前回「エコノミーな」昇圧トランスを使ってみた回の末尾にて『サンスイ使えよ、自分』と掛け声をかけてしまいました。今回はその回収回?であります。入手したサンスイトランス(1個だけ、ステレオにできんぞなもし)をAnalog Discovery2のインピーダンス測定機能で測定してみようと。これがトランス素人には結構難物っす。
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サンスイトランス
かっての「オーディオ御三家」の一つ山水電気自体は破産後、法人格も消滅しているようです。しかしサンスイトランスは現役。これは遥か昔、昭和54年に橋本電気株式会社に『技術、生産、販売機能、商標使用契約』も含め全てが移管されたことによるためのようです。サンスイトランスのホームページが以下に。
なお同名の橋本電気は複数存在するのでご注意を。
さて今回入手のST-32というトランスですが、昭和32年の『サンスイ トランジスタ用小型トランスSTシリーズ』の生産開始時点から製造されている伝統の逸品らしいです。パーマロイ鉄心、ポリウレタン電線使用は当時と同じだと。上記サイトから入手可能なカタログがらスペックを引用させていただくと以下のようです。
ST‐32
出力0.2W、センタータップ付
インピーダンス1次1200Ω、2次8Ω
直流抵抗 1次60Ω 2次0.62Ω
巻き数比12.0:1
その昔のオーディオ・オタクの人々はこういうスペックに興奮したのかね。。。知らんけど。
ぶっちゃけ、上記のスペックにぼんやり近い「ホンワカ」した値をAD2で測定できることを確かめたいと希望しとります。トランス素人、オーディオ素人のアナログ音痴の老人がそんなことできるんかい?
トランスの測定
測定方法についてお教えくださっているページが無いかと探したところ(とりあえずAIは使わずに)以下の日置電機様の文書が分かり易かったです。
当然、日置電機製の立派な測定器(勿論、ワタクシめも日置様の測定器には何度となくお世話になっておりますぞ)で測定する前提の文書です。しかし、バッチリです。これなら素人の老人でも分かる?しかし、上記だけ参照すれば測定OK、かというとさにあらずでした。
インピーダンスの測定はどの周波数で測るのかという点が最重要であります。サンスイトランス様のカタログを見ても測定ポイントの周波数などは記載されておらず。LCRメータのデフォルト値で「ありがちな」1kHzで測ってみたのですが、何測っているの?ハシボーという数字が出てしまいました。どうする?
しかし「Ayumi’s Lab」様の以下のページを見て疑問は解消。ありがとうございます。
一か所引用させていただきます。
ただし,トランスのカタログなどに記載されている1次インダクタンスは, 50Hz, 5 Vrms で測定されている場合が多く, また,1次インダクタンスは信号の大きさによりかなり変動するので, このようにして求めた1次インダクタンスはカタログに記載されている値と 必ずしも一致しないことに注意してください.
そうだったのね。。。
AD2利用の測定回路
上記の測定結果2つから巻き線比を計算してみると
L2=34.57 mH
L1=3.052 H
SQRT(34.57m/3.052)≒0.106
比に直すと 9.39 : 1.0。理想的には12.0 : 1のハズだけれどもいろいろ損失もあるハズだし、当たらずしも遠からずくらいの値ではないかい。自画自賛だな。いいのかそんなことで。
なお、5V振幅を1V(AD2のデフォルト)に変更しただけで、2次側の測定結果は以下のように変わります。歴然。
さらに、測定周波数を1kHz(当初設定した値)にするとこんな感じ。愕然。
ぜんぜんダメじゃん。やっぱムツカシーものなのね、トランス。