことない?しかし、データシート上でTHDを調べるにつけ「闇が深い」のか「大人の事情」か、一筋縄ではいかない特性に思えてきました。
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原著はOp Amp Applicationsという書物だったらしいです。
THD、全高調波歪
THD(Total Harmonic Distortion)は、高調波の二乗和の平方根で計算されると。無限に続く高調波ですが、通常は基本波の5次もしくは6次でOKみたいっす。それどころか、2次と3次だけでも「誤差は無視」できることがあるみたい。
そこにノイズの項を含めれば THD + N ということになり、データシート的にはこちらの数値の方が記載されていることが「多い」ように思われます。しかし、このデータシートの記載がクセ者に思われます。手元のOPAMPデータシート(アナデバ様起源の御本なのでアナデバ様に忖度してアナデバ製品のみ)を眺めてみましたが、THDもTHD+Nも記載がない製品も多数あるやに見受けられます。一方、表紙に記載のあるような「THD推し」の製品もあり、その差ってどこにあるの?なんなんだろ。
データシート記載のTHDあれこれ
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- ADA4691
今回調べたデータシートの中で、一番「THD推し」な雰囲気を醸していた製品です。なんといっても地味に後ろの方に記載されている製品が多い中で、表紙「特長」欄に記載があります。
低歪み: 0.003% THD + N(引用)
さらに表紙に「THD+N(%)の周波数特性グラフ」まで掲げられています。データシートの表紙という銀座4丁目的なステータスの高い場所をTHD+Nが占めております。よっぽどの推しなのか、それとも他に推すものがなかったのか?
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- AD8531
電気的特性欄のようなアカラサマに見つかるところには書かれておらず、本文中、アプリケーション回路例の説明のようなところに、その条件とともにTHD/THD+Nについての記載が数か所あります。回路により条件は異なるので、THDの数値もいくつかあるのですが、0.4%~0.1%(引用)とのことです。
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- OP113
電気的特性欄に、他のデータシートではあまり見ない AUDIO PERFORMANCE という項目があって、その中に THD+Noise の記載があります。(引用)条件 Vs=±15V TA=25℃ VIN=3Vrms、RL=2kΩ、f=1kHzにて、0.0009%であると。オーディオ用なんだろうな~
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- LT6011
電気的特性欄に数値の記載なく、代わりにTHD+ノイズの周波数特性グラフが掲げられています。広い周波数に対して変動する数値が問題ならばf=1kHz1点の数値だけじゃこまりそうだものね。すると電気特性欄に記載の品種は広い範囲を見なくてもよいアプリだということ?謎だ。
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- LT1678
同じ元Linear製品のLT型番でも、こちらの記載方法は違いました。電気的特性欄にしっかりTHDの項あり、(引用)RL = 2k, AV = 1, fO = 1kHz, VO = 20VP-P 0.00025 %とな。
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- OP97
いつもお世話になっている定番のOP07以下、OPx7系のデバイスにはTHDの記載が見当たらないものが多いです。そんななか、OP97には「THD+ノイズの周波数特性グラフ」が記載されてます。その扱いの違いはどこにあるの?オペアンプ素人には分からず。
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- ADTL084
「仕様」欄にTHDの記載あり、(引用)VIN = 6V rms, f = 1 kHz, AV = +1, RL = 2 kΩ、Vcc ±15V、Vcm=0V、TA=25℃において 0.001 %
THDと聞いて「ビックリ」しない程度には慣れ親しめた。ビックリはしないけれど、わかっちゃいないな。