定番回路のたしなみ(34) エミッタ接地増幅回路のReと並行に入ってるCの件。SIMのみ。

Joseph Halfmoon

暑いデス。暑いと現物回路を組み立てる気力なく、シミュレーションでお茶を濁さんと。そういうわけで今回は再びエミッタ接地増幅回路に戻り、アリガチなREと並行に入っているキャパシタンスの効用を噛みしめてみるだけの回といたします。よく見るコイツは交流増幅度を持ち上げてくれるお役目あり。AC解析してみれば一目瞭然だと。

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第31回のエミッタ接地回路のAC特性

第31回では、DC的動作点を考えるのにLTspiceの小信号伝達関数解析(.TF)を使えばお楽という不埒なことをやっておりました。ほぼ全面的にLTspiceだのみで動作点を決めたのですが、折角決めたDC的動作点をいまさらずらしたくありませぬ。けれどま、そこに手を入れずして交流増幅度を上げようというのが今回のお題です。

まずは第31回のときの回路のAC特性を測ってみます。RC/RE≒4.5ですが、第31回でやったとおり実際には4.5倍まで行かず、せいぜい4倍強の増幅率でした。ただ後の回路と比較のため、AC特性は10mV振幅の正弦波を入力として与えて、測定することにいたしました。emitterCommonAC_SIM_cirORG

AC解析の結果が以下に。だいたい10Hz付近から1MHz近くまでゲインは-28dB(縦軸は1V基準のdBVだと思います)なので-40dBVの入力電圧からすると12dBの増幅度ということでゲインは約4倍。emitterCommonAC_SIM_waveORG

キャパシタンスを追加するだけでゲイン・マシマシ

そこで上記オリジナル回路のREと並行にキャパシタンスC3を追加しました。ただし、後の計算の都合でR3というREの10分の1の値の抵抗も入れてあります。emitterCommonAC_SIM_cir

C3に関しては、一応3ケースを一度に計算ということで、1uF、10uF、100uFを.STEPでシミュレーションしてます。

シミュレーション結果が以下に。

emitterCommonAC_SIM_wave

キャパシタンスを挿入する前は、たかだかゲイン4倍の回路であったものが、ゲイン約30倍までゲイン・マシマシとな。ただしキャパシタンスの値でマシマシのゲインが達成される周波数領域が大分異なります。

これについては、R3とC3でRCハイパスフィルタ、を形成していると考えるとよろしいようで。そのカットオフ周波数を計算してみます。

    • R3=220Ω、C3=1uF、カットオフ周波数 723.4Hz
    • R3=220Ω、C3=10uF、カットオフ周波数 72.34Hz
    • R3=220Ω、C3=100uF、カットオフ周波数 7.234Hz

上のグラフにカットオフ周波数を当てはめていくと、納得。結局、DC的にはRE「だけ」が効くので約4倍強なんだけれども、AC的に電流が流れ始めるとR3+C3経由が効いてきて交流増幅率は約30倍っと。いっそR3など取っ払ってしまえば素のトランジスタの増幅率が見えてくるのでしょうが。そこは素はさらけ出さない?奥ゆかしさよ。ホントか?

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