Rのパッケージ「Boot」に含まれるサンプルデータセットをabc順に経めぐってます。今回はnitrofenとな。除草剤などとして実用化されるも毒性が問題になって廃止になった薬物みたいです。その毒性の試験をミジンコの一種、ニセネコゼミジンコを使って行ったデータなのです。今やそのミジンコは人気者みたいです、環境試験関係で。
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nitrofen、サンプルデータセット
サンプルデータセットの解説ページが以下に。
Toxicity of Nitrofen in Aquatic Systems
ニトロフェンという化合物は、かって除草剤などとして使われた農薬の1種みたいです。突然変異誘発し、催奇形性がある、特に水生生物への影響が大きいということで1980年代には多くの国で禁止になったみたいです。ニトロフェンについては、国立環境研究所様のWebkis-Plusというデータベースに化合物の詳細とともに日本国での関連法令、環境測定データなどがあわせて掲載されています。
ニトロフェンそのものは「古い薬」ではあるのですが、今回のサンプル・データセットで注目すべきは、その試験に「捧げられて」いるミジンコ様です。
Ceriodaphnia dubia(ニセネコゼミジンコ)
なにがニセネコゼなのかは知りませんが、WET(Whole Effluent Toxicity)、全排水毒性試験というもので用いられる3種の水生生物の一つ、甲殻類の代表選手に選ばれて?いたみたいです。個別の化学物質の濃度をうんぬん言うことなく、生物をそこで生かしてみれば、毒のありなしは分かるだろ~的な試験なんでしょうか。炭鉱のカナリヤ的な?
このため、研究などの用途にニセネコミジンコが多いに必要とされているらしく、前述の国立環境研究所様の以下でニセネコゼミジンコ(多分血統書つき的な)が分譲されておるらしいです(既に2023年度の分譲は終わっているので、次は2024年度分譲を待ってね、ということです。)
ここにも老人の知らぬ世界が開けておったと。
サンプル・データそのものは、10匹ずつのニセネコゼミジンコを5種類の濃度のニトロフェンの「溶液」で飼育し、3世代の生存数を記録したもののようです。なお、濃度についてはデータセットの解説ページでは mug/litere と書かれていてナンジャラホイ状態でしたが、多分その心は μg/L です。
なお、ニセネコゼミジンコ自体は、毒性のある薬剤だけでなく、軟水、硬水といった水質にも影響をうけるようなので、試験をやるにあたっては元の水質も大事みたいです。福岡県保健環境研究所様の以下の報告があります。
ニセネコゼミジンコ(Ceriodaphnia dubia)を用いた全排水毒性試験の検証と事業場排水への適用
なお、上記報告で使用されたニセネコゼミジンコはやはり国立環境研究所様からの「分譲」のやつら、らしいデス。
まずは生データ
シンプルなデータフレーム、concがニトロフェン濃度(μg/L)、brood1からbrood3が子孫世代の生存数(最初の親世代は10匹)、totalは3世代合計のようです。
濃度毎に層別
最初は、毒の濃度毎にトータル生存数を調べてみることにしました。こんな感じでどうよ。
aggregate(nitrofen$total, by = list(conc=nitrofen$conc), mean)
濃度が濃くなると、急激に数が減っている感じがわかります。も少しビジュアルにしたかったので、例によって箱ひげ図(ボックスプロット)を描いてみました。
library(dplyr) conc0 <- nitrofen %>% filter(conc==0) %>% select(total) conc80 <- nitrofen %>% filter(conc==80) %>% select(total) conc160 <- nitrofen %>% filter(conc==160) %>% select(total) conc235 <- nitrofen %>% filter(conc==235) %>% select(total) conc310 <- nitrofen %>% filter(conc==310) %>% select(total) boxplot(c(conc0,conc80,conc160,conc235,conc310), names=c("0μg/L", "80μg/L", "160μg/L", "235μg/L", "310μg/L"), ylab="The number of live offspring", main="Toxicity of Nitrofen in Aquatic Systems")
本来はBootパッケージのサンプルデータなので、ここからブートストラップ法使って信頼区間を求めたりするのだろうけど、今回はここまで。環境試験に活躍する(捧げられてしまった)ニセネコゼミジンコ様を知れただけでありがたや。